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クローラン・・・!




 おいらが、うんとチビの頃から、

 アニキは、とっても優しかった。


 アニキも、みんなと少し違うから、

 おいらの事、気にかけてくれてた。


 おいらの両の手と尻尾は、

 みんながみんな、カチンカチンだ。


 これじゃあ、なんにも(つか)めないし、

 うまく歩くことも、できやしない。


 木に登れないのは、

 おいらだけだった。


 おいらが、いじめられていると、

 アニキは、いつも助けてくれた。


 アニキは尻尾だけ、カチンカチン。

 でも、すごく背が高かった。


 みんなと比べても、

 顔が小さくて、足がなげぇ。


 アニキは気にしていたけど、

 おいらはカッコいいと思った。


 アニキはよく、

 ふらりと遠くの森まで行った。


 一度こっそり、ついて行ったら、

 あっという間にバレて、

 一緒に連れてってもらった。


 アニキが木の上から見ていたのは、

 おいら達とは少し違う、

 生き物の群れが住む所だった。


 おいら達に似てるけど、

 背が高くて、足がなげぇ。

 おいらは、ハッとした。


 そこに住んでるやつらは、

 アニキにソックリだったんだ。


 変なものを身にまとい、

 たくさんのそいつらは、

 大きな大きな住処に、

 いっぱい住んでいた。


 アニキはそいつらの事を、

 マチザル、と呼んでいた。



「……」

「……アニキ」



 アニキは、木の上の方の枝から。

 自分に似たそいつらを、

 いつも……うらやましそうに見ていた。  


 やがて、アニキは。

 おいら達のリーダーになった。

 当然だ。アニキは強い。

  

 おいらをいじめてたやつらも、

 今は、おいらに気をつかって、

 食べものを取ってきてくれる。


 おいらは情けなかった。

 

 だから、たまにみんなに隠れて、

 木登りの特訓をしたりした。

 ぜんぜん、できなかったけど。


 アニキはすごく大きな尻尾を持っていて、

 それを自在にあやつって、

 群れに迫る危ないヤツらを倒してった。


 みんながみんな、アニキを認めてる。

 だから、アニキが、

 マチザルを守ろう、と言いだした時。

 みんなは、うなずいた。


 おいら、だけじゃなく……、

 たぶん、みんなも。

 アニキが、マチザルに憧れてるって、

 わかっていたんだと思う。


 最近、チョキチョキするヤツらの、

 数が、とても増えてきてる。


 足がいっぱいあって、

 固くて、両手が、とがっているヤツだ。


 アレに、はさまれると、

 太い木の枝でも、ちょんぎられる。


 アニキは強いみんなと一緒になって、

 チョキチョキを順番に倒していった。


 でも、とても数が多い。

 みんなのケガが多くなって、

 血止めの草が無くなっていく。


 チョキチョキは、かなり強くて、

 しかも、血止めの草を食べてしまう。


 アニキ達は、必死に戦っている。

 でも……この頃、血止めの草が、

 あまり手に入らない。


 アニキは、マチザルが数匹、

 森に迷い込むと、必ず追い返した。


 群れのみんなも、アニキの真似をした。

 マチザルを追い返し、

 チョキチョキと戦う。


 おいらは……まだ、

 何も、できやしない。 



 今日も、とっても悲しくなって、

 隠れて木登りの練習をしていたら──……、

 キラキラひかる、マチザル二匹が、

 いつの間にか、そばに立っていた!


 おいらはビックリした!

 マチザルは、たまに森に入ってくると、

 ふしぎなちからを使って、

 他の生き物を倒して行ってしまうと、

 アニキが言っていたからだ!


 でも、なんでかしらないけど、

 まぶしいマチザルのふたりは、

 おいらに甘い実をくれて、

 なにやら、おいらの手を、

 じっと見ている……。


 ──と、思ったら!

 お、おいらの両手の、

 かたちが変わっている!?


 マチザルの一匹が、

 おいらを抱えて、木の方に連れてった。

 ま、まさか……!


 おいらの考えはただしく、

 このマチザルは、おいらの手のかたちを、

 変えるちからを持っているらしい!


 お、おどろいた……!

 アニキが言ったとおり、

 マチザルは、ふしぎなちからを持っている!


 おいらが土で、かたちをなぞると、

 マチザルたちは、だいたい、

 そのかたちで作ってくれた。

 さいしょは。


 気がつくと……、

 すごい爪みたいになっている!

 こ、これはすごい!

 これなら……おいらでも、

 チョキチョキに勝てるかもしれない!


 木も、すごく登りやすくなったし、

 走れるようにも、なるかもしれない!

 すごい、すごいぞ!


 でも、なにより、

 すごいと思ったのが!

 マチザルと、少し仲良くなったことだ!

 あの、アニキでも……マチザルと、

 遊んだことはないはずだ!


