Lv19 ベッドトーク?
「・・・チハヤ、まだ起きてる??」
ええ、起きてますとも。
こんな状況初めてですから。。。
ナナが落ち着いてから、今日はゆっくり休んで明日この湖を出発しようと提案し体を休めることにしたのだが。
土魔法で出来た小屋の中。16帖ほどの広さにビジネスホテルのツインのようなシングルサイズのベッドが二つ。寝心地は悪くないが、流石に藁を敷き詰め気休め程度の柔らかさを出してある。
そんな広めのワンルームに男女が2人、ベッドとベッドの間に土魔法でついたてを作ったのはいいが、同じ屋根の下で可愛い女の子と一緒に寝ているというのはなかなかドキドキしてしまうものだ。
集え!理性を司るジェントルマン精霊よ!
とか呼び出せたらどんなに楽か……
「あぁ、起きてるよ」
努めて冷静に返事をした。
うん、オレは至って冷静だ。
「あのね?聞きたいことが、あるんだ」
「なんだ??」
ドキドキしてる?とか質問されたら迷いなくYESだが…
「あたしを助けてくれた時にも聞いたけど、チハヤって何者なの?魔法のこととか。あんまりズカズカ聞いてしまうのもなんだなぁと思ったんだけど、これから一緒に旅するから最低限のお互いのことは知っておきたくて」
あぁ、そういえば鬼のようにたくさん質問してきてたな。いや、実際鬼だが。
「そういえば、言いそびれてたな。その前に、オレから一つだけ聞いてもいいか?」
「ん、なぁに?」
「危なかったところを咄嗟に助けられたとはいえ、初対面のオレとなんで仲間になってくれたんだ?身の上話もさっき聞かせてくれたし。聞いた感じだと、近寄るもの全て信じることなんかできなくなりそうな扱い受けてきたはずなのに、、、その、信用してくれたというか。。。」
「それはね、チハヤの目がとても優しかったから。あたしが檻に入れられてたときに、とても優しく接してくれた人と同じ目をしているの」
「優しい人も、いたんだな」
「あ、正確に言えば獣人ね、ワーウルフの」
ワーウルフ……狼男の種族か。
「あたしのいた村には、月に一度ワーウルフの一族が行商に来ていたの。魔物や動物の毛皮とか、薬草とかをね。お金や物々交換なんかでやり取りをしていたわ。
あたしが村人に捕まって、奴隷として買わないか?と多額の交渉を獣人たちに持ちかけたらしいんだけど、勿論そんなお金用意することなんかできなかったみたいで話は流れたけどね。その時にあたしを見ていたワーウルフの1人が、村に滞在している時にちょこちょこ会いに来てくれたんだ」
なるほど、心優しい奴もいるんだな。
「最初は怖かったけど″君の名前は?″とか、あたしが口をきかなくても話しかけてくれて、少しずつ会話するようになっていったわ。彼の名前もなにも知らないけど
″こんな扱いをするなんてひどすぎる″って言ってくれた。みんなにバレない様に食べ物をくれたり、引き取ってあげられなくてすまないって、とても良くしてくれたの」
「その人は、今もその村に行商に?」
「ううん、初めて会ってから3ヶ月ほどした行商のときに、彼を筆頭に獣人たちがあたしを解放するように抗議をしてくれたの。あたしは檻のある小屋の中にいたから外の様子はわからなかったけどね。声だけは聞こえてきたわ」
ただ、、、とナナは続ける。
「そのやり取りの時に獣人たちは追い返されて″二度とこの村に来るな!″って会話も聞こえたから、もう村に近寄れなくなったんだと思うの」
「そうか。。。縁があれば、その人とも会ってみたいな。いい奴みたいだし」
「うん!あたしも、直接会ってお礼を言いたい!」
旅の折に機会があれば探してみようと思う。
「で、その人とチハヤが同じような目をしていたからなんとなく信用していいかもって思ったの。カンよ!」
「そいつはどうも」
「あと、ちょっぴりカッコいいなんて思っちゃったりもしたんだけど………」
「ん?なにか言った?」
小声でなにか言ってたが聞き取れなかった。
「っな、なんでもないわよ!!!それより、今度はあんたの番よ!ちゃんと説明しなさいよね!?」
「あ、ああ。わかってるよ。じゃあ、オレのことを話すからとりあえず、最後まで質問をしないで聞いてほしい。わからないことや信じられないことが出てくると思うけど、一旦全部説明させてもらうね」
オレは、この世界に来る直前のことから始まり、
バランのこと、
6柱の神のこと、
元は人間だったこと、
竜の力を受け継いだこと、
神を2柱喰らったこと、
この湖に来たことまでを、ナナに詳しく話した。
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「……まるで、おとぎ話みたいね」
話を聞き終わり、ナナはひと言そう言った。
「そうだな、本人のオレですら夢みたいな話だ」
「にわかに信じがたいけど、信じるわ」
・・・意外だった。
もっとマシンガンのように否定したり質問責めにされたり、最悪騙そうとしてるのか?と嫌悪されるかなと予想していたから。
「それも、カンなのか?」
「そうね、カンもあるけど、もし嘘をついていたとしてもあたしを騙してもメリットは無いでしょ?
それに、あなたのことは最初リザードマンの一族か何かと思ったけど、竜人なんて種族ならあの強さや魔法、竜のような鎧も確かに納得がいくしね」
「。。。ありがとう」
「な!なによ急に!?」
「いや……なんか、感謝したくてさ。オレが逆の立場なら、信じるなんて言えないかもしれないし」
「父さんと母さんが教えてくれたわ。疑うよりも信じた方がスッキリするってね」
「……良い両親だったんだな」
ナナの方から
かすかに、グスンと鼻をすする音が聞こえた。
「うん!それじゃあ、お互いきちんと自己紹介もできたことだし、明日からの冒険に備えましょ!とりあえず、当面の目的はそのバランって竜に刺さってる武器をなんとかするってことでいいかしら?」
元気な声を出して言ってくれた。
「あぁ、それで大丈夫だ。と言っても、どこに行けばいいのかすらわからない状態だから、ひとまず大きな街でも目指すとしよう」
「あたし、なんとなくだけど城下町の方向わかる!」
「マジか!それは助かる」
「うん!まかせといて!!それじゃ、明日に備えて休みましょ。流石にあたし、眠くなってきたわ……」
「ん、そうしよう。何かあれば遠慮なく起こしてくれよ。それじゃあまた明日な、おやすみ」
「うん、おや、す、みぃ、、、、zzz」
寝た!はや!
無理も無いか、あれだけの思いをしたのだから。
部屋の安全性を再度確認し、
とりあえず、街で服や装備からだな。。。
と軽く予定を考えながらチハヤも眠りについた。




