Lv61 父を超える
オレたちは兵士の修練場に集まった。
以前オレとセリーヌが模擬戦したときと同じように野次馬も集まっている。
「やったれや!セリーヌ!」
「いけいけー!」
「頑張ってーですわ!」
「、、、、、ふぁいと」
「負けるなだし!」
「まぁ、殺さん程度にやるさね」
おいおい、親娘で死合いはやめてくれ。
「それでは、余がこの場を仕切らせてもらう。木剣を使用し、相手が戦闘不能か降参するまでのルールとする。双方、異論はないな?」
セリーヌとエリックは向かい合い、頷く。
「それでは、、、、はじめぃっ!!」
最初に動いたのはエリックだ。
「でりゃあぁぁぁっっっ!!」
上段の構えから剣を振り下ろすがセリーヌはこれを交わす。次いで下段からの切り上げ、上下左右に剣戟を繰り出すエリック。
「ふっ!はっ!はぁっっ!!」
セリーヌはエリックの剣をスレスレで交わしている。危ない感じはしない、が、、、なぜだろう。
オレには、どこかセリーヌの表情が悲しげに見えた。
「たぁっ!セリーヌよ!逃げてばかりではワシには勝てんぞ!!」
休む間も無く連撃を繰り出すエリック。
たしかに一般的に見たら勝てるものはそういないレベルの武芸者だ。そう、一般的に見たら……
「父上。。。」
セリーヌがボソリと呟いた瞬間、
「そこだっ!スキありぃーー!!!」
ガンッッ
セリーヌがエリックの上段切りを顔の前で受け止めた。
「。。。父上、ここまで私を強くしてくれて、ありがとう、、、、、ございました!!!」
「なっっ!?消え、、、、!?」
セリーヌの身体が陽炎のように一瞬揺らめく。
次の瞬間にはエリックの背後に切り抜けていた。
エリックが構えていた木剣がポロポロと切れ崩れ落ちる。
カラ、、カラ、、カララン、、、、、
「。。。。。見事っ………」
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「勝者、セリーヌ!!!」
ワァァァーーー!!
と歓声が上がった。
「すごいすごい!!セリーヌ勝ったよ!」
「やるやないか、今度手合わせといこか」
「速すぎて見えなかったですわ!!」
「、、、、、やったね」
「だし!あんな奴に負けるわけないし!!」
「随分早くなったねぇ。。。8回切ったとこくらいまでは見えたんだけどねぇ。ダァリン見えたかい?」
「ん?あぁ、なんとか、ね。16回切ってた」
「やれやれ、こりゃ負けてらんないさね」
後ろを向いたままエリックは歩み出す。
「あ、、、父う………」
「やめときな!敗者にかける言葉なんてないさね。あいつがそれを教えてこなかったはずないだろ?」
「、、、、、はいっ」
セリーヌが拳をギュっと握りしめ、歩いていく父に向かって一礼をした。
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カッカッカッ。。。。
「どうじゃ?娘に超えられた気分は??」
「王よ。。。存外、悪いものでもありませぬ」
「そうか、なに。あの娘はまだまだ強くなる。あの娘の仲間ものぅ。お前が、なにより大事に育ててきた娘じゃ」
「そう、ですな。。。」
「今宵は、一杯嗜むとするか?」
「はい、、、、馳走になります」
父の目にキラリと光るものがあったが、それは誰も知らなくていいものであった。




