盃、祝の先触れ也也 さーしーえー
さかづき、しゅくのさきぶれなりや
種貸の家は、代々、
男子に、隠れ名を付けた。
土地創りの勇者の霊を敬う儀式は、
幽世の ものとされ、
生と死を、別けるため、
彼らは、二つの名を持った。
次期当主たる者とされた、
種貸 火縄は、火名環。
火の名を端無く環らせるという御御銘である。
だが、血は母に寄り、
娘が七つを数え、
今や、男子の権威は、
世にて、均一となる。
当然郎と灰姫は、
自らの代で、隠れ名の業が、
消えても、良いと思っていた。
最後に産まれた、末の子、"火舐"。
終の隠れ名、
"火名愛"の名を持つ彼が、
最も神事に優れた能力を持つのは、
ある意味、皮肉であった。
「 ──── 」
"光明先見"の使い手、
ヒナメの若は、
天守、近くの高部屋で、
座禅、精神統一を成す。
彼は、□□□□の、未来を観た。
( おろかで、あった……。 )
幼き白髪の足は、
正しく、組まれている──。
( おさなさ は、言いわけ には、
ならん ────…… )
ヒナメは、思い出す。
先の未来を見た、黄金と、白銀の、姿を。
それは、おそらく。
世界で、イチバン。
────機嫌を損ねては、
ならぬ、モノ だった。
ヒナメは、恐怖した。
燃え盛る炎を、舌で、舐めたかのように。
恐怖した彼の、やった事と いえば、
身体を丸め、
祈った、のみである──。
( おろかな──……。
だが、どうだ。
あの、おかた、がた、は──…… )
震え、礼を失した己を、
今、思えば。
あの、煌びやかな二柱は、
まるで、母のように、
姉のように、
諭してくれていたようにも、
思えて、ならない。
( 最も、気を使わねば、ならぬ、
御方方に……、
逆に、気遣われるなど、
ごんご、どうだん である…… )
小さな男子とて、
それは、苦い失敗であった。
ヒナメは、座して礼を示したまま、
ひとり、そっと、目を、閉じる──。
"光明先見"とは、
如何なる、所業なのか──。
( ・・・!
やはり……チカラが、
" ひらいて "、おる ──……。 )
ヒナメが、目を閉じると。
半透明の人影が、
目の前を、歩いている。
幻のような、人影は、
一や、二、では無い。
白い、影のような、
たくさんの、切り絵の、影のような。
それは──すべて、
己の姿……。
──ヒナメの、姿を していた。
( たくさんの、未来……。
たくさんの、影身……。
たくさんの、自分……。 )
あの、黄金白銀と相見えた後、
ヒナメの恐怖は、そのチカラを、
一度、極限までに、
ひらいてしまったのである。
目を、閉じるだけで。
くらやみの、世界に、
たくさんの、" もしも " が、見えた。
( く・・・!
なんと、不甲斐ない……!
かつて、誰かの……"死"を、
先見た……だけで、
すっかり、甘えて、いたからっ…… )
普段なら、
ひらいて、しまった チカラは、
布団の中に潜り込み、
数日を要して、
うやむやに、眠りに、つけさせる。
──だが。
ヒナメは、それに、
初めて──あらがって、みようと思った。
立ち向かって、みようと、思ったのだ。
小さな、末っ子の、
これは、、、覚悟の、座禅である。
たくさんの、" if... "の影を、
彼は、見る。
それは、冷たく、
汗すら、引き、
彼は、乾いていた。
「 く・・・ 」
単純、である。
目を閉じれば、
自分と同じ姿をした、白い影が、
何十人と、歩いているのである。
それは、悪夢と、
あまり、大差無いのだ。
そっ・・・と、目を開くと、
窓から射す日光は温かく、
それが、世に取り残されたような、
温度差となって、
ヒナメを、苛む────。
「 ・・・ねよう。
今日は……今日の夜は、
泣かずに……寝よう。
受け止めよう。
私にしか、できぬ、
事なの、だから……── 」
それは、さびしい、ひとり事で。
そして、覚悟なのだ。
彼が、従者の家族の死期を見た時。
当然郎は、すぐに、その者に、
暇を出した。
従者は、感謝したという。
死に目に、駆けつける事が、
できました、と────。
( かなしさに、
耐えられる、ように、
ならねば、ならぬ )
陽射しの熱は、
幼き御身に、
届いた、だろうか────。
……──。
トコトコ、と、音が、聞こえた。
「 む・・・? 」
「 キュッ、キュ 」
小さな毛玉ねずみが、
若の覚悟に、乱入した。
「 きゅっ、きゅぅ 」
「・・・・・」
ヒナメは、呆気に取られたが、
乱入者は、トコトコと歩き、
やがて、幼き若の、
お膝元へと、
駆けつける。
「おぬし……」
「きゅっ」
よくわからんモノが、
たしかに、届いた。
女中に聞く所に寄ると、
どうも、視察に出た父・当然郎は、
試しに一匹、水を浄化する魔物を、
城に、持ち帰ったと聞く。
数日前の、話である。
「・・・・・」
「きゅっきゅ、がぶがぶがぶ」
見ると、蒸かした大根を、
食っている。
何処かで、女中が、
やらかしたに、違いない。
白い、清らかなネズミは、
無警戒に、座禅を組む若の膝にて、
大根に、かぶりついている。
それは、数日前の、
まんまるい兎を思い起こさせ、
あれだけ見た太陽の陽よりも、
純粋に、温もりを、
若に、届けた。
「 ふ、ふ 」
「 もぐもぐもひょ 」
ヒナメは、モフモルの子を、
なでる。
「 おまえは、あたたかいな 」
「 きゅっきゅ 」
白いケモノは、
良い寝床を、見つけたようである。
「おまえは……どう思う?
