Lv20 空の旅
「チハヤー!おっはよ!朝だよー」
ん。。。朝か。。爆睡してたみたいだな
「うん。。。おはよぉ」
むにゃむにゃしながら目をこすり挨拶する。
むにゃむにゃ、まだ眠い。
「朝ごはんの果物、採ってきたよー!」
「ん?森に入ったのか?大丈夫だったか??」
魔物に襲われていないか心配する。
「うん、大丈夫!あれあれ〜?心配してくれたの??」
イジワルそうな顔でにやけながら言われた。
「そら、、、するだろ」
「ふふふ、そっかぁ☆大丈夫よ、奥には行かないようにしてすぐに湖に戻れる範囲までしか行ってないし。それに、こう見えてあたし案外力は強いのよ。不意を突かれなかったら魔物なんてぶっ飛ばしてやるんだから!」
魔物は不意を突いて襲ってくるはずなんだが、と思いながらも口に出さずにトテトテと湖に歩き顔を洗う。
「ふぅ。それじゃあナナの採ってきてくれた果物朝食でもいただこうかな」
「うん、いっぱい食べてね!」
朝から上機嫌だな。
なんだかやけにニコニコしてる。
元気になってくれてよかったよかった。
リンゴに似た果実はルンゴ。
バナナに似た果実はバンナ。
梨に似た果実はナンシ。
と言うのだとナナは教えてくれた。
やはり、この世界のことは十分勉強しておく必要があるな。
ルンゴを齧りながらバンナをあーんとほうばるナナと会話する。
「そういえば、街がある方向を知ってるって言ってたね?」
「そうそう!あたしは行ったこと無いんだけどね、父さんやワーウルフさんに聞いたことがあるの!マスケっていう街でね、お城があって城下町もあるんだって!辺境の田舎と違って人がたくさんいるみたいなの。どんなところだろうって、とても行きたかったのよ。でも、歩いて行くには日にちがかかり過ぎるし、森の中を通るから危険が多くて村の男の人が数人がかりで行くのを見たことがあるわ」
「そっか。どのくらい遠いんだろう?方角はどっち??」
「あっちよ!あの大きな山の方向にあるらしいわ」
ナナが山の方を指差す。
「わかった、それじゃ朝食食べ終わったら早速向かうとしますか」
「うん、わかったわ!」
パクパクと土でできたテーブルの上いっぱいの果物がみるみる無くなっていく。
ナナはよく食べるねぇ。。、
ーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅー、落ち着いたわ。腹八分目ってとこね」
マジか…
「よ、よし。じゃあ腹ごなしにちょっと食休みしてから出発しよう」
「あら?チハヤが問題なければすぐにでも出発できるわよ。お腹いっぱいだったら動けないかもだけど、全然問題ないわ!」
マ、マジか…
「そ、それなら出発しよう」
と、その前に。。。と呟きながら、
湖のほとりに建てた足跡土小屋を魔法で分解する。
立つ鳥跡を濁さずなのだ。
「へぇ〜〜、便利なのね。。。ねぇ?あたしもそういう魔法、使えるのかな??」
「ナナは回復魔法以外は使えないのか?」
「うん、何度か試したことはあったんだけどできなかったわ。村には魔導師も居なくて教えてくれる人も居なかったし」
リッチーも、魔導の神にしては火水土風の四大属性は使えたけど聖属性の回復魔法は使ってなかったなと思い出す。オレも魔属性なので聖の回復魔法は使えないしな、逆もあるのかもしれない。
「これから行く街に魔導の店とか本があるところがあれば、一緒に調べようか」
「うん、そうする!」
さてと、と言いながらオレはナナの目の前に立つ。
へっ?と小さくこぼしたナナを両膝の裏側と背中に手を当て一気に抱きかかえる。
いわゆる″お姫様抱っこ″なり。
「へっ!?ちょっ!いきなりなにするの!!?」
「飛ぶから、しっかり捕まってろよ!」
オレは竜の翼をバサッと広げた。
「えっ!?飛ぶって、え!!?・・・
きゃあああぁぁぁぁぁーーーーーー!」
ナナを抱えて一気に飛び上がった。
地面はすでに遠く離れている。
「えっと、、、街は……あ!あった!あれだよな、ナナ?」
ナナから返事がない。
目を丸くし、オレの胸元をギュっとつかみカタカタと震えている。
「″あれだよな?″じゃないわよっ!!?飛ぶなら飛ぶって先に言いなさいよ!!殺す気!!!?」
あれ?言ってなかったか。すまぬ。
「ああ、ワルイワルイ」
「思ってない!!?ホント、信じらんない!?」
「思ってるって、それじゃあ少し飛ばしていくぞ」
ナナの返事を聞かない内に、オレは空を飛んだ。
ナナが怖がるといけないので時速80kmくらいで飛んでいく。飛んでる最中風でよく聞こえなかったがナナが『ハヤイー』とか『タカイー』とかキャッキャと騒いでいる。
無邪気なものだ。
こうして、数十分の飛行の後にオレたちは『無事』マスケの街に辿り着いたのである。
飛んだら早いね、やっぱ。




