Lv4 理不尽に対して
「神ってのは随分と身勝手なんだな」
自然に言葉が出てきた。
「あらあら、なかなか好みの顔してると思ったら、怒った顔もステキじゃない」
「怒気」
「つーか人間の分際でいっちょ前に怒ってんのか?パリピってるー」
「やる気アルか?」
「ひっひ、そろそろ小物にはおいとましてもらおうかの」
リッチーが前に差し出した骨の指先がピッと光る。
「!!!…からだ、が!」
金縛りにあい動けなくなる千早。
目線は動く、だが、声を出すのもままならない。
「大人しうしとれ、特等席で竜の解体ショーが見れるなど人間には無い機会じゃぞ。ひひひ」
他の神もニヤけた雰囲気でやり取りを見ていた。
「さて、興も冷めたことだ。片付けて、次なる悠久の暇つぶしを探しに行くぞ」
1人つまらなそうな顔をしていたアーサーが口にすると、他の五神が各々の手のひらに光りの玉を出現させる。
操気弾、なんて人生で見ることは無いと思っていたが。。などと感慨深く考える千早だが、心の余裕など無かった。
そして、何とか身体を動かそうと全身に力を込めたがビクともしないので、全力で声を出そうと叫んだ。
「っっっぉい!りゅう!お、お、お前はなんでこ、こ、こいつらにケンカう、うったんだ!!?」
死を覚悟していたのか、竜は無表情のまま答えた。
「先も話しかけたが、我は人間が霊峰と呼ぶ人の足の踏み入れれぬ山の頂で陽の光を浴び心地良く過ごしていた。弟の竜と共にな。兄弟と言っても、幾千の年を経た我とは違い生まれて100年にも満たぬ竜だったがな。だが、虫も殺せぬ程優しい心を持つ。。。可愛い奴だった。。名はダイン。空を気ままに飛んでいるときに、突如現れた魔力の球体に飲み込まれ、周囲一帯と共に弟は。。。消滅したのだ」
「そ、そ、そ、そうか!災難だ、だったなな。オ、オレには家族がいないが、が、つ、つらいおも、おもいをしたんだ、なな」
千早の表情が悲しく曇る。
「我は激怒した。空は曇り大地は揺れ、魔力の軌跡を辿る先にそこのガイコツがいるのを確認したのだから、あとは怒りのままに飛びかかっていったまでよ!」
「。。。そ、うか」
何故戦いが起こったのか。
理由を聞いて納得した。
命を奪うことを「暇つぶし」と言い切る理不尽な神々。
穏やかな時と弟の命を奪われた、神に抗う力を持っていた竜。
正義感が強い男ではないことを千早は自覚していた。が、1人の男が肩を持つべき相手はどちらか、明確だった。
悲しみと同時に、覚悟が、決まる。