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47話 創造魔法の時間1

 右手には白い粉。

 左手には液体が入った試験管みたいな容器。

 二つの素材をよーく目で見て、異常がないことを確認したら、魔力を注ぎながら定型文を言う。

 


 今何をしているのか?


 創造魔法の授業である。


「は~い?できましたか~?説明した通りの手順で、光の玉が作れるはずですよ~?」


 朝セシルから聞いた通り、今日は魔法の授業、それも創造魔法の授業があった。

 今はそれの授業中というわけだ。

 創造魔法は俺の得意分野。

 というか持っている創造魔法のスキルのレベル無限だし?

 そこだけ見れば誰にも劣ることないのだ。

 なので俺は張り切って授業をうけていた。

 これは俺の活躍の場だと思って。


 …けど。


「わあ!見てよルーラ!すごい綺麗な光の玉ができたよ!」


 セシルが嬉しそうに、作った光球を見せてくる。

 確かに、もう光が薄れてきているが、きれいだ。

 きれいだ、けど………


「どうしたの?作らないの?」


「………」


「作り方教える?」


「作り方なら知ってるよ……」


「じゃあ、なんで作らないの?…もしかして魔力切れ?それなら先生のところにポーションあるからそれ」


「セシル」


「…な、何かな?」


「………光の玉作れないよぉぉぉぉおおお!!」


 思わず頭を抱え込んで机に突っ伏せる。

 もういやだ。

 こんなに悲惨な事実を突きつけられてもどうしようもないじゃないか。

 作る時に嫌な予感がしたんだよ。

 そううまくいくのか?って。

 まさに的中というか、見事に大当たりというか。

 おみくじで大凶当ててレアだけどうれしくないみたいな、そんな感じだ。

 

 ていうか本当のことを言えば、先生の説明を聞いた時から嫌な予感はしていたんだ。

 



 ───は~いみなさん?今日は初めての創造魔法の授業ですよ~?創造魔法はちょ~っと難しいかもしれないです。がぁ、皆さんは優秀だと聞いているので、先生期待しちゃいますよ~?───


 授業が始まり、先生が話す。

 

 クセのあるしゃべり方だな。

 その時の俺はそれぐらいにしか考えていなかった。しかし…


 ───今日作ってみるのは『神聖属性』の光球ですよ~?ここにいるのは魔法を使える人たちだけですので~、属性適正はみんなあると思います~。ので、普段魔法とか使えない人も頑張って作ってみてくださいね~?───


 『神聖属性』の光球───。

 

 神聖属性?属性適正?

 これを聞いた瞬間、嫌な予感がしたのだ。

 属性適正。しかも神聖属性の。

 魔法使いになった者全てが持っていると先生は言った。

 例外は無い。むしろそうでない人がいれば教えて欲しいぐらい。

 神聖属性の適正は魔法使いであることの証であり、魔法使いにとっての必然である。

 のだが……。

 俺は無いはずの例外になってしまった。

 属性適正一切なし。………いや、無属性の適正だけはあるんだっけ?まあ、どちらにせよ神聖属性の適正が無いことに変わりはない。

 

 適性がない。

 するとどうなるか。

 答えは机に突っ伏した時点で明らかだ。


 そう、光球を作れないのである。


 作り方自体はものすごく簡単だった。

 白い粉末を液体に入れて混ぜる。

 よく混ぜたら、「サモン・ライト」と言う。

 言いながら魔力を注ぐ。

 するとあら不思議、きれいな光の玉の完成だ!

 わーすごーい。


 となるはずなのだ。

 なのだが………


「サモン・ライトォゥッ!」


 ───しかし何も起きなかった。


 まあ、よく考えたら当然だ。

 適正ゼロなのだから。

 ゲームで剣士が弓を使えないように、属性適正無しで作るなんてのは、例え作り方が合っていても不可能なのだ。


「あれ、決闘の時の魔法使いの子?」

「いや、違うでしょ。だってほら、こんな簡単な魔法もできてないし。」

「すごいのかと思ってたけど、もしかして決闘はインチキだったんじゃ…」

「絶対そうでしょ。だって創造魔法すら使えないんだよ?インチキに決まってるでしょ」


 どこかからひそひそ声が聞こえてくる。

 俺をインチキ呼ばわりしているみたいだ。

 確かに決闘であんなことをしてしまえば疑われるのもしょうがない。

 が…


 しかし、どうしたものか。

 このままではなんとも言い返せない。

 この魔法はだれでもできるような簡単なものらしい。

 創造魔法の初歩の初歩、といったところだろうか。

 これをできないようであれば話にならん、みたいな感じだろう。

 

 創造魔法の授業と聞いて浮かれていたが、むしろこれは地獄だ。

 属性適正無いやつへの一歩的な攻撃だ。

 まるで俺一人だけが劣等生みたいな扱いじゃないか。


 ずっと俺のターン!とか、頬に当たる風が温かいとか言ってたが、そんなこと全然なかった。

 むしろ寒いわ。寒気してくるわ。

 すでにターンエンドして、相手のターンになってドローしてるな。こりゃやばい。


「ルーラ…顔色悪そうだよ?大丈夫?」


 心配して声をかけてくれるセシル。


 ああ、今の俺の唯一の救いは君が俺とペアになって授業を受けているということだけだよ。

 癒されるわぁ。


「……どうしたの?私の顔、何かおかしいかな?」


「いや、今日もかわいいなぁと思って」


 セシルが、ひえっ!と声を出しながら顔を赤くした。


「急に言われても…その……ありがとぅ…」


 いい眺めだ。

 光球なんか作れなくてもいいやと思えてくる。

 セシル教とかいう宗教があってもおかしくないレベルだ。

 今度作るか。俺の心の中だけで。


 と、セシルと遊ぶのもこれぐらいにして、今は目の前の問題をどうにかしないとな。


 インチキ呼ばわりされっ放しというのも気にくわないし、なにより創造魔法は俺の得意分野。

 ここで引き下がるのは俺の心が許さない。


「さてと、やりますか。」


 実験器具を端に寄せ、広くなった机の上で俺は意気込んだ。

 俺のターン再来だ。




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