51話 レベリングの毎日
「ふう、初日にしては結構頑張ったかな」
レベリングも終わって帰り道、俺はタオルで自分の体を拭きながら今日のレベリングに評価を付けていた。
100体きっちりゴブリン(みたいなモンスター)を倒すのに、1時間半ぐらいだろうか。
もう時間的には夕方。あまり帰りが遅くなると、俺がダンジョンに行っていることがばれてしまうかもしれない。
もう少し早めに終わらせればベストなのだが、まあ初日ということで妥協しよう。
レベリングということで、モンスターたちに情が移らないよう無心でやりたかったのだが、思っていた以上にそれは難しかった。
モンスターと言っても、いろいろなやつがいたのだ。
まず、普通に突っ立ってて俺の餌食になる、フツーのモンスター。これはいいとしよう。
問題なのは、それ以外の特殊なやつだ。
例えば、変なダンスを踊ってる奴。何をしたいのかよくわからない感じに踊っていて、多分頭のねじが何本か抜けたんだろうね。
あと、目を大きく見開いて回ってる奴。こいつは、全方位を警戒するためにやってるんだろう。と思っていたのだが、俺が視界に入っても回り続けていた。楽しいんだろうね、うん。
そして嫌なのが、あぐらをかいてじっと瞑想してるやつ。こいつは、動かないから倒すのが楽なんだけど、せっかく集中しているところを邪魔するようで、結構精神的につらいところがある。せっかく頑張ってるところ申し訳ないが、という気持ちを込めて優しく首をもぎとるのがポイントだ。
このように様々なモンスターがいて、レベリングだけにも結構精神すりへらされた。
モンスター気持ち悪い。こわい。もう触りたくない。
しかし効率を求めるには剣より素手で首をもぎ取る方が速いわけで…
「…初日にしては頑張ったよな…」
今日のレベリングは結構頑張った。うん。そう評価させて。
変なモンスターのおかげで俺の心はもうへとへとだよ。セシルに癒されたいよ。
しかし苦労したかいあって、俺のレベルも一つ上がった。
全体的にステータスが強化されていい感じだ。うれしい。
これだけじゃ俺より年上の人たちには到底太刀打ちできない。が、成果としては上々だろう。
ちりも積もれば山となるだっけか、そんなことわざもあるみたいだし、毎日続けてどんどん強くなりたいね。
▲
二日目
「今日もいい感じにできたな」
昨日は1時間半ほどかかった感じだったのに、慣れたおかげか、今日はかなり早く100体倒せた。
効率アップってやつだ。
レベルは上がらなかったが、経験値はしっかりとたまった感じがする。
充実感があっていいね。
ゴブリン以外も倒したいところだが、そこは我慢どころだ。
危険は少ない方がいい。
ましてや、創神化しても倒せなかったような相手がいる森なのだ。油断したら危険だ。
レベリングしたからと言って調子に乗らないようにしないとね。
▲
五日目
「まさか宝箱があるとはな」
今日はいつもより早く100体倒せてしまったので、追加で50体多く倒してきたのだ。
まあ、おかげでレベルアップもしてとても楽しかったけど、今日のいいことはそれだけじゃない。
追加の50体を倒している最中に、宝箱を発見したのだ。
洞窟でも迷宮でもない、ただの平原。一応ダンジョンだけど、ゴブリン以外何もいないような、いうなれば過疎地域であるはずの場所に、だ。
しかもその宝箱の形が特殊で、茶色の箱みたいなものだったのだ。しかもテープでつなぎ目を止められている。
「……段ボールじゃねぇか!」
そう、どこからどう見ても、それは完全に段ボールだった。
なんでこんなところに段ボールが?
ダンジョンってことは宝箱ってことだよな?でも段ボール?なぜ?ていうか本当に宝箱?
疑問に思いながらも、手が勝手に動いたという感じで開けてみたら、中にはどこにでもありそうなナイフが入っていた。
それはいいんだが、ナイフを手に取った瞬間段ボールが光の粒になるように消えていったのだ。
これを見て、俺は感動した。超感動した!
もちろんナイフは、本当にただのナイフだったよ。どこにでもあるような、普通のナイフ。
じゃあなんでそんなに感動したのかって?
それはだな、ダンジョンの中ではあるけどもゴブリンしか出ないようなこの過疎地域で、しかも洞窟でも迷宮でもないだたの平原で、宝箱が出たからだ!
宝箱って何が出るかわからないものなんだよ。何が出るかわからないから、夢が詰まってるんだよ。
でも、ダンジョンって言ったら迷宮とかボス部屋とか、そういうところにしかないのかな~と思っていたんだよ。
手に入るわけないよな~でも実際に自分が取ったらどうなるんだろうな~みたいな風に思ってたんだよ。
そしたら急にこんな過疎地域に、というかダンジョンなのかもよくわかんないような場所に出るときた。
どうせいい物なんて出るわけないだろうけど、それでも、こんな低レベル向けの場所でも宝箱ゲットできるって、最高じゃん!宝くじを無料で引けるような、そんな感じだよ。
別に通販で段ボールを買った訳でもないし、なぜ宝箱が段ボールなのかは意味不明だが、それでもレベリング以外に楽しみができたというのはでかい。
やはり、不確定要素というのはとっても楽しいのだ。
「油断しないようにしないとな…宝箱……フフフ…」
少し油断してる気がしないでもないけど、まいっか。