19話 同情するなら金と属性適正をくれ
……白い、部屋。何もない空間………!この空間は、
「意外とすぐに来たじゃない。もっと時間をあけると思ってたのに。」
女神のところだな。白くて何もない空間に、今日は髪の色が黒のあいつがいる。
「3日前ぐらいから来たいと思ってたのになんでここにいれなかった?」
「あらごめんなさい、ちょっとタイムラグがあるのよ。私はすぐにここへ入れたつもりなんだけど、やっぱり数日ぐらいずれちゃうみたいね。」
全く、使えねぇなおい。
「それで、今日は何をしに来たのかしら?向こうに行ってすぐにここに戻ってくるなんて、何か聞きたいこととかあるんでしょ?まさか無いなんて言わないわよね。それとも、ただ単に私の凄い魔法が見たかった?それとも私の美しい姿を見たかった?うっふっふ、私はどれでもいいわよ?」
にやにやしながら女神が言ってくる。
「聞きたいことがあって来た。」
すると一瞬、え、なんで?って顔をするも、ふむふむそういう事ですわねと小声で言ってからにやにや顔に戻る。
「そう、何を聞きたいのかしら?私の美容の秘訣?私の使えるすごい魔法?それとも全部かしら?うふふふ。」
「そんなんじゃねぇよ。てか2000年も生きてるくせにそんなことしか考えてねぇのかよ。もうちょっとましな考えを持てよ、一応女神なんだし。」
「何が一応よ!私はれっきとしたいち女神様なんだから!なんか凄いんだから!」
またわーきゃー言ってる。これは落ち着かせないとな。
「すごーい。女神様すごーい。」
「そ、そんな棒読みで言われても嬉しく無いんだからね!」
どうしてツンデレで返せるのか。その精神力に尊敬するぜ。
っと、いつまでも茶番をしていては進まないので本題に入る。
「それで聞きたいことなんだが、俺を異世界に転生させたのってお前で間違ってないよな?」
「え?ええ。そうよ。詳しく言うと私の分身だけど。それで?」
「ああ、それでだな、俺を転生させる時に何かしなかったか?」
「…何かって、何よ。」
「たとえばステータスをいじったりとか。」
「そんなの、私の権限でできるわけないじゃない。それにまず、他人のステータスを書き換える力なんて上位神の一部しか持ってないわ。権限があってもできないわよそんなこと。それを誰かがやってるところも見たことないし。」
「本当か?」
「本当よ。」
「……………そうか。」
となると、誰かにステータスを変えられた可能性は捨ててもいいな。こいつの言うこともそれっぽいし、何よりこいつ嘘付かなそうだし。
「そんな深刻そうな顔して、何かあったの?」
おっと、考えているうちに表情がこわばってしまっていたようだ。
「何かあったというか、属性適正って分かるよな?」
「当たり前じゃない」
「それなんだが、俺の属性適正が無いんだよ」
「え?……それだけ?」
いや、なんだよその反応。
「その体からして、まだ転生してあんまり時間経ってないでしょ。その歳じゃまだ生鈴式もしてないだろうし、適性がなくてもしょうがないわよ」
「生鈴式?」
「あら、知らない?7歳の時に受ける式で、神水晶を使って受けるらしいわよ。私はやったこと無いけど。その時に授かったジョブによって属性適正も変わってくるわ。まあ最初はほとんどの人が魔法使いか剣士になると思うけど。」
「それならもうしたぞ。神水晶に触って魔法使いになった」
女神の顔が驚きに変わる。
「魔法使いで属性適正が無い人なんて聞いたこと無いわね………神聖属性の適正も無いの?」
え、神聖属性?なんだそれ。
「ほら、結界とか張れる属性よ。」
「ああ、結界なら張れたな。」
「なら大丈夫よ。神聖属性の適正がある証拠だわ。いま適正が無い属性も、後天性のことだってあるわ。気長に待った方がいいわね。」
「そうなのか」
でも、うーん、なんか納得いかないな。だって適正なしだぞ?0だぞ?オールゼロだぞ?
の○た君の気持ちがわかる気がするよ。いつも0点取れるのは逆に凄いと思うけど。選択問題とか当たったりしないのかな?
「じゃあ、今日のところは帰るよ。愚痴を聞いてもらってすまないな。」
「別に迷惑じゃないしそれぐらいいいわよ。神として私は色々と大変だけど、あなたも同じぐらい大変ね。」
「同情するなら金と属性適正をくれ。」
「……今日のところは帰っていいわよ」
こいつ…………
目の前が光に包まれる。
気がつくと、朝になっていた。