10話 とりあえず許可をもらい、便乗してくるワルなエマ姉さん
その後お父さんが夕食の時に、地下室で起きた事をエマ姉さんとお母さんに喋った。お酒が回っているようで饒舌だ。まるで自分の事のように、ダイナミックに誇張しながら話す。
「………ってことがあったんだ。俺が急いで行ったけどあとちょっとってところで間に合わくてなぁ〜。いやぁ〜焦ったよ〜。」
「あら、それは大変だったわねぇ。どうやって助かったのかしら?」
お母さんが聞き返す。お父さんは待っていましたと言わんばかりに話し始める。
「それが、なぁ。ルーラが急に結界張り出して、そんでもって魔法を全部跳ね返したんだよ。あれは完璧な防御だったなぁ〜。」
「「結界!?」」
お母さんとエマ姉さんの声がかぶる。お母さんが質問する。
「結界って……え?どうしてなのかしら?」
酔いがひどくなってきつつもお父さんは喋る。
「いや〜、地下室にあるだろ、神水晶。多分あれに触って、それで魔法使いになって、あとは反射的に結界を作った〜みたいな?」
そうか、あの水晶玉って神水晶て言うのか。どうりで神秘的な訳だ。神ってる水晶なんだね。
「でも、この歳で結界なんて張ろうとしたらMPの使いすぎで気絶すると思うの。魔法は7歳から使うようになるのが普通だし、それより前に使ったとしても気絶するか、最悪死ぬ可能性もある。最低5歳ぐらいまでになってないと、やっぱり結界は張れないわよ。」
なるほど、そうだったのか。普通の人は7歳ぐらいまで成長して、安全に魔法を発動できる歳になってから使い始めるのか。MP足りないしな。ん?でもなんで俺は創造魔法使えたんだ?うーん、考えても仕方ないか。まあいいや。
「そうだが…まあでも、とにかく結界を張ったんだ!俺は見た!ルーラが結界を張るのを見たんだ!だからぁ、それでいいと思うぅ……」
おっと、お父さんが本格的に酔いつぶれてきた。弱いな。男ならもっと紳士でいなきゃ。俺が言えたもんじゃないけどね。
「あぁ、そうだ!ルーラ、地下室に何回も入ろうとしてたんだな!よし、その頑張りを認めて、今日から入っていいぞぉ!」
おっ!よった勢いでなんか地下室解放された!
「やったぁ!」
声に出して喜んでみたけど、お父さんはますますご機嫌だ。
「ルーラはかわいいなぁ。よーし。じゃあ俺も奮発して、俺が選んだ本なら読んでもいい事にしよう!もちろん勝手に本棚から取ったらダメだよ〜?でも、ルーラたんなら守れますよねー?」
よっしゃぁ!これでお父さん公認で本が読めるぞ!娯楽だ!やった!
「ハドソンさん、しっかりしてください。酔いすぎですよ。」
アメリーさんがフォローに入る。お父さんは机に突っ伏して、ぶつぶつ喋りながら寝てしまいそうだ。
「ほら、寝るならベッドで寝てちょうだい。ほら立って。」
お母さんの誘導とアメリーさんの補助の元、お父さんは2階のベッドに連行された。
よし、今回はうまくいったな。これで異世界の本が読める。地下室に魔道書とかあるのかな?魔道書で勉強して最強魔法使いになるのかな?ラピ○タの、天の雷みたいなのをどっかんどっかん連発して無双しまくるのかな?よっしゃついに俺の時代到来か!?ファンタジチックでエリートな魔法使いになってやるぜ!胸が熱くなるぜ!胸熱だぜ!
なんてしてたら、いつのまにかエマ姉さんがこっちに来ていた。なんだろうと思っていると話しかけてくる。
「地下室行けるの?」
姉はいったことがないのだろうか。とりあえずうん、と頷く。するとエマ姉さんはにっこり笑って
「面白そうね。私も読みたいから一緒に行くわ。読み聞かせてあげるって事でいいでしょ?」
と言ってきた。言葉は優しいが、笑顔の裏に含みがあるのが見え見えだ。要するに、お前だけ読むなんてずるい。私にも読ませろってことだろう。
俺が承諾すると、ありがとうと言ってエマ姉さんはいなくなった。帰り際にフフフフ…と笑っていたのは俺の聞き間違いではないだろう。
普段は可愛いエマ姉さんだけど、意外とワルな一面もあった。怖い怖い。
さて、じゃあ俺もMPとSP消費して寝るか。
今回は識別と結界を張ってみながらおやすみ。目の前がチカチカしてる気がするけど誰もみてないし、ま、いいか。ぐんない。




