絵本ペア、街を見回る。
ちと休憩回を挟みたかった(●´ω`●).*・゜
教会の部屋で目覚めると、
画伯がデッサンしていた。
──シャッ、シャッ。
『ニョロニョロぉ〜〜』
「「……」」
許さんぞ。
髪が繋がったまま、
マイスナと回転蹴りを食らわす。
「「あくりょうたいさぁぁあああんんん!!!」」
『C7:鏡のようなシンクロ率にゃー!!!』
『C2:ボクは見てませんみゃ……』
『C6:おーっと!!! おえかきゴースト、ダウーン!! 無常にグリーンベレーが宙に舞うーっ! ここでリタイアかにゃー!?』
『C3:ま、まるみえみゃっ……!?//////』
手応えはあるが、やはり致命傷ではない。
ここは教会内なのだが、
ゴースト的には関係ないのだろうか。
くっ……!
ちょっとでも弱体化していればっ……!
大理石の壁にバウンド&壁に沈んだニョロ助は、
芝居がかった感じで、手をプルプルしてきた。
あ?
絵の具?
買うの忘れたわ。
色鉛筆でええやろ。
『────お二人とも……。
────全裸で回転蹴りは:非推奨です……。』
「「──はっ」」
これ以上、芸術に貢献したくはにゃい。
悪霊は、歯車の中に退散してもらう事にした。
「にょおぅ」
なん、だ、と……。
うさ丸もスケッチブックを持っている。
信じていたのに。
後ろから覗き込むと、絵じゃなかったし。
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ほ く うさ ま ろ
────────────────
おしい。
なに?
字を覚えたら、みんなとしゃべれる、って?
がんばって、やってみる?
……おまえはすごいヤツだよ、ほんとに。
「大したやっちゃ……」
「やっちゃ!」
「にょきっと♪」
うさ丸を二人でナデナデして、褒めたたえた。
世界中のウサギは、こやつを敬うがいい。
ちな、お嫁さん募集中。
今日は忘れず肌着に足を通し、
ヨロイを身につける。
「まだ明るいわ。夜になんなかったのは幸いかな? 午後の三時半くらいか……ちゅーとハンパな時間に起きちゃったわねぇ」
「チューとパンパン」
「うらー」
「ヴぁー」
次それ言ったら三日間クチきかないもん。
外の森に探索に出るつもりだったんだけど、
ずいぶんと、ビミョーな時間に起きてしまったもんだ……。
食堂娘ソウルが、チクチクしよる。
今から南東の森に入ると、
あっという間に閉門時間になっちゃうわね……。
いや! もちろんアイノスがあるから、
外泊に困らないっちゃ、こまんないんだけんども……。
うむむ、どしたもんかな。
「え? なに? ニョロニョロが落ち込んでる?」
『>>>ああ……今、目の前で、リングの隅で燃え尽きたみたいになってるよ……』
〘#……ぅ、うむ……。まるで生きがいの全てを奪われたかのようだな……〙
『 ニョロリン…… 』
いや、そんなトンチみたいなコト言われても……。
ゴーストの生きがいって、もうコレわかんないわね。
【 ぅおい、ギョロモチ! そこどかんけ。掃除の邪魔じゃい! 】
< なんや、半透明になっていきよんなぁ〜〜♪ >
{{ えらく物悲しそうな色ねぇ…… }}
『 ……がるるん? 』
『 ニョロ、リン……、…… 』
しょーがないわねーっ。
「わーったわよ!! 絵の具買いに行きゃいいんでしょ!! まったくまぅ!! いくよ、マイスナ!!」
「起きた時にアンティとふたりなのがいいのに……」
ホールエルの街の人には申し訳ない気がするけど、
今日はもう……休養日にする事にした。
目玉怪人とヨロイ6人分の削り出しは、
予想以上にメンタルに来てたみたい。
寝たので体力は回復したっぽいが、
何だかフワフワしている。
『────休養は大事です。
────どちらかと言うと:
────貴女方は多忙過ぎます。』
「そんな事ないと思うけど」
『────アンティ。
────私と初めて会って:
────まだ四ヶ月と数日ですよ。』
自分が……凄い多忙のように思えてきた。
なんか、1000年くらい経ってる気もする。
何故こんな濃厚な人生を送っているのよ……。
「私って、神様に泳がされてるんじゃ……」
『────お:泳がしてなどいません。』
あ、返答が来ちゃった。
そですね。神様でしたね。
「今日お休みにするなら、アンティと街デートする」
嫁が可愛いので、今日はお休みだ。
『>>>四ヶ月で魔王を倒して嫁さん手に入れる女性は中々いないよ。たまにはのんびりしたらいいじゃないか。だいたい人を助け過ぎなんだってば。ぼくが言えた義理じゃないけど』
「はは、全くだわ。エルフを助けまくって、私が助けた相手が言うセリフじゃないわねぇ……」
教会の中でモナリーさんに、
今日は少し街を回ってみる事を言ってみた。
モナリーさんは全くイヤな顔をせず、
「こちら側のわがままでお願いしているのです。休む時はごゆっくりなさってくださいまし」と言ってくれた。
なんか……すごいメイドさん力を感じた。
「薬草畑を作る場所に行ってみようと思うの」
「うん! いいね!」
『────ふふ。地図を照合してみます。』
『>>>なんだよー。今日はお仕事忘れるんじゃないのー?』
あのねぇ。
ドニオスあけて、わざわざコッチまで来てんのよ?
