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41話  決闘と決意



 俺が魔法の練習の続きをしようと思ったら、3人組の誰かがやってきた。

 あれは...誰だ?


 俺が目を細めてら彼を見ていると、三人組の真ん中にいる図体のしっかりしてる奴が大きな声で言ってきた。


「オレはAクラスのガイ・ウェークトン!ウェークトン家の長男だ!おいそこのお前!何をしている!早くひれ伏せ!」


 なんかこっちの方を指さして言ってくる。

 そこのお前?

 反射的に俺は後ろを振り向く。


「...いや、お前だよ!今後ろに振り向いてるお前!」


 え?

 あ、俺か。

 なんだ俺の後ろに誰かいるのかと思ったぜ。


 この世界の俺は、心は男子でも体は可愛い女の子である。

 男の子に話しかけられたんだから、しゃべり方はしっかりと作っておかないとね。


 ということでかわいげに返答する。


「私に何か用ですか?」


 するとそいつは荒々しく返答する。


「だから!オレはウェークトン家の長男だ!なぜ地面にひれ伏さないんだ!」


「え?ウェークトン毛?」


「違う!ウェークトン家だ!」


「うん?ウェークトン毛?」


「ウェークトン家だっ!」


「ああ!ウェークトン毛か。」


「ウェークトン家!」


「なるほど.......」


 ウェークトン毛...

 俺は少し考え、記憶を探る......

 

 ────ふりをする。

  

 だってわかんないんだもん。

 ウェークトン家、誰だよお前。


「なるほど......では私はここらへんで...」


 ということで、俺は何も知らないので早々に撤退する。

 三十六計逃げるにしかず。

 逃げるが勝ち。

 あとは全部任せたぞとっつぁん。


 勝つか負けるかの二つの選択を迫られた時でも、俺はそれ以外の選択肢「逃げる」を選ぶ男だ。

 無論、反対意見は俺の偏見と独断によって打ち砕かれる。

 よって俺は逃げる。

 

 超論理的思考。

 そしてすべては俺の思い通りになる。

 

 俺の頭の回転スピードには誰もついていけないのだ。

 よし、これこそが完璧。


 自分でも何言ってるかわからないがが、とりあえずこの場を去る。


「おい逃げるな!俺が誰か本当にわからないのか!」


 逃げ足をいったん止め、チラッと後ろを見る。


 ......やっぱり分かんない。

 あ、でもどこかで見たことあるような気がしなくもない。

 あれどこだっけ...


 するとそいつが付け足すように言う。


「生鈴式の時にオレの顔を見ただろう!」


「ああ!思い出した。あの時の悪ガ......男の子3人でしたね!」


 失敬失敬。あの時の悪ガキ3人組だったね。

 セシルたんをいじめようとしていたから俺が止めたんだったっけ。


 よくAクラスになれたな。

 才能あったのかな?うらやまけしからん。


 ...で、


「何か用ですか?」


 俺が言うと、そいつが思い出したように言い返してくる。


「そうだ!俺は高貴なるウェークトン家の長男、ガイ・ウェークトン!お前のような底辺の平民以下は、俺が前に来たら跪かなけなければならないのだ!」


 そんなルール聞いたことないぞ。


「だから早く跪くんだ!そしてセシルをAクラスに戻すんだ!」


 ん?セシル?

 なんでここでセシルのことになるんだ?


「セシルは関係ないんじゃないかな...?」


 俺が言うと、ガイは怒ったように言う。


「セシルは本当はAクラスだったのに、お前のせいでDクラスになってしまったんだ!だからお前がなんとかしてセシルをAクラスに戻さなきゃないんだ!」


 なんだよその理屈。

 

 確かにセシルがDクラスに来たのは俺が原因かもしれない。

 だが、それは俺がそうさせたわけじゃない。

 セシル自身の意思でDクラスに入ってきたんだ。

 つまり、セシルの選んだ道について俺があれこれ言う権利はない。


 まあその権利があったとしても、今はDクラスにいて欲しいと思っているが。

 

 はいそこ、目の保養のためにセシルを使うんじゃないとか言わないように。

 