家族が死ぬと教えた者に、
礼を言われる……幼子を」
「きゅぅう〜〜???」
白きケモノは、首を ひねっている。
「から、から♪
そなたには、ダイコンのほうが、
大事で、あったか」
「きゅっきゅ! もぐもぐもぐ」
ヒナメは、今日も悪夢を見ることは、
当たり前だとして、
あきらめにも似た姿勢だったが、
なかなか、どうして、
このモノの毛並みは、
心地よい。
「私のヒザで、ダイコンを食ったのだ。
今日は……いっしょに、寝てもらうぞ!」
「きゅぅう〜〜???」
何人かの、女中は反対したが、
ヒナメは、風呂で、
丁寧にモフモルを洗ってやり、
とうとう、寝床にまで、連れ込むに至る。
「え……ヒナメ様、お灯りは……」
「よいのじゃ。すべて、消せ」
「 きゅっ 」
チカラが、開いた夜は、
ヒナメは、部屋を明るくして寝た。
当然である。
目を閉じれば。
その夜は、まるで、幽世なのである。
だが、今日は、ちがった。
まず、身を、投げれば、良い。
胸元の、聖なる獣の毛並みは、
とても──あたたかい、ものだった。
「おもう、のじゃ……。
立ち向かわなければ、ならぬ。
兄上の、ように」
「ひ、ヒナメさまっ……!
ご……。ごりっぱ、です……」
「本当に、大丈夫で……、
ござりまするかっ……!」
「──良い。
それに、見よ。
今宵は、街を浄化した、
無敵の聖獣が、ついておるぞ」
「 きゅぅ♪ 」
健気な女中たちは、
涙を浮かべ、微笑み、
「「 ……おやすみ、なさりませ……♪ 」」
と、退室する。
チカラが、ひらいた、夜が来た。
「 ・・・ 」
「 きゅ 」
頭が、キンキンと、ひびく。
まちがい、ない。
完全に、発動、している。
今日、夢に見たことは、
かならず、おこる。
かならず、だ ────。
「 ・・・・・ 」
「 きゅっ? 」
もし。
チカラひらきの夜が来る度、
だれかの、死など、見ていたら、
自分は……幸せには、なれぬな、と、
ヒナメは、思う。
怖さは、もちろん、ある。
当然、である。
誰かの死に際を、
知りたくなど、ない。
布団を持つ手を、
震えが、襲う。
当然、なのだ。
「……きゅっきゅ!」
「・・・んっ!?」
──ぴょん! と。
モフモルが、胸に飛び乗り、
ヒナメの両手に、覆い、被さる。
あたたかい。
「……寒いと、思うたか?」
「きゅい?」
それは、やさしさであった。
ケモノでも、想う心がある。
ヒナメは、笑っていた。
「……からから♪ えぃ、どけぃ!
そなた、子と言えど、
スイカくらいは、あろう!
さすがに、重ぅて、
眠れぬわ……!」
「きゅぅう〜〜」
再び、ヒナメは、
モフモルを、布団に引き込む。
「ははは……有り難う」
「きゅぅー」
ヒナメは、眠ることにした。
目を、閉じろ。
そう、言い聞かせる。
夜は、始まったばかりだ。
( たぶん……長い間、
付き合っていかねば、ならぬ。
その度に……泣き言など、
言うて、いられるか。
まずは、慣れねば。
それに……いつも、
だれかの、死を……
見るだけでは、ない )
たくさんの、自分のカゲが。
白い影が。
今日も、未来を、
ひろって、くるのであろう。
かならず、おきる。
これからの、夢は、
かならず────。
( ……ちぇ )
それは、弱音では、無いが。
「 ……決まってるコトなんて、
別に、なくったって、
いいのになっ ──…… 」
「 きゅう? 」
そう、愚痴を言って。
ヒナメは、夢を見る。
絶対に、起こるはずの、
確定した、"未来"を────。
キィンん────。
────。
……。
──loading.....●▼≦*.+゜
『 ……メく、…… 』
" …… "
『 ……ナ、メくーんっ 』
" ……む? "
『 ヒナメくんっ、はやく、起きるです 』
" ・・・──ッ……ぬぉわっ!? "
──がばぁ!! と、起きると、
もう、朝に、なっている。
" ぁ……あれっ……!? "
ありっ……!?!?
