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28話 町長と影

長めです。




武器屋に行った後は服屋に行った。エマ姉さんたちはまだ服選びに夢中みたいで、手のつかない状態だ。


「ああ〜こっちの服も似合ってるけど、でもこっちもいいかもねぇ。」


「うぅ…」


あ、違うな。お母さんの猛烈アタックにエマ姉さんが耐えている形だ。防戦一方だな。かわいそうに。………ざまゴホッゴホッ、ちょっと咳が。


「ライリー、それくらいにしておいてやってくれ。エマも疲れてる様子だしな。」


お父さんナイスフォローだ。


「そうかしら、私はまだ物足りないと思うのですけど……」


その感じだと止めなかったらいつまでもやっていそうで怖い。


「町長との会談もある。そろそろ行かなないと行けないんだ。」


「それなら…まあ…仕方ないかもしれないわね。今日のところはこれぐらいでいいわ。続きはまた今度よ。ね、エマ?」


エマ姉さんが苦笑いしながら頷く。ハッピーなお母さんとは対照的で青ざめた顔だ。おそらくこの店にはもう来ないと決めただろう。御愁傷様です。


*・゜゜・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゜・*


あの後は普通に買い物をした。主に食料系だ。砂糖とか塩とか香辛料とかの調味料から、野菜、肉など、いろいろな食材をたくさん買った。どうやって運ぶんだろうと思っていると、明らかに入りきらない量をバッグに収納してた。マジックバッグとか、そのへんのアイテムだろう。これも魔道具ってやつかな。俺もいつかは自分用に1つ欲しいな。


そして買い物を終え、適当なところで食事をとり、今は町役場というところに来ている。町の中心から少し南にずれた場所にある、黒めの木で作られた綺麗な木造二階建ての建物だ。貴族が住んでいそうな高級感もある。

鎧を着た役人の人と話を終えたお父さんが戻ってくると建物の中へ案内される。中へ入ると廊下がある。色が赤と茶色の幾何学模様の絨毯が廊下に敷いてある。高級だな。その廊下を少し歩き、途中で階段を登って2階の奥の部屋へと案内された。案内してくれた人は一階へ戻って行った。

中も綺麗な建物だなーと思っていると、綺麗なお父さんがコンコン、と扉をノックした。すると中から「入ってくれ」と男の声が聞こえる。

お父さんが入ったのでそれに続いて入ると、筋肉で体がガッチリしているムキムキの老人が、椅子に座って机にある書類にハンコを押しまくっていた。この人が町長だろうか。机の隣では、細身で長めの緑の髪の男性がお茶を用意してくれていた。さしずめ秘書といった感じの役職だろう。


「おっと、今日は客人が多いみたいですね。お茶を淹れ直します。」


そう言うと机の後ろに回って棚にあるポットからお茶を出していく。優しい人だな。わざわざ気を使ってお茶を入れてくれるだなんて。

と、作業がひと段落したのかムキムキの老人が立ち上がる。


「よく来たなハドソン。今日は家族も一緒みたいだな。まあ座ってくれ。」


そう言われたので置いてあるソファーに遠慮なく座る。そのムキムキの老人も向かいあうように座った。

するとお父さんが口を開く。


「少しぶりですね、アイザックさん。」


「ああ、そうだな。時期も時期だから年明けまで来ないものかと思っていたぞ。それで?なにか込み入った用でもあったのか。」


「ええ、最近森の魔物に動きが見られまして……」


お父さんとアイザックさんこと町長の話は結構長く続いた。主に魔物の話をしていた。貿易ルートの道に出る魔物が多いだとか、町周辺にまで時々湧いて出るだとか、そんなところだ。時々お母さんも話に介入して、畑がどうのこうのって言ってた。


が、そんな話俺には関係ない。ていうか聞いてても全然楽しくない。よくこんな話を続けられるなーと話を聞き流しながら部屋の装飾とかを見る。豪華だな。イス、机、今俺が座っているソファーに至るまで全部高級感が漂っている。最高だ。

と、部屋を見回していると、町長の後ろで立っている秘書の人と目が合った。

その人はずっとこっちを見ていた。いや、「見ていた」と言うよりは「視認していた」だろうか。俺の目を見るのではなく、俺の脳みそがある空間を、何かを念じるようにしていた。顔の表面だけ見れば笑っているのに目の奥深くは睨みを効かせていて、そのねっとりとした視線に俺は目を離せずにいた。まるで金縛りにでもあったようにその顔から目が離せず、体全体も硬直していた。不思議な感じだったが、決していい気持ちにはならなかった。


「……………ラ。ルーラ?どうした?」


お父さんが声をかけてくれた。気がついて横を見ると、全員こっちを見ていた。みんな俺を心配していたみたいだ。


「…なんでもない。大丈夫。」


「そうか。でも何かおかしなことがあったらすぐに言うんだぞ。ルーラは何をしでかすか分からないからな。」


なんだそれ。俺が頭おかしいみたいになってるじゃないか。全く酷い親ですね。プンプンですよ。と怒った顔をしているとみんな苦笑交じりに笑った。


「ルーラは本当に可愛いくていい子だな。よしよし。」


お父さんに頭をなでなでしてもらう。うん、満足。


その後も少し話が続いて、終わった後は家に帰った。お父さんはもう少し町長と話をするらしいので、エマ姉さんとお母さんの3人で先に帰った。結局あの秘書の人が何をしていたのかは分からなかったけど、多分大丈夫だろう。見られてただけだし。

今日は結構楽しい1日だったな。武器屋が見れたのはいい経験だった。あんまり参考になんなかったけど。また今度来たいね。

夕日が見える中いい気分で家に帰る俺だった。



*・゜゜・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゜・*



「それで、わざわざ二人になった訳だが、話とは何かね?」


部屋にはアイザックとハドソンだけしかいない。厳しめの顔付きをしているアイザックに少し気圧され、当惑した表情をしながらもハドソンは話す。


「ええ…単刀直入に言いますと、ルーラがおかしいのですよ。」


「おかしい、とはどういうことだ?」


「時間もあれですのであまり詳しくとはいきませんが、例えば結界を張ったり、結構難しい本を読んだり、急に気絶したり、2歳とは思えない行動しかしないのです。確認はしていませんが魔法も使えるかもしれないと侍女のアメリーから報告はされています。」


「………つまりなんだ、あんな頑是ない子供が魔法を使うってか?」


「そう…ですね。もしかしたら神子という可能性も捨てきれません。あくまでも可能性ですよ。でも、もしそうだとしたら、事と次第によっては」


「狙われるかもしれない、だろ?」


「……ええ。」


「…実は俺も不吉な予感はしていたんだ。お前が相談してくるってことは、何かが起きる前兆って事だな。まあ、今のところは何も分からんが、もし何かあれば俺も協力する。ハドソン、お前もしっかり気を持てよ。」


「胸に刻んでおきます」


そう言い残し、不安を抱えながらも帰路についたハドソンであった。


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