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46話 セシルが落ち込んでいるようです




 校門をくぐり学校の中へ入る。

 階段を上り教室のドアを開ける。

 中に入ると、人の視線が一気に俺に集まった。

 ......が、少しするとみんなおしゃべりに戻った。


「やっと普通になったな」


 思わず呟きが出る。


 決闘の次の授業日、教室は修羅場だった。

 凄腕の剣士をワンパンした謎の魔法使いがいるという噂を聞いて、別のクラスからも人が押し寄せてきたのだ。

 もはや超有名人のライブ会場とも思えるほどに......いやそこまでではないかもしれないが、とにかく沢山人が群がっていたのだ。

 

 教室前まで来て人の多さに驚いていたところ、

「あ!魔法使いが来たぞ!」

 と聞こえた。

 聞こえた瞬間本能的に死を感じ取った俺は、すぐさま自分の分身を作り出して屋上に逃げた。

 それほどに人が多かったのだ。

 こんなに俺を注目する人が出るなんて思ってもみなかった。

 おかげで始業のチャイムが鳴って人がいなくなったタイミングで教室に戻るはめになった。

 教室に戻る途中、粉々になった俺の分身、もといゴーレムを見たときは、「これはどうにかしないとそのうち殺される」と真面目に思った。


 そんなことがあり決闘から一週間。毎日人と関わらないように意識して過ごしてきたのだ。

 それが功を奏したのだろうか。

 決闘翌日はめちゃくちゃ俺に突っかかってきた人も、俺への興味はなくなったみたいでほとんど話しかけてこなくなった。

 ぶっちゃけ俺が不愛想に接していたからだろうが、俺的には秩序が取り戻されてとてもうれしい気分だ。

 最終的にはガイに勝てたしセシルもDクラスだし、結果オーライだ。

 セシルゴーレムが壊されるとは思っていなかったけれど、おおむね思惑通りになっていやはや満足である。


 しかし一つだけ問題が発生した。

 セシルが不機嫌なのだ。

 今まではあんなに明るかったのに、決闘から一週間たった今は何も話しかけてこない。

 こちらから声をかけても無視される。

 視線すら合わせてくれないのだ。

 

 俺はツンデレ美少女も全然いけるのでいいのだが、やっぱり明るくて元気なのが一番だ。

 心が前向きだと、普段の行いも前向きなものへとなっていく。

 セシルにもぜひそうであってほしいのだ。

 しかし最近のセシルはどうも暗い。

 これではせっかくの癒しオーラが半減してしまう。

 

 ということで、俺はセシルを前向きにするために話しかけてみる。


「セシル、おはよう!今日もいい天気だね!」


「............」


 セシルは窓の方に目をやったまま。

 俺には見向きもしないな。


「どうしたんだい?なにか嫌なことでもあったのかい?」


「............」


「ほら、もっと明るい顔をしないと!笑った時間だけ人生得するんだよ?」


「............」


 何も反応してくれない。

 仕方ないな、作戦Bだ。

 俺はおもむろにセシルの机の前に椅子を移動させて、セシルと同じポーズを取って不貞腐れる。

 そしてセシルをじーっと見つめた。

 

「............」


「............」


「............」


「............(ルーラがすごいこっち見てる......なんで...?......ルーラおかしくなったのかな...?)」


「............」


「......(ずっとこっち見てる......もしかして私のこと......でも女の子同士だし......)」


「セシル」


「.........!!」


「実は大事な話があるんだ...」


 こう言えばセシルも反応するかなぁ、と思って言ってみたら、セシルが急に、身を乗り出して顔を寄せてきた。

 顔に「話って何!?」って書いてありそうな勢いだ。

 急に女の子にそんなことされると、びっくりして身を引いてしまうじゃないか...

 まあ、これが男だった場合は逃げるけど。


「まあまあ落ち着くんだセシル。慌てていては何事もことを仕損じると言うだろう。」


「............」


 しかしセシルは動かない。

 いや、むしろさっきよりも前に出てきたぞ!


「な、なんだいセシル?急にそんな張り切っちゃって?」


「.........早く...」


「ん?なんだって?」


「大事な話、早く!」


「あっ、ああ!えっと、ええとね~大事な話、ね!」


「......どうして話さないの?」


「ああ、いや~別に話したくないとかそういうことじゃ...」


「......嘘つき...」


 一層不機嫌になって、ぷいっとそっぽを向いてしまった。


「あっ!いや、そういうことじゃないんだ!そうじゃなくて、その、さっきのは冗談というか、セシルが暗そうだったから元気を出してあげたかったっていうか...」


「.........どういうこと?」


「いや、大事な話があるって言えば、セシルと話せるかなぁと思って、それに暗そうな顔してたから心配で...」


「心配してくれてたの?」


「うん...まぁ......」


 セシルは申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「そうだったんだ......」


「いや、でも急に話かけたのは悪かったよ。ごめん。」


 するとセシルは申し訳なさそうな笑顔で、ありがとうと言ってくれた。

 その笑顔に思わずドキッとさせられてしまったのは不覚である。

 

 というか精神年齢高いはずの俺が子供を勘違いさせるような発言をしてどうするんだ。

 言葉の使い方ぐらいできない大人とか、ほんと人としてありえないからな。

 そしたら俺は半分ぐらいありえない人だろうけど。


 俺が少し動揺していると、セシルが話題を切り替えた。


「そういえば、今日は魔法の授業があるね!」


「え?そうだったっけ?」


「うん、そうだよ!創造魔法の授業!」


 ───創造魔法の授業...だと!?


「それは本当か!セシル本当なのか!」


「え...う、うん。本当だよ。......どうしたの?ルーラ、すごい嬉しそうだよ?」


 .........そりゃぁ.........


 やっと俺の活躍の場がやってきたんだ!

 異世界無双だ!無双の時間だ!

 嬉しくないわけがないだろう!


 俺はこの世界に転生してから今日に至るまでの二年間、創造魔法以外魔法と呼べるものは一切使えなかった。

 一切だ。一つもだ。

 のどが渇いたから魔法で水を出し、たき火をしたいから魔法で火を起こし、敵が現れたら魔法で電撃を浴びせ......

 数々の魅力あふれた魔法とともに、よくある異世界転生からの超絶無双な人生を歩むはずだった。

 はずだった......だが!


「あのくそロリババァ女神め!何が異世界転生だ!何が危険だ!転生したら普通は言葉分かるだろ!歳は10歳かそれ以上あるだろ!魔法使えるだろ!そして性別間違えてんじゃねぇよごらぁ!」


「ルーラ!?急に怒った!?」


 .........だが、まぁ。


 やっと、やっとだ。

 

 やっと俺のターンが回ってきたというものだ!

 今までは序章の序章!

 前菜にもほどがあるってものだ!

 メインディッシュはこれから来る!俺の活躍が世間を圧巻の波に包み、超無双系の異世界転生ライフが幕を開けるのだ!


「ふっ.........はは......あはははは!」


「大丈夫!?どうしたの!?」


「ずっと俺のターン!!」


「ルーラ!?しっかりして!」


「......っああ。セシル、ありがとう。戻ってこれたよ」


「よ、よくわかんないけど、元に戻ったみたいだね。よかった」


「次は私のターンだね。ドロー!」


「よくなかった!?」


 セシルの機嫌も直ったことだし、今日はいい一日になりそうだな!

 


 嬉しいからだろうか、俺の頬に当たる風が、いつもより暖かい気がした。



 ………室内だから風ないけどね!


ゆるゆる更新です。

執筆は気分が大切だと思うので。

言い訳ですね^ ^

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