 俺は言い返す。


「それってあなたがセシルと一緒になりたいだけじゃないの?」


「そ、そんなわけないじゃないか!お、おれは、その、その、ウェークトン家なんだぞ!ウェークトン家の誇りを持った俺がそんなこと考えるわけない!」


 あたふたしながらそいつは言い返してくる。

 顔が真っ赤だ。

 

 さらに俺は問い詰める。


「ひとめぼれしたの?」


 するとガイはこちらに背を向け、俺たちに顔を見せずに言う。


「な、なにをそんな、ばかなことをいってるんだ!そんなことあるわけ、ないだろう!」


 なるほど、図星だな。

 

 ということはあれか。

 セシルにひとめぼれしたガイ君は、自分のクラスにセシルが来て喜んでいた。

 が、その矢先、セシルがDクラスに行っちゃった。

 それで落ち込んでいたところ、その原因が俺であることをなぜか知り、セシルをAクラスに戻すよう俺に働きかけてきたと。 


 これは恋してるんですね。

 キュンキュンしてるんですね。

 ガイの青春恋愛物語が始まるんですね。

 うらやまけしからんぞ。

 

 確かにセシルは可愛いしな。ひとめぼれしてしまったのもしょうがない。

 その思いがセシルに伝わって、セシルがそれを受け取れば晴れて夢が叶うというわけだ。


 わけだが......


 俺はセシルに問いかける。


「ねぇセシル、ガイ君のことどう思ってる?」


 俺が言うと、セシルは困った顔をする。


「うーん......」


 するとガイがばっとこちらを振り返り、セシルの返答に耳を傾けた。

 気になるんだな。


 セシルはしばらく迷ったが、申し訳なさそうに言う。


「ええっと、そんなに好きでもない、かな?」


 あ......


 ガイ君振られましたね。

 分かりやすく拒否られましたね。


 まあ生鈴式の時に、セシルいじめてたしな。

 あたりまえか。


 これでガイの青春恋愛物語は終わりを告げたわけだ。ジ・エンドだ。

 かわいそうに。


 ...すると、ガイ君がなぜか喜びの声を上げる。


「つまり、嫌いではないということだな!そういうことなんだな!ハハッ!見ろ!これがウェークトン家の誇りと威厳の力だ!ガイ・ウェークトンの力だ!」


 え?どうしてそうなる。 

 勘違いしてるのか。


 こいつセシルの言葉の意味を分かっていないぞ。

 少し考えてみればわかるものを。

 

 ていうかウェークトン家の誇りと威厳の力でこの結果とか、どんだけちっぽけな誇りと威厳だよ。

 もうウェークトン毛でいいよほんと。


 とりあえず勘違いを解かないと。


 すると、三人組の中の後ろにいる細身の奴がガイに向かって控えめに言う。


「ガイ兄さん、多分セシルちゃんはガイ兄さんのこと嫌いだと思います。」


 それにガイが答える。


「なんだと!ブル、それは本当か!」


「うん、間違いないと思います。」


 へー。

 あの低身長でガリガリなやつがブルっていうのか。

 男のくせに髪がきちんと整えられているな。

 おそらく三人の中で一番貴族としての気品があると思う。


 まあセシルには勝てないだろうがな。

 

 

 ブルは三人組の中のもう一人、身長が少し高くてまるまると太った奴に共感を求める。


「ボウド兄さんもそう思いませんか?」


 するとそいつはだるそうに答える。


「おらはそういうことよくわからんだべ。難しいことはブルが考えればいいと思うんだべ。それよりおらは腹がへったべ。兄さん、昼飯はまだなのか?」


 聞かれたガイは本当にめんどくさそうに答える。


「昼飯はまだまだだよ!もう今日だけで3回その言葉を聞いたぞ!少しは我慢しろ!」


 ボウドってやつは飯が大好きなのかな?

