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白の竜騎士物語  作者: 涙涙涙
14/136

Lv14 生えてた

完全に迷子ですが、なにか?


ぶつぶつと誰に言っているかわからない独り言を口走りながら、チハヤは森の中を歩いていた。


「てか、腹も減ったし遭難とかマジでカンベン」


ガイアに降ろしてもらった地点から歩くこと数十分。

木々の向こう側にキラリと光が見えた。


「あ!水辺の予感!」


喉も渇いていたチハヤは思わず急ぎ足になる。

2、3分歩いたところで、森が開けた場所に出た。


「湖だ!よっしゃー!」


大きな湖だ。

外周が確認できない程大きくはないが、歩いて一周するには時間がかかりそうなので車が欲しいところだ。


「水が綺麗だ……おっ!魚が泳いでる!入っても大丈夫そうだな」


湖に入ろうとして、身に付けていたドラゴン装備を外そうとしたが、なかなか外れないことに気付く。


「あ、あれ?バランの呪い??」


無意識に脱ごうとしたが、体にひっつく様にフィットしていて外れる気配がない。

兜を脱ごうと両手で掴んだ。


「ぬ、ぬ、脱げろぉ!!」


不意に抵抗がなくなり外そうと力んでいた両腕が天を仰ぐ。まるでラジオ体操だ。


「き、消えた!?」


焦ってはいないが不思議に思いキョロキョロと辺りを見回す。。。どこにも落ちていない。


「失くしたらマズそうなんだけど。。。でも、どうやってあんなにフィットしていたんだ??変身ヒーローものはどうやって装着してたんだっけ??こうやってカポって被ってたのか?」


!?


兜を被る仕草をイメージしながら両手でヘルメットを被る様な動きをしたとき、背中の方が光り突如兜が現れた。しっかりと被った状態で。


「へーー、驚いたな。てことは…こうかな?」


頭の中で兜を脱ぐイメージを描き念じる。

背中側が光ったので、後ろを振り返ってみると、腰の辺りに鎧に包まれた竜の尻尾が生えていた。


・・・この尻尾、もしかして………


まさか!と思いながら鎧を全て脱ぐイメージで念じる。


鎧が光の筋となって尻尾の付け根に吸い込まれていった。どうやらこの尻尾の中に収納されて念じることで脱着可能みたいだ。


だが、今驚くのはそんな些細なことではない。


「し、尻尾が生えてる。。。!?」


普段は余程のことで驚かないことを自覚していたチハヤも、流石に35年間なかった肉体の変化に驚いた。


・・・動くし。。。


腰の後ろ辺りに力を入れると尻尾がピコピコと動いた。

長さは腰から足首までくらいだ。


「5〜60cmってとこか。けっこう太めだ、両手で握って指がつかないくらいだな」


驚いたのも束の間に、両手を後ろに回しながら冷静に新たな肉体部位を観察し始める。

尻尾が生えてる部分から鱗化しており、ツヤツヤと鱗の感触がする。尻尾をグニャリと曲げ腰の前に回して槍の先の様な形の部分を触りながら触覚があるのも確かめる。だいぶ頑丈な作りの様だ、例え踏まれてもビクともしない感じがする。昔住んでいた家の風呂場のツルツルタイルの感触に似てるな、とか考えて色々触っていたらいきなりおかしな感覚に襲われた。


「ん!!?な、なんだココ!?」


ちょうど腰と尻尾の付け根、裏側の方。

お尻の上くらいか。

ヤケに敏感な場所があった。


「ふあぁ、何だこの部分、触るとザワザワする」


男性諸君ならわかると思うが、いきなり不意打ちで股間を鷲掴みにされたのと似た感じの感覚がする。


「あ、、、もしかしてこれが″逆鱗″か。。」


そうである。

触れてはいけないと言われている竜の逆鱗。

先の闘いでも自覚していたが、ますます竜人、ドラゴニアとでも言うのだろうか、人間ではなくなったのを実感する。嫌な感じはしない。十代から二十歳になり、酒とタバコが合法的に飲める様になった、チハヤにとってはその程度の喪失感だった。


「確かに、ココを攻撃されたら一瞬でブチ切れてしまいそうだな。本気でキレたことなんて一度もないけど…」


ある程度自分なりの分析に満足し、着ている服を脱ぐ。

下はベージュのパンツ、上はロンTだったもの、だ。

アーサーに両腕を切り落とされ、いまはノースリーブ風になってしまったが。


「誰も居ないことだし…」


トランクスも脱ぎ全裸になった。


「ん??なんか、体が若々しいというか、ハリがあるというか、たくましくなったというか…」


水辺に向かい歩きながらペタペタと腕や胸、肩などを触る。まるで二十歳、いや、高校生くらいの体の感覚だ。


ふと水面を見ると、自分の姿が映っていた。


「おぉ!?ここもか!」


黒髪が伸び、肩につくくらいになっていたが驚いたのはそこではない。顔が若返っていた上に、若干整っている。長年見慣れたものではないので違和感が凄い。

とても三十代中盤の顔ではない。

それこそ高校生のときの様な若々しさと、モテることなどほとんどなく平凡な顔立ちだったのに。


歩いていたらいきなり知らない女の子からラブレターくらいもらえそうな顔立ちに整っていた。


「あぁ、あいつを″喰った″からか…」


黒炎でケシズミにした姉ちゃ……アルテミスを思い出す。

たしか、″命中″と″美貌″を司る神だったな。


そう思いながら足元の小石を拾う。


立っている場所から100mくらい離れた森の入り口に、先の尖った岩が見える。


野球などロクにやったこともないが思い切り振りかぶり狙いをつけて、投げた。


若干左にそれたか。。。と思いながら飛んで行った小石は弧を描きながら吸い寄せられる様に岩に向かい、当たった瞬間岩が砕けた。


「マジか。。」


力も上がってるな。

しかし、自分で自分の知らない部分が多過ぎる。


ゆっくりと湖の中に入りながら想い、先ずは自分自身の変化の現状把握に勤しもう、とチハヤはとりあえずの行動を決めた。

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