いちおー聖女ちゃんの意向もあんだから、
休養日にレストラン巡りってワケにゃいかないでしょ。
『────近辺の住民の発声情報を取得。
────薬草栽培箇所の予定地の方角を:
────視覚域にマーカー表示します。』
さっすが、クラウン。
人妻神は、ひと味ちがうわ。
『────怒りますよ。』
神の怒りに触れたくは無いので、
ボルボンボ鳥の屋台で買い食いしながら、
薬草の畑予定地に足を運ぶ。
森で会った天然食材たちは、
無事に孵化したんだろうか……。
「くゆくゆ」
「増やして食べる」
「にょわー」
「やめなさい! ウサギがいんのよ!」
目的の場所につくと、
砂の山があった。
でかい。
公園のソレじゃない。
ヒゲイドさんがズッポリ入るサイズだ。
子供たちが登って遊んでいる。
横で、冒険者さんが軽くモメめてるようだ。
「では、砂利はこんなにいらないということか……」
「当たり前だ! 困るぜ……こんな風にガキ共が集まって遊びだしたら、危ねぇかもしれねぇし……」
あっ、アフロさんじゃないのよ!
「アフロさん!」
「んっ! おお……! いや、私はロメオなのだが……」
聞く所によると、ヒマな冒険者さんたちは何か街の事を手伝おうと、薬草畑の土やら砂利やらを、めたんこ集めたらしい。
土はいいそうだが……砂利はこんなにもいらなかったとの事。鉢植えの底に敷くわけじゃない? そりゃそうだ。
アフロさんと話していたのは、農業職の人っぽい。
「ちったぁ、これは多すぎるわなァ! どけてくれなきゃ、ここは耕せねぇし……」
あやや。畑の予定地に、
砂利の山が食いこんでるみたいだ。
「あー。あの、私たちがやりましょうか?」
「……! いいのかぃ?」
「まぁ、はやいですし。マイスナ!」
「よし来た!」
7メルトルテくらいある砂利山に登ると、
けっこう高い。
おお……!
「なんか、ちょっとワクワクする!」
「ホントね!」
童心、失うべからず。
「ボウヤたち! 降りてきて、こちらに来るんだ! 凄いものが見れるぞ!」
「??」
「なんだー? あのアフロ?」
アフ……ロメオさんが、
砂利山で遊んでいた子供たちを、地面に呼び戻す。
いや、わかるわ。
こんなデッカイ砂山があったら、ちびっ子は超・遊ぶ。
ま、ざらざらした砂利は手を切るし、
風が吹いたら目に入るかもしんない。
ちぃと危ないので、盗むとしましょう。
マントが解け、
ドレスが舞う。
「わぁぁ──!!!」
「すっげぇ──!!!」
何が起こったかは、ご想像にお任せね──……?
──。
絵の具屋さんに行くのを、忘れる所だった……。
『>>>ま──た、あんな人助けしちゃって。しかも砂利なんか大量に貰っちゃって』
うっしゃいぞ、初代義賊め。
〘#……ふふふ。歩く義賊は救いに当たる、か。格納した砂利も、何かの役に立つかもしれぬぞ?〙
「そ、そうですかね……」
「そかなー??」
「にょっきにょき♪」
「くゆゆーっ♪」
えっ、なに?
何処かに出してくれたら、掘る?
土、掘るの好き? そうなの……。
ストレス溜まってるの? そうじゃない?
そういう問題じゃない?
なら、いいけど……。
『C7:なんでドンはフツーに意思疎通してるんにゃ……?』
『C2:人智を超えた存在みゃんな……』
絵の具屋さんは、
細い通りの先の商店街っぽい所にあった。
人生で初めて、油絵具ってのを買うかもしれない。
おえかきゴーストにもらったメモには、
どうやら絵の具の色の名前が書いてあるらしい。
えーっと……。
「じょんぶりあん、って色をください」
「あいよ」
肌色やんけ。
「……。じょんぶりあんの、2番色……? てのもください」
「あいよ」
これも、肌色やんけ。
けっこう高かった。
「いや……そりゃ茶色とか黒とか青とか緑色とかの肌のヒトもいるわよ……? でも、あの色は完全に、私らの肌に近い色やんけ……」
「次、朝にスケッチされたら目玉突いていい?」
許可する。
おえかきゴーストから、
アナライズカード由来の、お手紙が届いた。
──ヴぉん。
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有り難き幸せ
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あいつ見た目によらず、
こういう言葉遣いなんだよなぁ……。
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双極の女神のごとく
絵描いてしんぜましょうぞ!
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服を着た一般人として描かんかいゃ。
「あいたっ……!」
「「 ! 」」
声の方を見ると、小さな男の子が座っている。
どうやら、転んで擦りむいたようだ。
……。
ポーションが不足してる今、
けっこう不安になる光景だった。
「くゆくゆ!」
「うん」
ちっと物悲しくなっている間に、
マイスナが男の子に駆けつけた。
「……わっ!?」
「じっとしてね」
男の子のひざに、小さな輝く翼が顕現する。
「わ、ぁ……」
「治ったよ」
「あ、ありがとぅ……!」
ふふ、やれやれ。
どっちが絵本の主人公か、
わかったもんじゃないわ。
「あーいうケガって、ポーションや薬草がないと、水で洗うしか無いのよね……」
『────経験則:でしょうか。』
「そのとーりよ。15歳まで、私が何百回、学校連中と追いかけっこしたと思う?」
「にょきっとにょきっと」
良い顔のマイスナが帰ってくる。
「アンティ、やったった」
「見てた。ええこや」
う────ん……。
ポーション、かぁ……。
「先輩。いや、みんなに相談なんだけど……」
『>>>予想つくんだけど』
ま、そーいわずに。
「ローザ由来のポーション、この街で配っちゃ、まずいかなぁ?」
(*´ω`)歩く女神なの?(笑)