 体つきも太ってるし、いままでは恵まれた、いや恵まれすぎた食生活を送っていたのだろう。

 ていうかはっきり言って太りすぎだ。

 相撲出れるぞお前。 

 

 ボウドは飯をやればなんでも言うこと聞いてくれそうだな。

 今度ポテチで試してみるか。

 


 で、三人の会話を聞くに、図体のいいのがガイで長男、超太ったのがボウドで次男、そしてちっこくてガリガリなのがブルと。

 中の良さそうな三人組だな。

 三銃士かな?

 ......いや、悪ガキ団子三兄弟だな。

 

 あ、でもこれじゃあ体系に差がありすぎて、団子三兄弟にはなれなそう。

 串に刺したらボウドにみんなつぶされちゃいそうだ。

 いや、その団子をボウドが食べるかもしれない。

 これはひどいな。

 

 ブルは3人組というより、二人に付きまとわされてるって感じだな。ちっこくて頼りない感じだけど髪とか服は一応きちんとしてるわけだし、頭は回りそう。

 そしてボウドは飯が食いたいがためにガイについていってると。これはRPGの職業で言うとタンク役かな?

 何も考えずにのっそりとしている感じだな。

 

 でもこれじゃあ、ボウドがガイに付きまとってて、ブルも二人に付きまとってるだけじゃないか。

 三人組とか言ったけど、実質ガイが一人で動いてるのと変わらないよな。

 でもガイは自分で何かを考えるのとか苦手そうだし......。


 なんてバランスの取れてない3人組なんだ。

 なにかあったらすぐに崩壊しそう。



 まあ、そんなんことは俺には関係ないか。

 三人組、主にガイとブルが今話し合ってるみたいだけど、勘違いはブルが解いてくれそうだしな。

 

 それじゃあ俺とセシルは魔法の練習をしに別の場所に移動しますか。

 俺はセシルに声をかける。


「セシル、別の場所で魔法の練習しようよ。」


 すると、セシルが目をぱぁぁっと輝かせる。


「私もルーラと一緒に練習していいの?」


「あ、うん。一緒に練習しようよ。」


 快諾すると、セシルはやったぁ!と言いながら明るい笑顔を俺に見せてくれた。

 その無邪気な笑顔の美しさとキュートさと、そしてまっすぐな瞳の破壊力は、俺の意識を飛ばすには十分すぎた。

 

 あ、やばい。可愛すぎて死ぬ。天使すぎて俺が聖なる光に当てられて死ぬ。でも死因がセシルたんならなら別に死んでもいいかな......

 ハッ!一瞬意識が。

 

 頭をぶんぶん振って意識をこちらの世界に戻す。

 危ない危ない、もう少しで昇天するところだった。

 セシル、強い。


 でも、今はそれより別の場所に行こう。

 さっさと3人組から離れようと、俺は小走りを......


「おい待て!待てよ、ルーラ・ケイオス!」


 ぐぐっ!

 俺は急停止する。

 どうやら話し合いが終わったみたいだ。 


 早く練習させてくれよなぁ。

 それにこの三人組とは面倒ごとを起こしたくないんだけどなぁ。


 ガイが続ける。

 

「お前に話があるから、こっちへ来てくれ!」


 しかし俺は動かない。

 3人組に背を向け、小走りのポーズのまま停止している。

 

 どうしようか、話を聞いてやろうか。

 でも面倒だな...どうしようか。


 俺は数秒考える…................けど、まいっか!そしてまた俺は走りだす。

 タタタタタタタッ!


「あああ!待ってくれ!大事な話なんだ!セシルがどうなってもいいのか!」


 最後の言葉を聞いた瞬間、おれは180度方向転換して3人組のもとへと駆け寄った。

 そしてすぐさま低い声を出す。


「その話......聞こうじゃないか。」


 セシルもかかわっているんじゃあしょうがないな。

 話を聞いてやろう。


 ガイは俺の行動に少し引き気味になりながらも言う。


「あ、ああ......つ、次の魔法学の授業で決闘をするのは知ってるよな?」


 決闘?なんだそれ、コロシアム的な何かか?

