Lv2 降臨
西洋風の竜が水底にいた。
「まさか。。。バ◯ムート??」
Fのつく某有名タイトルゲームをファミコン時代からやり込んでいた千早は思わず呟いた。次の瞬間
「ようやく起きたか、小さきものよ!」
真っ黒な顔の左目が突然見開いた。
黄色い白目、真紅の黒目、虎の様な瞳孔。これが噂の竜の瞳か。と、驚きや恐怖とは別に千早は感激していた。
しかも、頭の中で声がすることについても、
確かに水中から声が届くわけが無いと冷静に納得する。
「お前は、何者なんだ?見た感じ竜というのはわかるけど、というより、なんで貼り付けられてるんだ??」
黒い竜は水底に貼り付けられていた。
6つの武器によって。
尾には槍が。
両腕にはナックルが。
胴体には槌が。
翼には矢が。
口には杖が。
右目には剣が。
竜の身体を縫い止める様に、深々と刺さっていた。
「その無礼な態度、普段の我ならば瞬く間に噛み砕いてやるものだ。だが!今はその様な場合ではない!忌々しい神々どもを天上から引きずり降ろし根絶やしにしようと思ったが、個々の力や下級神なら然りとて上級六神全員が束になってこようとは。。。ぬかったわ!」
「神に挑んだのか、やはり竜は強いんだな」
「はっ!!竜種の戦闘力を超えるものなど、おらぬわ!まして我は太古から生き続ける真祖なり。食い殺した神とて100を超えるわ!」
「なるほどね、想像通りなわけだ。で、その真祖の竜が何故そんな姿に??」
「我の身体を貫くこの武器達は神器と言われ、それぞれが創世の頃よりありし神の力そのものと言える武器。先も言ったが、個々それぞれが向かってこようが我の敵ではないが、全ての神器が同時に相手となっては創世の力の前になす術がなかったのだ」
(俊敏と探索の神オーディンのグングニル)
(頑強と舞踊の神ティーファのアルティメットフィスト)
(力と器用さの神タイタンのトールハンマー)
(命中と美貌の神アルテミスの矢)
(魔導と知力の神リッチーの杖)
(聖魔と耐性の神アーサーのエクスカリバー)
と、続けて説明してくれた。
以外に余裕があるんだなと千早は思ったがそれは言わないことにした。
「この場所より1番近くに居る我の波動を受け取れる者に信号を送っていたのだが、竜種や魔族魔物ではなくまさか脆弱な人間とはな!流石に我の命運も尽きたか」
カカカっと笑い飛ばす声が頭に響いた。
「オレに、何かして欲しいのか?」
「ワハハッ!!人間風情何ができる!?それとも貴様、特別な勇者だとでも言うのか??」
「いや、ただの一般人だ」
「クフフ、面白い。ならば小さき者よ。この武器の中のどれか1つでも良い、抜くことができるか?」
「素潜りなら子供の頃から得意だけど、心配なのはこの池の水、身体に良くないとかないのか?」
「心配いらんわ。我より流れ出る魔力と血がこの色に染めているだけだ。脆弱な人間には取り込むことなどできぬだろうしな。だが、何もないという保証はできんぞ?」
ニタリと竜が笑った様な気がした。
「なら、とりあえず止めておこうかな。ここがどこなのか、地球なのかさえ疑わしい状態だからわざわざ危険に飛び込むこともないしな」
「チキュウとは、変わった名前の街だな?我はこのアレルガルドの世界に生まれ一度も聞いたことがないわ。もしやこの世界とは違う理から紛れ込んだか。。。?」
やはりここは地球ではないのか。。
千早の中で膨らんだ疑問が結ばれた瞬間だった。
だが、悲観的にはならない。元の世界に未練があるものは今の千早にはなかった。強いて言えば会社を辞めると言えなかったことが心残りだ。まぁクビは確実か。
「まぁよい、命を粗末にすることはない。我は気長に強き力を持つ者が我が信号を受け取るのを待つとしよう」
「すまないな」
「なに、我の落ち度から不覚をとったのだ。人間などに当たり散らしたり助けを求める道理もあるまい」
「違う世界の住人かもと思っても警戒はしないのか?」
「フハハ、長く生きていればその様な現象もないことはないだろうという程度よ。さして脅威にもならん人間など気にもとめん。と、いうよりもお主、よく我の前で平気でいられるな」
「ん?あぁ、流石に驚いているよ。俺のいた世界は竜はおろか神とやらも実在しないからな」
「そうではない。我を前にして膨大な魔力や眼力、威圧感を受けたならば普通の人間は会話はおろか息をすることもできん圧力を受けているはず。下手をすれば恐怖で発狂死しているはずじゃが。。」
「そうなのか?むしろお前の鱗の感触を知りたいとか好奇心が溢れてくるけどな」
竜が頭の中で大笑いした。
「面白い!その様な人間がおるとは。異世界人の特性か。もしくは貴様の中には何かが潜んでいるやもしれんな!」
「小さい頃はそう願っていたよ。大人になったら現実を受け入れたさ。今じゃ日向ぼっこが好きなただのオッさんになってるよ」
「ほう、日向ぼっことは。我と同じだな」
「そうなのか?温厚そうな竜には見えんが…」
「見た目で判断するでないぞ!そもそも此度我が神々どもと一戦交えようとしたのも。。。」
会話の途中で千早の後方から眩い光が放たれた。
振り向いて見るがかなり眩しい。
サングラスが欲しいところだ。
間も無く光が収まり、光の中には神々しい姿をした6人が立っていた。