Lv93 湖の主釣り
更新遅れ無念です。
書き溜めていた分もあり、若干長めになっております。
オレは今檻の中にいる。
捕まらないようにできたし、入っているこの檻も一瞬で破壊できるがあえてそうはしなかった。
湖に近寄るにはこの部族間問題は避けて通れないと思ったからだ。
檻の目の前に居るのはニャンコ娘のタマ。
白い毛並みが特徴的な15〜16歳くらいの女の娘だ。人間寄りの姿をした猫人で、少し折れ曲がった右猫耳とふわふわな毛で覆われた尻尾がなんとも愛らしい。
「お前の見張りだにゃん!」
と言われたときには萌え死ぬかと思った。
「なぁ、タマ。ニャンダブル湖のことを少し教えてくれないか?」
「…」
「なぁってば!」
「……」
完全にだんまりを決め込んでソッポを向いている。
よし、そっちがその気なら…
オレはゴソゴソと糸を出す。
そう、アラクネさんから得た糸だ。
紐状に結い、先を毛玉にする。
後は折の隙間から紐を放り投げて、、、
秘技『猫じゃらし』!!
ぴこぴこ
(…ピクん)
猫耳が動いた。
ぴこぴこぴこぴこ
(ピク、ピクピク…)
猫耳だけこっち向いた。器用だな。
ぴこここここここ、、、
(ふる、、、ふるふるふるふる…)
「う、、、うにゃああぁぁぁーーー!!」
フィーーーーッシュ!!!!
「うにゃにゃ、にゃんにゃ………はっ!?」
糸の先を猫パンチしていたが、どうやら気づいたようだ。
「に、、、にゃんと恐ろしい技を!?」
「なぁってば、この村のこととか湖のこととかおしえてくれよー」
近くに釣り寄せたタマの喉を檻の中から手を出し撫でる。
「ゴロゴロゴロゴロ……ふ、ふあぁ、、、」
「よーしよしよし」
「ふゃ、ふにゃあぁぁぁ……」
ゴロゴロが止まらないぜ。
「ゴロゴロ……やっ、やめるにゃ!なにするかこの変態!?」
「変態とは失礼な、オレはただの猫好きだ」
「お、、、」
「お?」
「お、教えてやるからも少し撫でるにゃ!」
あらなにこの猫、萌え焼けそう。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ………
しばらく撫でていると、寝転んですっかり丸くなってしまった。
「ふあぁぁ、、、気持ちいいにゃ。。。寝そう」
「おいおーい!寝ないで答えてくれよ、なんでこの湖を取り合って争いが起きたんだ??」
「ふみゃあ、争いが起きたのはつい最近だにゃあ。というより、半年前までは猫族も犬族も一緒に暮らしていたにゃ」
「そうなのか?どうしてまた、、、」
「ニャンダフル湖にはとても大きな魚が沢山住んでいるにゃ。犬も猫も協力し合って魚釣りをして暮らしていたんだけど、いつの間にやらどっちが取った魚が大きいか?なんて小さいイザコザが起こって、それがドンドン大きくなって争いに発展したんだにゃ…」
「ふぅん、そらまたくだらない理由だな」
「にゃろう?アタシも大きな声では言えないけど、そう思うにゃ。でも、どちらも一族のリーダーの言い合いだから引くに引けなくなったにゃ」
「なるほどね。それなら、もっと大きな魚を捕まえたら争いは決着するんじゃないか?」
「そうにゃけど。。。今までで一番大きな魚が犬も猫も牛サイズの魚を釣り上げてるにゃ。あの大きさを超えるとにゃると、伝説の主しかいないにゃ」
「伝説の主?そんな巨大な魚がいるのか??」
「誰もハッキリと見たことはないにゃ。けど、絶えず噂は飛び交って至るにゃ。なんでも1000年生きてる魚だとか。。。」
TVの特番に出てきそうなネタだなそりゃ。
どれどれ。。。。。
オレは目を閉じ意識を集中して湖の中を探してみる。
『探索』の力をレーダーの様に飛ばすイメージだ。
(、、、おっ。生きものの影がたくさん見えるな。けっこうでかいサイズもいる。。。おっ!?アレが牛サイズか!なかなかデカイ魚だな……あ?)
なんだ?何か巨大な影が見えた。
(な、、、なんだ今のは!?)