 俺が分らない顔をしていると、ガイが説明する。


「知らないのか......決闘は、二人一組になって戦う訓練のことだ。詳しいルールはしらないけど、戦う相手は選べるらしい。だから、その時にオレとお前で...決闘しないか?」


 ああ、なるほど。

 要は二人一組で行う実践的な訓練というわけだな。

 小学生同士で行うなら危険も少ないし、もし危なくなっても大人が止めに入れる。


 合理的な練習方法だな。

 

 と、ここでセシルが話に割り言ってくる。


「え!?決闘は男同士、女同士で、しかも魔法使いは魔法使い同士、剣士は剣士同士のはずじゃ...」


 ガイはすまし顔で答える。


「ああそうさ。その通りだとも。基本は、な。でも、ルールとしてそう書いてあるわけじゃない。絶対じゃないんだよ、これは。」


 そういい返し、俺の方に向き直る。


「でも、ただの決闘じゃつまらないからオレとお前でかけあおうぜ。」


 かけあう?何を?


 俺が怪訝な表情を浮かべると、ガイはニヤっとして言う。


「もしオレが勝ったらセシルをAクラスにしてもらう。お前が勝ったらオレは諦めてセシルの周りから離れる。どうだ?いいだろう?」


 一呼吸おいてから彼は言う。


「これを受けるか受けないかはお前次第だ。お前が断っても別にいいさ。でもな、もし断ればウェークトン家への無礼として訴えられるからな!さあどうする?」


 こいつ、セシルをかけて戦うとかなんてロマンチックな展開だ!

 激しい色恋沙汰だなおい。俺は女だからお前だけの色恋沙汰だけど。


 でもなぁ。

 俺が負けたらセシルはAクラスに行く。勝ったとしてもあいつが少しいなくなるだけって、条件俺に不利すぎないか?

 しかも、俺自身のことだけ考えてみれば戦う必要性は一切ない。

 だって俺に何のメリットもないんだもの。


 それに決闘に勝てるかという問題もある。

 いや、創神化とか極歩とか使えばもう敵じゃないよ?

 でも、ここで創神化を使っても悪目立ちしてしまうとしか思えない。

 俺の力を狙っている誰かに情報が伝わるかもしれない。もしくはそういう輩に直接俺の姿を見られるかも。


 いや、それで狙われるのが俺だけなら、創神化を使って倒すか、極歩を使って逃げるかするよ?

 でもこの世界の俺には大切な人がたくさんいる。


 家族、友達、ベイルさん、アイザックさん、そしてセシル。


 俺を狙うがためにセシルが人質に取られたりしたらその時点でゲームオーバー。

 もうなすすべないだろう。


 俺が原因で周りの人に迷惑をかけてしまうのは極力避けたい。

 これは俺が前世から大切にしている考えだ。

 

 よく学校の先生や偉い人は、仲間と助け合って生きることが大切だとか言う。

 でもそれは違うと思う。

 仲間と助け合うということは、自分の失敗が周りに伝わっていくということだ。

 

 その失敗の波紋は誰にとっても不快なものだ。

 一回だけならいいかな...と最初は思えるかもしれないが、何回も失敗するうちにだんだんとストレスが溜まっていく。

 そしてストレスがたまりすぎて、人と人との間に亀裂が生まれ、最後にはバットエンドを迎える。


 そう、どっちみち人とまともにかかわりあうなんて不可能に近いのだ。


 決闘をすることによって、さまざまな人と関わることになるだろう。

 それはうれしい出会いも生むかもしれないが、会いたくなかった運命にも出会ってしまうのは必然だ。

 

 異世界から来た俺は、決闘だー。わーい。なんて何も考えずに決闘なんてできない。

 きちんと考えてやらねばいけない。

 はぁ、どうしようか......


 逆に考えてみるとどうだろう。

 

 もしこれがなんのかけもない勝負だったら?

 その時は俺は寸分の迷いも見せずに拒否しただろう。

 

 だがこの決闘は条件付きだ。しかも愛しのセシルたんがかけられた決闘だ。

 この決闘に負けて失うのは俺の評判と、セシルたん。


 別に俺の評判が落ちるのはどうでもいい。

 でもこれでセシルを失うのは痛すぎる。

 勝負を受けなければ?


 セシルを失うことなく、俺の評判も落ちることなく、晴れてハッピーエンドだ。


 あれ?つまりこの勝負、受けない方がいいんじゃね?


