11話 スキルレベルを鍛える変人
翌朝。俺は仕事に行こうとするお父さんの元へと行く。
「おとーさん!ほん!ほん!」
笑いながら言うと。お父さんもにっこりだ。
「今は忙しくてな…………まあいいか!」
チョロいなお父さん。早速地下室に向かう。
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「…えーっと、あとはこれとこれだな。これは全部読んでいいぞ。ああだけど、こっちの本棚に置いてあるやつは絶対読んじゃダメだぞ?危ないのもあるからな。絶対だぞ?」
そう言うとお父さんはアメリーさんにも口添えして俺が読もうとしたら止めるように言い、仕事しに行った。今日は町長と会談するらしい。お父さんて立場が意外と上の方?服も貴族って感じだったし。まいいか。
ちなみにエマ姉さんは学校に行かなきゃならないからここに来れるのは夕方だけだ。夜は俺が寝る(MPとSPを使う練習する)という予定があるので、あまりここには入れない。ざま…おっと口がすべった。
さて、アメリーさんもいなくなった事だし、机の横の方の床に積み上げられた本を読んでいきますか。多分襲ってくることは無い。ちょっとトラウマになりかけてるけど。
じゃあまず適当に一冊手に取る。そして滑り落ちる。本の角が少し削れる。って、あ………無かった事にしよう。
とまあそれはさておき、さっきの本を戻し別の本を改めて手に取る。と、ここでもう最大の難関が立ちはだかる。言語理解があるからと言って絶対本が読めるようになると確証はできない。つまり今ここで本を開いて読めなかったら……とまあ、そういう事だ。
じゃあまずは心の準備を……ん?あれ、表紙の文字読めない。あ、これ、終わった。あ、え。ああ、ふぅ。
えええええええええええ!!終わんのはえええええええよぉぉぉお!!
もはや心の準備をする暇さえ与えてくれなかった。悲しい。
い、いやいや!でも中身は読めるかもしれないはず!
バッと本を開いてみる。うん、読めない。韓国語とアメリカン国語を混ぜた感じだ。え?なんだって?意味わかんないだって?安心してください。俺も分かりませんよ、アメリカン国語。
いや、にしても全く解読できねぇ。なんだこの文字列。文字同士が繋がってる感じなんだけど、繋がり方の規則とかすら全く見えてこない。こんなのを幼児に読ませようとするとか、お父さん適当すぎだろ。どこの英才教育だよ。ああ、ト○イさんいないかなぁ。教えてぇぇ〜。教え〜て〜ト〜○〜イ〜さ〜ん〜。ああ、アルプス山脈見えてきそう。
だけど、俺はこれくらいでは諦めない。集中して読めば、集中して読めば!おおっ!読める気がして…………………………………………………こないっ!
いやもう一回だ!文字の性質を見極めるんだ……考えろ。考えろ…………考えるな………感じるんだ………ッ!これはッ、!読めないッ!
あーだめだー。この文字の羅列、規則性というものを全く感じさせてくれない。無理無理。ほらだってこことかよく見ろよ。ニコニコマークっぽくも見えるし、矢印にも見えてくるぞ。不思議文字ですね。わかります。
《熟練度が一定に達しました スキル【言語理解LV1】が【言語理解LV2】になりました》
!?
なんだと!この意味不明な文字を見てるだけでLV上がっただと。なぜだ、意味がわからないよ。確かに俺は言語を理解しようと頑張ってたけど、こんなに簡単に上がんのかよ…これは………いけるかもしれない!めんどくさいけど……ずっとやってればいずれは本が読めるように………!
そして俺は、読みまくった。読みまくった!
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〈アメリー視点〉
そろそろお昼の時間だわ。
朝に地下室でルーラちゃんを見てから、あとはずっと見かけてないわね。どうしたのかしら。ずっと地下室で本を読んでるわけないわよね。まさか……また何かやらかしたかしら?様子を見に行くとまたしても魔蔵書と戦ってました〜なんてことにでもなってたら笑えないわ。まあありえないでしょうけど………いや、見ていて危なっかしいあの子ならもしかしたら……
そう考えてしまうと少々の警戒感を持ち、肩に力が入ってしまう。
本当に大丈夫かしら。心配になってきちゃったわね。安閑としていられないわ。ちょうどお昼ですから、ちょっと様子を見に行ってご飯を食べさせに連れてこようかしら。そうね、それがいいですわ。このまますっきりしないままというのもこそばゆいですし、そうしましょう。
そうと決まると、早速地下室へ足を運ぶ。廊下を進み、石の階段を降りていき、扉の前で一旦止まる。はぁー、と1回深呼吸をしてから心のネジを締め直し扉を開ける。
「ルーラちゃんお昼ごは………ッ!?」
ルーラちゃんは……………………………………………
全力で、超全力で、本を読んでいた。そう、ただ本を読んでいるのではなく、床に這いつくばるような姿勢で、本から20cmぐらいの距離から鬼のような形相で読んでいる。いや読みまくっているの方が正しいかもしれない。しかもブツブツしゃべっている。おっとページをめくった。しかしブツブツは止まらない。目を激しく左から右へ、左から右へと動かし超近距離でブツブツ言いながら読みまくっている。と思ったらまたページをめくった。速い。かなり速い。いや恐ろしく読むのが速い。速すぎる。そしてそれに比例してブツブツ言う口の動きも加速されている。
一見かわいらしい女の子が楽しく本を読んでいるかのように見えなくもないが、よく見てみればこの状況が如何におかしいかということに気づく事が出来る。いや必然的に気づかされてしまう。
そしてこの異常な空間内で本を読んでいる彼女に話しかけることなどできるはずもない。ここでアメリーのとる行動は一つ。
「………」
アメリーは無言で部屋から出て、静かに扉を閉めた。
私は何も見ていない。そうだわ。お昼ご飯食べなきゃ。
何事も無かったかのように食堂へと戻っていった。
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〈ルーラ視点〉
文字を読もうとしまくるだけでレベルが上がるだなんて思いもしなかったぜ!今は絶賛解読中だ!
《熟練度が一定に達しました スキル【言語理解LV8】が【言語理解LV9】になりました》
やったぜLVUPだぜ。朝からやり始めてどれくらい経ったかはよく分からないが、とにかくこんな簡単にスキルのレベルが上がることに感動して、あまりにも面白いように上がってくもんだからずっとやってた。これ、解読したかどうかじゃなくて読もうとした文字数が大事だと思うんだよね。実際適当に早読みした時はレベルの上がり方速かったし。てことで効率を求めて超高速で文章を目に入れながらそれっぽくブツブツしゃべって読もうとしてるってことにしてる。この方法だとすごい加速できるしスキルLVが上がるのも速い。多分これが一番速いと思います。
いやーでもこれずっとやってるとさすがに飽きてくるね。なにせスキルLV上がったのに全く読めるようになる気配しないしね。むしろなんで読めないのか気になってくるぐらいだよ。こんなに高速で読んでるのにね。言語理解さん頑張ってくれ。
さっきアメリーさんが部屋に来て何か言って出ていった気がしたけど、多分気のせいだと思う。うん。そんな事より本だしな。しょうがないね。
ということで読みまくっていく。ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ。
《熟練度が一定に達しました スキル【言語理解LV9】が【言語理解LV10】になりました》
《条件を満たしました スキル【言語理解LV10】が【翻訳LV1】に進化しました》
おおおっ!これはっ!
俺は新しいスキルを手に入れたのだった。