湖底の岩場にスッと消えていった影が一つ。
影と言うにはあまりにも大きい、二階建てバスの様なサイズの物がいた。
「、、、なぁ、もしオレが主を釣ったら争いは収まると思うか??」
「だろうにゃ。もしそんな伝説級の魚を釣ったとしたら、両方の一族も争ってたのがバカらしくにゃると思うにゃ」
くそっ
いちいち語尾に「にゃ」をつけやがって、
愛でたくなる。
「そうか、、、なら、この無駄な争いはオレが収めてやる」
「にゃにをたわけたことを。そうですかと言ってお前をそこから出すわけにはいかないにゃ!」
「いいよ、自分で出るし」
「にゃに?」
バキッ
檻の格子を一本を掴んで折った。
(あっ。。。。。)
が、転移で檻の外に出たら良かったと、なぜこんなカッコつけることをしたのか無性に恥ずかしくなってしまった。
「にゃ、、、にゃんだお前!?タダのトカゲじゃにゃいのか!?」
「いいや、タダのトカゲだよ。ただ、ちょっとワケアリで急いでてね」
折れた格子の隙間から足を踏み出す。
「さて、と。それじゃオレは行くけど、タマはオレを制止したけど言うこと聞かずに逃げて行ったと皆に言ったらいいよ」
「うにゃ?」
タマは驚いたあと不思議そうな顔をした。
「だって、見張りなのに見逃したって知れたらタマが怒られちゃうだろ?」
「うにゃあ、、、アタシのこと。。。考えてくれるんだにゃ」
「そだな。タマ可愛いもん。ずっと撫でてたくなるし」
「ふにゃっ!?」
タマの顔が真っ赤になり、折れていた猫耳もピンと立ってしまった。
「あ、最後になるかもしれないから、お願いがあるんだけど。。。耳、触ってもいいかな??」
「ふにゃあ!?み、、、耳を。。。にゃ?」
「う、うん。ダメ、、、かな??」
「ふにゃぁ。。。少し、、、だけにゃら…」
「やった!」
オレは喜び少し跳ねてしまった。
ゆっくりと、タマの耳に伸ばしてみる。
いつの間にか右猫耳は元に戻って折れていた。
サワ…
「にゃっ!」
タマが目を閉じピクんと揺れる。
サワサワ…
「うにゃ、、、うにゃにゃ!」
サワサワサワサワ……
「ふっ、、、ふにゃあぁぁぁ!それ以上は、アタシ、、、ア、アタシ、、、もう。。。」
タマの顔が完全に紅潮して目が潤み始めた。
(む、、、むぅ。触り心地が良くてこのまましばらく触っていたいが、これ以上は何かが危険だとオレの第六感が告げている。残念だが…)
スッと手を離し頭をコジコジ撫でる。
「ありがとうタマ。あー、触り心地良かった」
「ふぁ、、、ふみゃあ。。。も、もうちょっと触っても……」
「ん?いいのか??でも、もう行かなきゃいけないんだ」
そう、お天道様が真上に上がっているのだった。少しペースを上げていかねば結婚式に間に合わないのだ。
「。。。ちっ」
ん?
この猫舌打ちしたのか?
露骨に残念そうな顔してるし。。。
じゃあ行ってくる、と手を振り言ってからオレは湖に飛び込んだ。
服を脱ごうか迷ったが、タマが居るので正しくニャンニャンな展開になるのを恐れたというのもあるが、正直脱ぐのが面倒だっただけだ。
透明度がハンパない湖を、ドンドンそこへと向けて潜っていった。
主が居た場所まで、、、、、
ーーーーーーーーーーーーーーー
一方その頃。。。
ワンコンとニャンコンの中間地点では……
「来たにゃ!臆病な犬どもよ!!」
「ぬかすんだワン!釣りもろくにできない猫どもが!」
それぞれのリーダー達が正面切って睨み合っていた。
「今日こそ決着をつけるワン!どちらが大きい魚を釣るか勝負だワン!!」
「望むところニャン!負けた方は、潔くこの湖からはなれていくのにゃ!!」
バチバチと睨み合い歯を剥き出す両陣営。
勝った方は湖を手に入れる。
負けた方は湖を去る。
傍から見たらくだらない小競り合いだが、お互いのリーダーは引くに引けなくなっていたのだ。
勝負の鐘が鳴る。
ーーーーーーーーーーーーーーー
再びオレの出番だ。
しばらく潜っているが、息が苦しくならない。
竜人化の影響か、はたまた身体能力の向上によるものかは分からないが、バランを助けようと池に飛び込んだときのことを思い出し、改めて人間離れしてるんだなぁと感慨深くなった。
巨大な主の影を探り泳いでいると、湖からの底の岩に巨大な門が現れた。
あの主でもくぐり抜けることのできそうな大きさだ。
(ぶくぶく、、、コレはもしかしてあの主の住処か??)
入れる箇所がないか探そうと門に近寄った瞬間。
ドカンッ!!!
大きな岩が頭上から降ってきた。
(ぐっ、、、!?な、なんだ一体?なぜ岩が急に。。。。。!!?)
岩を体の正面から受け止める形になり、両手両足で抑えようとした。
手に伝わる感覚が、岩ではなかった。
(ぶくぶく、、、これはっ!?岩じゃない!)
鱗の感触がする。
魚だ。ひと目で視界に入り切らないほどの巨大な魚がオレに襲い掛かってきている。
横に弾き飛ばされ一瞬方向感覚を失う。
(いってぇな。。。しかし、あのサイズはクジラ以上だな)
オレから離れた主は方向転換し旋回してくる。
(、、、食う気だな)
家一軒丸ごと飲み込めそうな巨大な口を開け、猛スピードで向かってくる。
口の中には鋭い歯がびっしりと生えていた。
(食われてたまるか!?)
