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14話 おバカなひとり女神は寂しがり屋



……あれ…なんだ、ここ。


気づいたら俺は、転生した世界の方の幼女体型の体で白いところにいた。どんな場所だと聞かれても、白いとしか言いようのない、そんな場所だ。真っ白の床に、真っ白の空、それがどこまでも続いている。見ているだけで、清楚だが何もない孤独と虚無の空間に飲み込まれそうな、包まれそうな不安感が薄く漂う。

が、それはあいつの姿が目に入った瞬間に消えた。


「おい、なんでお前がいるんだエセ女神」


いつぞやの幼女ロリババァ女神がいた。


「誰がエセ女神よ!」


「あれ違かったっけ?まあいいや。てか今日は髪の色普通なんだな。」


「あら、よく気づいたわね。そうよ。私ぐらいになれば髪の色を変えることぐらいどうってことないのよ。どうよ。すごいでしょう?」


「なるほど変幻自在って訳か………それって何かに使えるのか?」


「ええ、使うと女神っぽくなるわ!」


って、それだけかい。しかも色を変えるなら、あの白にも見えるような黒にも見えるようななんとも言い難い謎色じゃなくて、普通に青とかピンクとかにすればいいのに。センスねぇな。まあそれを言っても仕方ないしとりあえず相槌うっとくか。


「へーすごい。」


「あ…え、そ、そんなにすごいかしら…?ふふっ」


なんだと!こいつ、俺が語尾に(棒)が着きそうな雰囲気で言ったのにも関わらず照れやがった。なんつーツンデレだよ。ってか俺の心読めないのか?


「今日は俺の心を読まないんだな。」


「あれは死者を通す時以外はあんまり使っちゃいけないって上の神がうるさいのよ。全く、めんどくさいわね。あれ、なんであなたがそれを知ってるのよ。」


なるほど、死んだ奴相手ならいいけどそれ以外はダメってことか。というかこいつより上の神様いるのか。神様にも先輩後輩あるのかな?


「じゃあ、お前の喋り方が前と全然違うのもそれの影響か?」


「喋り方…?あ、死んだ人の相手をするのは私の多重形成の方……私の分身がそういうのやってくれるのよ。私の分身出せるのよ?すごいでしょ?」


「すごーい」


なるほど、分身とかも出せるのか。ていうか、今褒められたと勘違いして1人で舞い上がっているこいつがそんなことできんのか?あ、でも一応自称女神だし、できたとしてもおかしくないか。


「まあ大体分かった。それで、なんで俺はここにいるんだ?」


確か俺は色んな魔法を作って、それで寝たはずだ。ここに来ようとはしていない。誘拐?いやまさかね。


「え?なんでって、なんとなくに決まってるでしょ。」


「はぁ?なんだよそれ。なんとなくって、なんで俺はそんな理由でここに呼ばれなきゃいけないんだよ。」


「別に理由もなく呼んだ訳じゃ無いわよ!」


「じゃあなんで俺を連れて来た」


「暇だからよ」


「っ!?」


こいつ………俺の大事な時間を「暇だから」で済ますなんて…!(まあぶっちゃけ日中暇なんだがな。


「別にいいじゃない」

「人間だもの」


おっと無意識のうちに反応してしまった。


「えっ?何?」


「ああ、なんでもない。続けてくれ。」


「……別に夢の中だし、ここにいても怪我をしたりしな」


「夢の中なのか。じゃあいいか」


「最後まで聞きなさいよ!」


わかったわかったと言って落ち着かせる。全く、女神様にしてはあーだこーだうるさいな。


「本当に分かったの?」


お、人を疑うことを覚えたようだ。ただのバカからちょっと賢いバカにグレードアップだな。


「うんすごーいわかったよ」


「そう。それでならいいわ」


あ、やっぱただのバカでした。残念。てか眠いな。実際体は眠ってるんだろうし、当たり前か。ふぁ〜あ。思わずあくびが出ちゃったよ。寝たいな。そうだ。


「女神さん女神さん。ベッドとかないですかね。眠いんですが。」


「ベッド?ある訳ないじゃない、そんなもの。ここにはベッドだけじゃなくて何にも無いわよ。ずっと白い空間が広がってるだけよ。」


ここ何もねぇのかよ。つまらんな。


「それじゃあ寝るどころかずっと暇じゃんか。」


「だからあなたを呼んだのよ?それぐらい分かってると思ってたけど。」


「なっ…お前、ここ以外の場所でいける所とか無いのか?」


「私に与えられたのはこの無限の空間だけよ。それ以外には直接は干渉できないし、もちろん行くこともできないわ。」


えっ………。確かこいつ、最初に会った分身が俺より千も二千も歳とってるって言ってたよな。


「お前……いつからここにいるんだ?」


「あら…女の子に歳を聞くなんて躾がなってないわね」


「いや今のそういう質問じゃ無いから!」


「仕方ないわね。もう少しで3000年ぐらいよ。そっちの世界の数え方で。」


「………」


「………」


「………」


「…何よ、急に黙って。」


「お前、ここでずっと1人なのか?」


「え?そうだけど…それがどうかしたの?」


不覚にもかわいそうだと思ってしまった。こんな何も無いところで3000年なんて、俺がそんなことをしたらおかしくなってしまうだろう。何も無いというのは絶対に辛いはずなんだ。


「そうか……ずっと1人で大変だな…」


「最近はそうでも無いわよ。もう暇にも慣れてきたし、暇つぶしに人を呼べるし。」


本人はそう言っているが、本当はそう思ってないだろう。辛くて苦しくて悩んでることがひしひしと伝わってくる。いつもは元気一杯で純粋なのに、こういうところでは嘘をつけるんだな。悪いヤツめ。


「そうだな…何かできることは……」


「あっじゃあ、時々ここに来てよ。暇つぶしにくらいにはなるわ。ずっと1人っていうのもあれだし、そうね、そうしよっか!」


どうやら俺に選択権はないようだ。まあ、今回はそれでもいいか。俺が損する訳でもないし、話し相手ぐらいにはなってやれるだろう。これが俺にできる最低限だ。


「分かった、そうするよ。でもどうやって来ればいいんだ?」


「この場所と私を思い浮かべながら寝るだけでいいわ。あとは私が念をキャッチして誘導するだけで来れるから」


「そうか。そういうことなら大丈夫だな。」


と、急に胸のあたりがそわそわし始めた。


「そろそろ起きるみたいね。じゃあ、また今度会いましょ。でも毎日は来なくていいから。時々でいいわ。」


「ああ、分かったよロリババァ女神さん。」


「もう、そんなに何回も言われたら泣いちゃうんだから」


「それは困るな」


2人で苦笑し合う。その時のそいつの笑顔は俺が驚くぐらい、とても綺麗だった。


「じゃあね…………」


俺の視界が白く染まり、気がつくと朝になっていた。

夢で女神に合うだけの予定が、いつの間にか悲哀なストーリーになっていました。不思議ですね。

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