35話 入学式
これは……なんというか……
「ルーラちゃん綺麗ですよ〜とっても可愛いですよ〜。ほら、お母さんも見てあげてくださいよ。娘さんのドレス姿、とってもキュートですよ。」
招待状が来てから2週間後。
今日は入学式の日だ。
なので俺をドレスで着飾って豪華な入学式にしたいらしい。
ただ今日はアメリーさんが休暇中なので、町の服屋さんを専属で雇ってドレスアップしているという事だ。
けどなんか……なんでこんなに女の子の服を着せられなきゃないんだ。
体は女でも心は男なんだぞ。
物凄い女装してる感があって、シュールというか複雑な気分だ。
可愛くても可愛くなくてもどっちでもいいんだけどな。
ていうか入学式でこのドレス姿はないだろう。
流石に異世界だからと言って小学校……ああ、ここだと小等校か。
小等校の入学式で結婚式まがいの服装は場違いすぎるだろう。
ていうか女子の服装とか俺全然知らないし、何が正解で何が間違いか分からない。
そんな中ドレスを着て人前に出ようものなら精神的にとても良くない。
いや絶対精神に異常をきたすだろう。
自分で自分の心を痛めつけるドMな趣味は俺にはない。
そう考えると、このドレスは絶対ないな。
せっかく専属の着付け師を雇っているのに申し訳ないが、普通の服にしてもらおう。
と、お母さんが騒ぐ。
「あらほんと!ルーラったら、いつにも増して可愛いわ。白いドレスがとても似合ってて最高よ!」
「いや、お母さん、ドレスじゃなくて普通の服がいいんだけどな。」
「えーでもこのドレスとっても似合ってて可愛いと思うのだけれど。あらあらあら可愛いわ。まあまあまあ可愛いわ。」
「いやでもね。だけどね。」
「もう、ほんっとうにかわいいんだからうちのルーラはっ!そんなに遠慮しなくてもいいのよ〜。大丈夫、そう大丈夫。かわいいのは私が保証するわ。」
「ねえお母さん」
「そうでしょうルーラもドレス姿がいいでしょう。じゃあもう決まりねこのドレ」
「普通の服にしてくださーい!」
なんだかんだでその後も説得を続け、普通の服で入学式を受けることに決定できた。
お母さんの執着心がすごかった。
どんだけ俺にドレスを着せたいんだよ。
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そして馬車に揺られること約20分。
ミシェート小等格学校に到着した。
入学式に参加するであろう他の子供が沢山いる。
すげぇ。髪の色が十人十色、カラフルだ。
赤、青、緑、白、ゴールド、ブラウンなど色々ある。黒が一人も見当たらないのが少し残念だ。
校内に入り一旦親と別れる。
そして体育館に移動して席に着く。
体育館は結構広いな。前世の時の高校の体育館の2倍ぐらいある。
そしてその広い体育館の中央に60個ぐらいの、いやぴったり60個の椅子が並んでいる。新入学生用のものだろう。
体育館の大きさに似つかわしくない椅子の数だ。
そして体育館の横と後ろの方には数百個の椅子が所狭しと並んでいる。こちらは保護者や教員、学校関係者や貴族用だろう。
新入学生の椅子の何倍も場所をとってずらーっと並んでいる。
いくらなんでも多すぎだろ。スポーツ観戦じゃないんだからもう少し少なめでいいだろ。いや半分でも多い気がするが。
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入学式が始まった。
といっても貴族やら栄誉会長やらが色々と喋ってるだけだが。
いつものめんどくさいやつだ。
入学おめでとうございますとか、心からお祝い申し上げますとか、どうせ心にも思ってないことをづらづらと陳述している人ばかりだ。
その上、入学式に関係ない自慢話とか世間話をグダグダ話す貴族すらいる。
ああもうだるいなぁ。早く終わらないかなー。