な、なにも、見ていない、
の だ が っ ・・・!?
『 ずいぶん、うなされてたです。
大丈夫、です? 』
" あ? あぁ、え……? "
よく、聞くと、
知っている、女中の声では、無い。
混乱するが、
自分のヒザの上には、
白い、モフモルが、
まだ、眠っている。
『 きゅぅぅ〜〜zzZ 』
" あれっ・・・? "
コヤツ……なんか、
小さく、なってないか?
ヒナメは、思う。
だって、こいつを、なでる、
自分の、手、が……。
" ・・・!?
こっ、これは、
私の・・・手、なのか!? "
──ヒナメ、びっくり。
視界に写る手は、
どうみても、青年の手である……!
兄様の……ヒナワ兄くらいの、
大きさは、ぜったい、あるぞ!?
両手を見ると、
末っ子のガキンチョの手では無く、
やはり、、、もうすぐ成人するであろう、
オトナの、手だ。
ヒナメの、冷や汗は、とまらない……!
" いったい……どうなって、
おるのだ……!? "
『 さっきから、何、
言ってるです……?
変な夢、まだ見てるですか?? 』
また、知らない、
女の声が、聞こえた。
" さ、さっきから、って、
そなた、こそ!
いったい──……!? "
── ド ス ン っ !
と、音がして。
誰かが、寝起きの自分に、
いきなし、跨った!
ので、ヒナメは、おどろいた!
" どわっ……!? "
『 ──……きゅぅわっ!? 』
衝撃で、モフモルも、起きる!
知らない女が、
目の前に、いる!
" な、な……!?
だっ、誰じゃ……!?
お、おなごが、
おとこを、またぐ、など、
は、はしたな──……、
っ!? ど、どぎゃ──!?!?!? "
『 さては、ヒナメくん、
まだ、夢の中なのです?? 』
ヒナメは、三度、おどろいた。
女は、なかなかの、美麗である。
問題は・・・その、格好である。
下から。
スリッパ。
エプロン。
頭の上の、お面。
──以上である。
" そっ、そなたぁああぁぁ〜〜!?///////// "
『 やっと、起きたですかぁ? 』
── 裸、エプロン であった。
裸エプロンの、
スリッパを脱ぎ捨てた女が、、、
自分に、跨っている・・・!!
" な、な、な……!?//////
そ、そなた……!?///
なっ、なんという、
格好、でぇえええ〜〜っ……!?/// "
『 こらぁー! カミン も、
いいかげんっ、
目が、覚めたですかっ? 』
『 きゅっ、きゅう……? 』
エプロン女が、
モフモルのことを、
" カミン "と、呼んでいる!
" か……" カミン "……? "
『 あれっ、ヒナメくんが、
怒らないです! いつもなら、
"ちゃんと火眠と呼ぶのだ"、
って、怒るのにー! 』
" ぇ、ひ、ヒネム……???////// "
ヒナメは、さっぱり、わからない。
なにより、目のやり場に、困る!
だって……裸エプロンに、
またがり女、だぞ……!?
完全に、目に、毒オンナである。
" ひ、ひええ……っ!?////// "
なんとか、エプロンから、
目を逸らそうとする──。
半裸のスリッパ女は、
右手に、料理に使う、お玉を。
左手に、変なカタチの、杖を、装備していた。
そして、頭の上に、
はね上げられた、お面。
その、カタチは ── ……。
──── ながい、まっかな、おはな の。
『 こらぁー、カミーン!
あんまり、お寝坊さんだと、
マガちゃんが、
食べちゃうですよー!! 』
『 マガぁぁあああああああ〜〜っ♡♡♡ 』
" ──っ……!? "
城の、寝室の窓の外から、、、
とんでもない バケモンが、
こちらを、のぞいている・・・!!!
『 ──きゅっ!?
きゅうわああああああ〜〜!!?? 』
" あっ……! "
モフモルは、
シャコシャコシャコ──!! と、
窓とは逆方向に、
一目散に、逃げ出した!!
『 冗談です。逃げなくていいのに 』
" そ、そなた、は……!? "
ふれる、身体が、アツい。
『 はやく、起きるです、ヒナメくんっ♪ 』
" え・・・////// "
『 お 嫁 さ ん 特製……///
トドメ♡とん汁が、冷めるですよ? 』
────。
────がばぁ!!!
「 ── ・・・!? 」
「 ──きゃぅおおおおわああああ!?!? 」
ぴゅーん。
モフモル、とんでった。
「 ・・・・・!? 」
朝ぁ。
チュンチュン……♪
「 ・・・・・、・・・・・ 」
晴れ。
思い出す。
みちゃった。
" ヒ ナ メ く ん っ …… ♡/// "
YOME,NO,HADAKA,APRON ────……♡
「 ・・・どぇえ"ッ──……っ!?///////// 」
チュンチュン♪
ランダムで見んだから。
わるいことばっかな、ワケ、ねぇだろ。
みらいの朝チュンの夢を見る
ヒナメくんの話です。((´∀`*))










