Lv33 初陣そして撤退
しばらく森の中を歩くオレたち6人組。
もうだいぶ日が傾いてきた。
昼過ぎに出発したのにこんなに時間がかかってしまった。
なぜか?
「チハヤ、まだ着かないのぉ?」
「チー様、足が痛くなってしまいましたわ」
「チーくん、お水」
「チーやん、ウチ腹ぁ減ったなぁ」
・・・だぁーーーもう!!
この様に、女子達のあーやこーやが街を出ても止まず、途中でいざこざを起こしては歩を進めるのが遅くなってしまったからだ。
「なんだ?なんなんだ!?オレはお前たちのお守りか!?だいたいなんだ、そのチー様とかチーくんとかチーやんてのは???」
「チ、チハヤ殿落ち着いて!?」
「お互い仲良うなるための愛称やないか」
「2人の、絆」
「運命の相手を特別な呼び名で呼ぶのですわ」
「チハヤはチハヤでしょ!?あんたたちなに勝手にアダ名みたいに呼んでんのよ!!?」
「セリーヌさん、貴方だけですよマトモに接してくれるのは。。。」
「あ、あの、私も、チハヤ殿のことチー殿と、、、呼んでいいか??」
セリーヌさん、貴方もか。
「はいはい、わかりましたよ。ったく、好きに呼んでください」
「ふえぇ。。あたしがチハヤと一番長く居るのに、特別な呼び方もないよぉ。。。。捨てられちゃうよぉ。。。。」
なにをメソメソしておる……
「だ、だいじょうぶだよナナ。ナナはオレの初めての仲間なんだから、蔑ろになんかしないってば」
「ホント!?うれしーー!!」
ナナがギュッと抱きついてきた。
「あ、えこひいき」
「ですわ!」
「せやな!」
「ですね!」
森に女子たちのブーイングが響き渡る。
う〜む、思っていたより男一人で女の子の集団の中に居るのはつらい。たしか、なんとか効果。ってやつだっけ??一人しかいない男がステキに良く見えるって感じだったな。そんなもんだ。
「そ、そんなことよりみんな!あそこに坑道の入り口が見えてきたぞ!!」
森を抜けた所に岩山がそびえ立ち、ぽっかりと洞窟の様に穴が開いている。
入り口に、一匹の巨大なアリが見えた。
ミスリルアントだ。
大きさはナナハンのバイクくらい。
全身がミスリルでできているのではなく、頭や触角と顎や牙、手足の先がミスリルの蒼い光沢できらめいているが、他の黒い部分に関しては普通のアリと変わらない様だ。あれなら相手のミスリル部分での攻撃に注意していればそこまで危険ではないな。
「よし、それじゃあ先ずは作戦として……」
「よっしゃ!よーやっと獲物や!ウチが一番槍決めたる!!」
カナデがミスリルアントに頭に槍をついた。
が、ガキンと音がして弾かれた。
「なんや、この硬さ!?」
「あんたはすっこんでなさいよ、あたしがぶっ飛ばしてやるわ!」
ナナが思い切り振りかぶり右ストレートを打ち込むが前脚で防がれガキンと音がした。
「いったぁーい!」
「迂闊に近寄っては危ないですわ!まずはわたくしが防御しながら相手の動きを見極めます」
ライアがメイスを持ち、盾を前に出し突進していくがミスリルアントも体当たりして押し返してきた。
「くっ、ですわ!力が、、、強い!?」
「爆裂魔法、ぶっ放す」
メルの杖が光りミスリルアントの地面が爆発した。しかし、いつの間にか天井に移動され回避されている。
「!?速い。。。」
「くっ、このぉ!」
セリーヌがジャンプして天井に張り付いているミスリルアントに斬りかかったが、今度はすぐに地上に降りられ避けられた。
「な、に!?」
女子たちの攻撃はことごとく失敗する。
「みんな、落ち着いて!相手をよく見て冷静に打ち込む隙を見ればそんなに手強い相手じゃないから!!」
「うるさい!こいつらなんかに負けてらんないのよ!」
「チー殿は下がっているのだ!」
「チーくん、私が!」
「チーやん、見ときや!」
「チー様、任せてください。ですわ!」
5人が一斉に飛びかかっていく。
が、5人一気には無理があるんじゃ、、、
・・・
ドンガラガッシャーン!
女の子5人が団子状態でぶつかり合い、なにがなにやらな感じになっている。。。
『キシッ!キシキシッ!!』
「ヤバい!近寄ってきよった!?」
「ちょっ!あんた達早くどきなさいよ!?」
「そんなこと言われましても、絡まってしまいまして!!?」
「ピンチ」
「皆様、落ち着いて!」
5人の女の子が絡まり合うシーンを見る機会なんて滅多にないのでこのまま見ておきたいが、、、
「ふぅ。。。やれやれ、なにしてるんだか」
オレは絡み合う女の娘の塊を横目にゆっくりとアリに近寄っていく。
スタスタスタ……
目の前にアリの頭がきた。
前脚をオレの頭に振り下ろそうと振りかぶる。
「チ、チハヤあぶな。。。!!!?」
ゴゥッッッッ!!!!!
右手を竜鎧化させ一気に黒炎をまとわせる。
棒立ちしたまま思い切り殴りつけた。
振り降ろしてくる前脚をヘシ折り、頭部分のミスリルは砕けミスリルアントは20m程先の岩壁に叩きつけられた。
パラ、パラ。。。カラン
砕けた岩とともにミスリルアントの魔石が転がり落ちた。
ふむ、ピクリとも動かない。どうやら倒せた様だ。姉さんの言う通り、オレなら問題なさそうだ。
トコトコと歩み寄り魔石を拾った。
「キレイな魔石だな、ミスリルみたいだ。なんか見れると思ってなかった物体だから感激するな。。。と、、、おーい!みんなもうだいじょうぶだよー!!」
「「「「「・・・・・」」」」」
あれ?
女の娘の塊、略して娘塊がピクリとも動かない。
いったいどうした??
「つ、つよい。。。ポッ」
「あかん、惚れ直した。。。ポッ」
「ああぁ、ステキですわ。。。ポッ」
「カッコ、いい。。。ポッ」
「こ、ここまで強かったの!?。。。ポッ」
おーい、みんな帰ってこーい。。。
「はっ!?」
坑道の奥の方からドドドドと音がする。
「ヤバい!みんなひとまず逃げるぞ!!ヤツら夜行性だったし、さっきの音を聞きつけてミスリルアントの仲間がやって来る!!!」
そう、外はもう陽がほとんど落ちかけていた。
カリーナ姉さんも言ってたし、ひとまず逃げよう!
「「「「「りょ、了解!!」」」」」
ダダダダダッ!!
あわてて絡んでる娘塊を解きほぐして一目散に逃げ出し、オレ達パーティーの初陣は、幕を閉じた。