ってあれ、アイザックさんいるじゃん。あ、町長だから出なきゃないのね。
大変だな〜こんなに退屈な式にいちいち出席しないといけないなんて。
するとアイザックさんが祝辞をする。
「入学おめでとう。学校では大変なことが色々あると思うが、まあそこは頑張ればなんとかなる。俺が大事にして欲しいのは友達だ。ここで作った人との繋がりや信頼関係は卒業してもずっと残る。ずっと繋がったままだ。そういうものは、お金でも、名誉でも、権力でも買えないし、どんな職人に頼んでも作れない。だからこそ大切してくれ。そういう頼りあえる存在をな。」
アイザックさんすごくいいこと言うじゃないか。
のん貴族とは天と地の差だね。
みんなこういう人を見習うべきだな。
「それと、学校には色々な人が入る。普通の人や変な人もいるだろう。もしかしたら2歳で入学してくる子やmpをたくさん持った神子、勇者や賢者になった人もいるかもしれない。」
言いながらチラリとこっちに視線を送ってくるアイザックさん。
ちょ、やめてくれよ。
異世界から来たとか、本当の中身の年齢は18歳とか、創造魔法LV∞とか、ネコミミかわいい触りたいとか、バレるとろくなことにならなそうな事情を抱えてるんだからね、こっちは。
すまし顔だすまし顔。
何も知らない風を装っておこう。
「でも、もしそうだと分かっても仲良くしてくれ。その人だってなりたくてなったわけじゃないかもしれない。なりたくてなってる人は逆に少ないだろう。そういうやつを阻害したりいじめたりしないでくれ。そいつもそいつなりに考えて生きてるはずなんだからな。
以上で祝辞とする。静かに聞いてくれてありがとう。」
アイザックさん……
俺をこんなに庇ってくれるとは。
なんて優しい人だ…感動しちゃったよ。
さすが町長の座につく人だな、普通の人には無い器量があるね。
ただやっぱり俺を注視しているというか、マークされてる感じはある。
アイザックさんのいる所ではむやみやたらに創造魔法は使えなさそうだ。
そんなことしたら取り調べされそうで怖い。アイザック24時だな。どこぞのドキュメンタリーになりそう。
その後も貴族のつまらん話が続いた。
時間の無駄だとしか思えない内容の話ばかりだったが、時々まともな事を言ってる人もいた。ダメな人もいるけどいい人もいるってことだな。
そして式も終わりに近づいてきた頃、校長先生と思わしきジジイが壇上に上がった。
校長式辞かな?普通は最初の方にやると思うんだけど、まあそれは前世の話か。異世界でも同じとは限らないからな。
すると校長先生が話す。
「新入学生の諸君、入学おめでとう。親の方々も沢山来ていただき感謝する。祝いの言葉等々は既に他の方々が話した から、私から言うことは特に無い。一言言うとすれば……そうだな、学校生活を自由気ままに楽しんでくれ、ぐらいだな。以上だ。」
短っ。なんだこの校長。
校長先生の話=長い。っていうのはお約束だと思ってたけど、これも異世界では通用しない知識みたいだ。
いやでも、祝辞より短い式辞ってなんなんだよ。なんか違う。
あんなに適当にされると本当に校長務まってるのか心配になってくるぞ。
もはや職務怠慢な気もするが……気にしたら負けか。
校長先生の話が終わり、閉式宣言的なのをして入学式は終了した。
まったく、思い返してみてもめんどくさい式だったな。
特に貴族の話は聞くだけ無駄だった。
これからもこういう機会があるんだろうなぁと思うと嫌気がさしてくる。
ああ、早く家に帰って寝たい。昼間っから寝たい。
あったかい布団でぐっすり寝たい。
あ、家にはベットしかないか。
ベットも寝心地はいいけど、ずっとベットで寝てると布団が恋しくなってくる。
創造魔法で作れないかな。帰ったら試してみるか。
諸事情により更新再開おくれました。すみません。
2日後にまた更新します。




