27話 ツッコミどころが多い店主
商店街に到着した。服屋とか靴屋とか八百屋とか普通の店もたくさんあるが、流石異世界だけあって武器屋とか防具屋とか杖を売ってる店もある。怪しくて入りずらそうな雰囲気のお店もそこかしこにならんでいて、休日だけあって人も多い。賑やかで明るい商店街だ。
「あのお店行きたい!」
「服屋さんね、じゃあ行きましょうか。」
エマ姉さんは女の子だなぁ。俺はどちらかというと武器屋とか魔法の杖屋に行きたいんだがな。まあここは我慢だ我慢。
「ん?ルーラは武器屋に行きたいのか?」
「うん!」
はい、前言撤回ですね。やっぱり子供は素直が一番です。中身は子供じゃ無いが。
「服屋はいいのか?」
ブンブンと首を横に振る。まず2歳の俺に合う服が揃ってると思えないし、てか一応心は男なんだけど。服屋に行って女の子用の服を選ぶとか一男子としてものすごい抵抗を感じる。脳内にダイレクトダメージだ。自分がキモくてしょうがなくなってしまうかもしれない。
そういうことだ。
………まあぶっちゃけ武器屋に行きたいだけなんだけどね。
「そうか、ルーラは武器が好きなんだな。将来は冒険者になれそうだな。」
「あなた、それはちょっと早とちりすぎますよ。それにルーラは女の子なんだから。そんな危ないことさせた日には心配すぎて失神してしまうわ。」
「今日は武器を見るだけだ。それにルーラが危ない時は俺が守る。」
お父さんかっこいいなおい。まあいざって時は創神化して極歩使って全力で逃げるし、本に襲われた時みたいに詰むことはないと思う。
「じゃあ俺とルーラは武器屋に行く。終わったらそっちに行くから、それまで服屋で待っていてくれ。」
「分かったわ」
そう言ってお母さん達と別れる。
「ルーラ、行くぞ。」
「うん」
ということで武器屋にレッツゴー。お父さんの後ろをとことこついて行く。今日は人が多いので、迷子にならないように頑張って背中を追う。
人が多い大きな通りを歩いて行くこと数分、店頭にかっこいい剣が飾られたお店へやってきた。
「ルーラ、着いたぞ。ここが武器屋だ。色んな武器が揃っているし、オーダーメイドだってできるんだぞ。」
お父さんが武器屋の色々な説明をしてくれる。が、もう俺の目には日光を反射してキラキラと輝いた剣しかない。カッケェな。欲しいな。あんな剣で戦えたら超絶かっこいいだろうな。
と思っていると、お父さんが店の中へ進んでいった。慌ててついて行く。と、
「…………なんだこれ。。」
店の中には奇怪な武器が並んでいた。奇怪どころの話じゃないな。作り方を間違ったんじゃないかって思う形した剣とか、突き刺す部分がいくつもあるエストック、チェーンに鋭利な刃がたくさん付いている武器や、先端に曲がった棘が生えている球状のモーニングスターみたいな武器、そしてもはや釣竿にしか見えない投擲武器もあった。ていうかそういう特殊な武器しかない。なんだこの店。
「お客さんか?」
どうやら店主が出てきたみたいだ。こんな品揃えの店を構えるなんて、どんな店主なんだろう。
……っえ?
「あら!かわいい女の子でちゅね〜何歳かな?言葉わかるかな?」
「ハンナさん、そいつはまだ2歳だが、言葉も十分理解できてる。あまり子供扱いされると拗ねるぞ」
お父さん、俺そんなことしませんよ。
「あら!ごめんなさい!この子はハドソンさんの子でしたよね〜、やっぱり自分の子が他の人とじゃれあってると嫉妬しちゃいます?しちゃうんですか?そうですよね〜わかりますよその気持ち〜」
お父さんがうんざりした顔してる。めんどくさいんだな。この人。
でも………店主女だったのかよ。くせ毛の多い薄茶の髪がよく似合った細い人だ。しかも若い。17歳いってるのか?ってぐらいだ。武器職人としてはおかしくないか?
すると、店の奥からすこし年季の入ったおっさんが出てくる。
「おお、久しぶりだなハドソン」
「おおベイル、ちょうどいいところに来た。こいつをどうにかしてくれよ。話が止まらないんだ。」
あ、この人が武器を作ってるのか。さすがにこんな華奢な女性に鍛冶は無理か。
「そうだな。おーいハンナさん、遊んでる暇あったら新しい武器を作ってくれ。」
「えー……ハドソン、また今度この子を連れて来なさいよ。」
えっ、ちょ
「分かったよ、そうしよう」
うむ、と大きく頷くと店の奥に消えていった。え?やっぱりあのハンナさんていう人が武器作ってるの?え?作れるの?
と、お父さんが言う。
「これで店をちゃんと見れるな。」
「全くだ。まあ、これでもあいつの腕は馬鹿みたいにいいからな。」
「それ以外もどうにかなればいいんだがな。」
「それは弟子としてつくづく思うよ。やるときは飯も睡眠もなしでぶっ通しで3日ぐらいやるからな。どうにかして欲しいところだ。」
意外とあの人凄いんだな。凄いと書いてヤバイとも読むがな。
しっかし、この店のカオスな武器たちを作ったのはさっきの人なのか。そしてこの男の人は弟子だと。人は見た目によらないってやつだな。今回はそれが激しすぎて違和感半端ないけど。
「それにこの釣竿なんて、言われるまで投げて使うもんだとばかり思っていたぞ。」
弟子のベイルさんが言う。
え、てか、普通投げて使うでしょ。何か間違ってるか?
と思っていると、釣竿の持ち手にある見えにくいスイッチを押した瞬間、
ジャイン!と言う音と共に先端にびっしり棘が出て来た。エッグい武器だなおい。
「まあ、普通に強いんだが、見た目がな。」
「ああ、師匠の作る武器はどれもこれも謎が詰まっている。どうしてこの形になったのかがわからない。でもだからこそ俺はそのセンスに惹かれたんだよ。」
「俺はお前のそう言うところもよく分からないがな、ベイル」
「そんな冷たいこと言うなっって」
二人が笑い合う。なんだよここの店主、ツッコミどころ多すぎるだろ。ベイルさんがハンナさんを師匠って呼ぶ光景はシュールすぎる。どっちが師匠でどっちが弟子かわかんねぇな。
もうなんかこんな武器を見てるだけで満足しちゃった。というか、お腹いっぱいだな。これ以上は目に毒だ。いやこれ以上ここにいてはいけない気さえしてくる。店主の雰囲気が強すぎるんだってばよ。よし帰ろう。お父さんの服の裾を引っ張る。
「もう帰りたいのか?」
「うん」
俺はそそくさと店を後にするのであった。
体調が優れないので明日の朝は更新なしの可能性大(夜はします)