 マチザルの中にも……おいら達と、

 仲良くなれるやつらがいるっ!

 このことを、

 アニキに教えてあげなくちゃ!

 木も登れるように……、

 なる……、

 ……Zzz



 ぱっと起きたら、

 アニキが、おいらの新しい爪を見てた。

 いつも通りの、ぶっきらぼうな目だ。

 でも、アニキが、とっても優しいことを、

 おいらは知っている──!


 だから、とっても見せびらかした!

 どう!? どう……!?

 え……? 気をつけろって?

 う、うん……。



 その夜に、森が変になった。


 

 すぐに、みんな、目が覚める。

 恐ろしい気配がした。



 ゾゾゾゾゾ。

 ゾゾゾゾゾ。



 多い。

 そして、たぶん、

 大きいのも……いる。



 みんなが、きをつけろー! 、とか。

 あぶないぞー! 、とか、

 さわぎだす。


 たまに、チョギン、チョギン、と、

 音がした。


 おいらでも、わかる。

 ぜったいに、やばい。


 おしよせて、くる。




「ぁ、アニキぃ……」


「 ……──逃げろ……! 」




 アニキが信じられない事をいって、

 おいらは、あたまがまっしろになった。




「アニ──」


「 たのむ 」




 ──ズオオオ、と。



 月の光の下に。

 巨大なチョキチョキの、

 影が見えた。


 バカでかい。



 おいらは、しらないあいだに、

 にげていた。




 はっ、はっ、はっ、はっ、はっ。




 爪が、土をつかむ。


 この手なら、おいらでも。


 四本の足で、走る。


 おいらは、逃げる。


 でも、それだけじゃ、なかった。


 マチザルの住処の方向。


 知っているのは、おいら、だけだ。


 おいらは、わかっていた。


 あのままじゃ、みんなが危ない。


 マチザルは……ふしぎなちからを持っている。


 仲良くなれる、やつらもいるんだ……!



 はっ、はっ、はっ、はっ、はっ──!




   ゾゾゾ、ゾゾゾゾゾ……!



 追いかけられている。



   チョギン、チョギン……!



 あれは、大きい音だ。



 おいらは走れるようになったけど、


 まだ、特訓は、これからだし、


 とってもチビで、すんごく遅い。



 うしろから、いやな気配がする。



 はっ……はっ……! た、たす……。




 ──ズシャン……!




 爪が岩に、ひっかかり。


 おいらは、すっころんだ。




 ──ズダン……!


 ──オオオォ……!




 何かが、上にいる。





[ FSHIYYYYULUUU…… ]





 ──ヂョキン、ジョキン……!





 おいらの首なんて、


 ひとたまりも、ないだろう。





[ GLLLLOOBUAAAAA──……!!!!! ]





 おいらは、死を覚悟した。











 ────" ドォォォオオオンンン……!! "










 ……!?


 すんごい、音がして。





[ GOOBGYYUAAAA────!!!?? ]






 ぱらぱらと。


 破片が、とびちり。


 そして──、











「 ──もっぱつだ、クラウン 」


『────レディ(準備完了)。』











 チュ──" ドォォオオオオンンン!!! "



[ GOO、、BGAAAAaaa───…… ! ]






 おいらの上にいたヤツの、


 体が、消し飛んだ。






 ──、、ズズゥン…………!




 な、んだ……?

 たお、れた……?

 おいらは、助かったのか……?


 今のは、なにが──……。





「うへぇ……あによ、アレ」

「でっかい、カニさん?」




 おいらは……その方を向く。


 ……!!




「あっ……! あんた、あん時の!」

「クローザル??」







 おいらは──ふるえた。


 あの、、、マチザルだ……!


 おいらの手を変えてくれた、


 あの、まぶしい、マチザルだ!!




 おいらは、立ち上がり、


 チョキチョキを倒してくれた、


 ふたりのマチザルに、しがみつく!





「ぅえ!? ちょ、アンタ……!?」

「!? アンティ、この子、泣いてる……?」





 おいらは、たのむ!


 このふたりに、たのむんだ!


 このマチザルなら……おいらたちを!


 すくって、くれるかも、しれない・・・!





 ────おいらは、鳴いた!






「 ──ウッキキ!

  ウッキキっ、キッキキきぃ・・・!! 」



「「えっ……?」」

『────翻訳結果を:表示します。』





 ──たすけて!


 アニキがっ、やられちまう・・・!!







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『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[一言] カニ…バール… カーニバルかっ!
2020/04/20 17:20 いちふぁん
[一言] サルカニ合戦だった。 つまりこの戦いの後さるかにがっせんの絵本ができるんですね、わかります!(わかってない
[良い点] 猿蟹合戦 ただし、此度の合戦では猿は人の味方である。 [気になる点] そのうち、鉞担いだ金太郎とか出てきそう。 この章では流石に出てこないだろうけど… [一言] ところで、マチザルに近…
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