うさ丸といってきます!
ヾ(*´∀`*)アンティ・キティラ、舞踏再開。
朝と昼の間くらい、かな?
ご飯時の、狭間と狭間。
お客さんの波が穏やかになって、
少しだけ、お店が落ち着ける時がくる。
"束の間の平和"ってヤツね。
「アンちゃん、忘れ物、なぁい?」
「だいじょぶ! 全部しまったよ」
「よぉしアンティ、ニンジン、もう1箱もっていきなっ!」
「にょきっとぉ──!!」
ぴょ────ん!
ぽてんっ。
「ぷあっ!」
……。
……えと、うさ丸?
あんた、いきなり顔はやめなさい……。
知ってた? 私、いちおう女の子なんだぜ……?
ほんとだぜっ? うそじゃないぜ?
「にょんやぁ〜〜」
よじよじ。
──ぐんぬ。
……あの、うさ丸?
今、私のほっぺたが、
当然のように足場にされたけども?
いくら、ぷにっぷにのにくきぅだからって、
しまいにゃわたし、泣いちゃうぞぅ……?
いいよね? 変じゃないよね? 私、娘っ子だもんね?
「……う、ううぅ〜〜……!」
「にょっ──!? にょ、にょん……」
『────うさ丸より:謝罪を申請。』
「ゆるさぬわぁ……」
「にょ、にょんむっ……! にょ、にょや!」
『────警告:クラウンギアに脅威が接近。』
──ぽふむ。
『>>>あ……これ、クラウンちゃんを隠してくれてるっぽいね……うまいこと乗ったら、うさ丸ごと回るかなぁ』
『────不可能判定。クラウンギアは回転を強制停止。外面温度が上昇します。』
あ、クラウン、埋もれたな……。
なんだなんだ。
クラウンを隠して、私の黄金義賊バレを防いでいるつもりか。
甘いぞぅ、うさ丸よ。
あんた、ヒトのほっぺに、クリティカルにくきうスタンプしといて、これしきで罪がゆるされると思うなよぅぅぅ。
「──ニンジンに吊られて、乙女の柔肌を足蹴にしよってぇ〜〜!! このまんまるがぁ───!! こ────しょこしょこしょこしょこしょ〜〜」
「にょぬぬにょぉおおおおぉぉ────!!?」
「ぉ、ぉおぅ……!」
うさ丸を、こっしょこしょすると、
今までにない鳴き声をあげよったわ……。
とても斬新だったので、許す事にする。
……こりゃあ、まだ先があるわねっ……!?
「うさ公も元気でな! またいつでも遊びにこいよ!」
「にぉぉおきっと!」
「ははは……」
一応ここ、街一番の食堂なんだけどなぁ……。
ラビットが気軽に遊びにきちゃいけない場所、第1位だかんね?
「いい、うさ丸? キッチンには絶対入っちゃダメよ? どえらいことなるからね?」
「ふっふふふふ〜〜」
「にょッ……」
ぎゅむむむむむむ……
……。
……あのう、母さん……?
頭が締め付けられるんで、その微笑み方、やめてくんない?
ほら、冗談だよね? ……ね?
料理人の目になってないよね!
安全のために、軽く脅してるだけだよねっ!!
ほ、本気じゃないよねッ!!? ねぇ!!?
キティラ食堂の外に出る。
てか、うさ丸あんた、
両手両足使って、ヒトの頭おもっくそホールドしないの!
ちょ、乗ってていいから、はなさんかぃ!
ぬっく、あっつ、のぼせるって、こ、こらぁ、
あっちょ、みみ! みみの先、鼻に当たってるって、
うぉ、震えんな、ちょ、や、ふぁ……。
「────くっっしゅい!!」
「──にょんやーい!」
ぴゅ─────────ん──……。
「あ、あ────……」
「とんだわねぇ〜〜」
「ラビットだからなぁ……」
乙女の頬を踏んづけたラビットは、
サラサラの金の髪にツルッとなって、
店の看板の上まで、ぴゅっ飛んでいきましたとさ。
「……お──い! だいじょ──ぶ!?」
「にょきっとなぁ──!」
あ、ちょ、看板の真ん中で手ぇふっちゃダメだって。
お客さん来ちゃうでしょ。
あ、来てる。指さされてるわ、うさ丸看板。
こりゃ。父さんらに挨拶するまで、ちょと待たんかい。
「じゃ、気をつけてな! 最愛の娘よ!」
「また、うさちゃんといらっしゃいな〜〜」
「じゃあなぁ、嬢ちゃん! またこいよぉ!」
「そのラビットも、元気でなぁ!」
「よっ! 黄金娘、世界一!」
「しっかりな、看板娘!」
「ばいば〜〜い!」
「はーい、いってくるねー!」
「にょやにょやー」
小さな女の子に手を振られた。
頭が、私の意思に反して小さく左右にゆれる。
ヒュオヒュオと、何かが空気を切る音。
うさ丸が、耳を左右に振っているらしい。
まじか……耳、動くのか……。
簡単にうさぎ、卒業しちゃダメよ?
てかあんたね……立派な手があるんだから、手をふりなさいよぅ。
バッグ歯車があるので、手ぶらだ。
頭の上に、クラウンを隠してくれている、うさ丸。
先輩とも、今では声(?)で会話できるし。
箱庭フォートレスには、みんないるし!
……うん、旅のお供にゃ、事欠かないかな?
はたから見れば、一人ぼっちに見えるかもだけど……。
『>>>ガッコで友だち、いっぱいできたじゃない』
『────同意。アンティ:あなたが思うほど、あの学生たちは、あなたを蔑ろにしてはいないと予測します。』
「え、や、そうかな……?」
「にょきっと!」
とんとんと歩き、早朝とは違う、
お昼になる前の、柔らかい日光を、進む。
まっすぐな髪が、キラキラとなびく。
しばらないのも、たまには、いい。
「まぁ……正直に言うと……みんなでなんかやるのは、楽しかった!」
『────感無量です。』
『>>>! はは! クラウンちゃん、意味わかって言ってる!?』
『────むっ。どういう意味でしょうか。』
「てか、うさ丸がでっかいまま来たせいで、私、かなぁり学校の有名人になっちゃったんだけど……」
「にょ、にょんむー」
「にょんむーじゃねぇゾこんにゃろ──! 正体隠してるっつってんでしょや──! こ──しょこしょこしょ──!」
「にょっっほぉおおおおお────!!!」
『────アンティ。お静かに……。』
『>>>あのさ……さっきから、周りにめちゃくちゃ見られてるっぽいからね……』
「えっ……」
パッとすぐ側を見ると、私たちを指さすちっちゃい子どもと、
笑顔で悩むお母さんが見えた。
なん……? なぜ、うさ丸の方を見ているんですか……?
んん? ま、まさか、あの指の形……?
あれは、ぬいぐるみを作ろうとしているんじゃ……?
はは、まさかぁ……。
万が一って大事。
いそいそと、カーディフの街門へ向かった。