横に避けようとするが、水中は相手に有利な場だった。オレを食おうと大口を開け飲み込もうとした瞬間に上顎を手で、下顎を足で支える体勢になった。
(ち、、、くしょう。。。おも、、、て…!!)
かなりの力で口を閉じてくる。
両者ともその体勢のまま、主は上下左右縦横無尽に泳ぎ回る。
(調子に、、、乗りやがって。。。!)
一気に口を開け、顎から抜け出そうと力をためた瞬間
ドォンッ!
湖底に叩きつけられた。
メリメリメリメリ…
顎で挟まれ、湖底に押し付けられ体がきしむ…
(こ、、の!死んでも恨むなよ!!)
ゴゥッッッ
バーテンダーのような衣服から竜装備に姿を変える。黒い炎が水にも消えず燃え盛った。
!!!!!???
体表を覆う油分と鱗のおかげで黒炎に燃えはしなかったが主が怯む。
体に自由が戻り、すかさず主の体を拘束する糸を出しまくる。
あっという間に主の体に糸を巻きつけた。
繋がっている糸を握りしめ、渾身の力を振り絞り水面向けて上昇する。
(うおぉぉぉっっっ!!!!!)
ザパァーーーンッ!!!
………ヒゥン、、、ドドォン!!!
「よっしゃあ!フィッシュオン!!」
主の一本釣りだった。
空に浮かんだまま釣り上げた主の大きさをマジマジと眺める。
「ふえぇ、デカすぎだろこいつ。。。」
ん?
釣り上げた主のそばに二匹、犬と猫がいる。
驚きすぎて腰抜かしてるようだが、、、
地上に降り立ち様子を見てみると、、、
ガクブルし過ぎてた。。。。。
ーーーーーーーーーーーー
「、、、わかったらもうくだらないケンカなんかするなよ?」
「「はっ、はいぃ!!」」
どうやら主を釣り上げたオレには叶わないと思ったらしい。ひたすらひれ伏していた犬と猫。
コレを期に再び仲良く暮らすようについでに促しておいた。
なんだか神のごとく崇めてくるから、多少は効くだろう。
「ふみゃぁぁ、、、凄すぎだにゃ」
「お、タマじゃないか」
「お前、、、一体何者にゃ??」
「言ったろ?タダのトカゲだよ」
「、、、そ、そんなわけにゃい!アタシを、、、よ、よ、嫁にするにゃ!!!」
「なんでそーなる!?」
「だって、、、こんなに強いし、あ、あんなに優しく撫でられた事なんて、初めて、、、だったし。。。。。ポッ」
オォーッ!と周りの犬猫から歓声があがった。
「い、いや、、、ゴメンなタマ。オレ実は結婚してて……」
「二番目でかまわないにゃ!」
「いや、あの、、、奥さん七人いるんだ…」
「ペットでかまわないにゃ!」
危ない!それ危ない言葉にゃん!
「いや、、、そうじゃなくて…」
「子供もたくさん産めるにゃん!それに、、、」
「子だくさんか、、、って、なんなんだ!?」
「アタシの猫舌……味わってみたくないにゃ?」
タマが舌をペロリと出し、妖しく微笑む。
ゴクリ、、、、、
「じゃなくて!、、、、、ん?」
主の口からキラリと光る物が転がっているのを発見し、チャンスと思い駆け寄ってみる。
「これは、、、魔石か!?」
アラクネさんからも魔石を得ることができたのを思い出し、主は魔物だったと気付く。
年寄りの犬の爺さんと猫の婆さんが伝承を教えてくれた。伝えによると、この主はエンシェントサーペントという魔物らしい。
「よし!とにかく、主は釣り上げることができたし、湖の探索を再開するぞ!」
どうやらオレに意見する者はいなくなったらしい。これで、心置きなく湖に潜れる。
盛の付いた声で鳴きながら擦り寄ってくるタマを上手くあしらいながらオレはもう一度湖にもぐった。
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門は固く閉ざされていたが、竜装備化してから思い切りよく力を込めるとギギギと静かに開いていった。
僅かに開いた瞬間にオレは扉の中に吸い込まれる。
「、、、、、いてて。。。あっ、空気がある」
門の中には空気があり呼吸ができた。
すぐ目の前には祭壇がある。
昨日の宮殿地下にあったのと同じような祭壇だ。
ゆっくりと登ってみる。
、、、
「あ、、、、、あった」
祭壇の頂上部には、白い光を放つ透き通る水晶のような石が浮かんでいた。
そっと手のひらに乗せてみる。
『妾を手に入れたのは、、、なんじゃ、そなたか』
「その声、お前『乙女』なのか?」
『如何にも。妾は【強欲の乙女】であるぞ。そなたのことは憤怒のから聞いておる。と、いうより”繋がっているから知っておる”と言った方がよいかの』
そういえば、、、
『根っこは一つじゃ』とか言ってたっけ。
同じような精神共同体なのかな?
『さて、妾も石匠の元へいざなうが良い。憤怒ののような輝きを妾にも。。。』
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こうして、
なんとか二つ目の石もゲットできたのであった。
指輪探し︰2日目昼終了