 .....................うん、やっぱり受けなくてもいい勝負だな。

 受けない方がリスクが少ない。

 受けてもいいことない。 

 よし、断ろう。


 

 俺は自分の選択を信じ、顔を上げる。


 と、


 ────目の前にセシルの顔があった。


 セシルはこちらを見ていた。

 まっすぐ、しかし不安そうな顔でこちらを見ていた。

 その瞳には、俺にすがるような、俺に何かを求めるような何かが浮かんでいた。

 

 俺はその瞳をじっと見つめた。

 

 ─────ッ!


 俺は、はっとした。


 そうだ、この決闘で考えるのは俺のメリットデメリットではない。

 セシルの立場になって考えてみよう。

 セシルは今どのような状況に置かれているのか。


 そう、俺が勝ったら三人組はセシルにちょっかいを出さないという条件が決闘にある。

 つまりだ。セシルは日常的に三人組にちょっかいを出されていると考えてもおかしくない。

 俺の見ていないところでセシルたんが嫌な思いをしているのかもしれないのだ。


 じゃあ、セシルは俺にどうして欲しい?


 ───決闘で勝ってほしいのに決まっているだろう。


 決闘を受け、個のイヤーな色恋沙汰に決着をつけて欲しいはずだ。

 そうに違いない!


 

 そう考えるとどうだろう。

 俺は決闘を受けるべきか否か。


 俺だけでなくセシルのことも考えれば...


 俺は迷った。


 迷いに迷ってまた迷い────


 ───決めた。



 ガイが言ってくる。


「ルーラ、決闘しようぜ!」


 俺は決意を固めて言う。


「ああ、分かった。本当はやりたくないんだが.........決闘──────しません。」


「「ええっ!!!!」」

 

 セシルとガイの驚きの声がハモる。


 しょうがないので俺が理由を言う。


「いや、すごく迷ったよ?でもさ、面倒くさいでしょ?決闘って。」


 うん、面倒くさい。とてつもなく面倒くさい。

 

 そんなことしているんだったらセシルを見ていたり、魔法の本を読んでたり、スキルの鍛錬してたり、セシルを見ていたりした方が有意義な時間になるだろう。

 特にセシルを見ている時間は重要だ。必要不可欠だ。


 それに、最近あんまり動いてないからね。

 急に動いたら筋肉痛になりそう。体を動かすのもだるい。

 

 ごめんねセシル、俺の意思は覆せないみたいだ。

 

 『めんどうくさい』


 この一言が世界を変える時がくると信じて、俺は決闘をサボるよ。

 

 と、セシルが俺の方に寄ってきた。

 なんだろう、と思っていると俺の手を両手で包み込むようにして握った。

 そしてあどけない顔で懇願してくる。


「ルーラ......お願い.........うぅ......」


 ぐほっっ。


 ちょっ、破壊力が、破壊力がはんぱない。

 そんなに可愛くされたら俺の決意が揺らいでしまうではないか。

 

 でも、、、俺のめんどくさい精神は今までのようには柔らかくない。

 

 それぐらいの攻撃力では俺の決定は覆せない......ぞ.........え?


 なんとセシルが俺の服に顔をうずめていた。

 しかも「お願い...お願いっ......ぐすっ......」と言いながら半泣きで、だ。


 でも、俺のめんどくさい精神は.........あっ、めんどくさい精神さんが退場するみたいです。

 俺の決意が崩れ落ちました。

 もうこれは決闘やるしかないっすわー。

 やる気120%ですわー。


 もーこうなったら容赦はしないぞ。

 ギッタンギッタンのグッチョングッチョンになるまで叩きのめしてやる。

 

 よぉぉぉし!!

 やってやるぞぉー!

 決闘なんて一瞬で終わらせてやるぞぉー!


 俺は決意を固めた状態で言う。


「ガイ君、決めたよ......やっぱり俺は、決闘───────しません。」


「「ええええええっっっ!!!」」


 セシルとガイの声が重なった。


 やっぱりめんどくさい精神には勝てなかったです。あはは。

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