Lv12 駆け付ける
「ひっひっ、神をも殺す竜の騎士か。これは伝説になるのは間違いないのぅ」
「お前も随分しぶといな。それに、傷は負ったが死ぬ程じゃないしお前よりは元気だぜ」
「ひひ、いや、ここで貴様は死に、伝説になるのじゃよ」
ブゥーンとリッチーの体が魔力に包まれる。
バチバチと放電しているようにも見える。
「さぁ、共にあの世にいこうぞ。ひひひ」
自爆か、不味いな。。。
今あんな量の魔力の爆発をまともにくらえば竜の装備でも保つかどうか……
リッチーを包む魔力が風船のように膨らんでいく。
「つっ、体がまだ動かない」
チハヤを貫いた傷は、まだ回復していない。
咄嗟に回復魔法を思い浮かべてみるが、魔力が働かない。
「ひひひ、お主は魔属性のようじゃからの。儂も火水風土の四大属性は使えど聖属性は持ち合わせておらんからの。年貢の納め時じゃわい」
そういうことか。
ヤバいな……
「さて、火水風土の属性全てを融合させた儂の極大魔法、儂の命全てと魔力を注ぎ込みお主と共に花火を咲かせようか。ひひひ、あの世でアルテミスも待っておるわい。」
リッチーの魔力が臨界点まで膨らみ弾けそうになっている。地響きも起こり始めた。
「ちく、しょう。こんなところで……」
悔しい。
この世界に来て、不快な思いを味あわされ、理不尽に一生を終えるのは悔やまれる。
そのとき、チハヤから50m程離れているリッチーとの中間地点の地面が盛り上がった。ゴゴゴゴという地響きは更に強まる。
ボゴォーン!
地面から岩が盛り上がってきた。
正確には、岩の様な外殻だ。
飛び出してきたのは、岩の鱗で覆われた巨大な竜だ。
「ふはははははは!!忌々しい黒竜の情けない咆哮が聞こえたと思えば、こんなところに縫いつけられているとはな!しかも、見たこともない竜の力を持つ人間と神が対峙しているとは、面白いものが見れたものだ!」
「だ、誰だ、お前は?」
「儂の名はガイア!大地竜のガイアなり!今まで散々煮え湯を飲まされ続けたあの自由奔放な黒竜の頼み事とも言える叫びを聞き、借りを作りに来たのよ!」
バランの咆哮を聞きつけ、ガイアはやって来たのだ。
「ひひ!竜が一匹増えたところで、まとめて吹き飛ばしてくれるわ!!」
「おっと、神の自爆などに付き合ってられんな」
ガイアはチハヤの体をパクリと口の中に含んだ。
「逃すものかーー!!」
リッチーの魔力が爆発する直前、ひときわ膨らんだと同時にガイアは竜種の中でも特に防御に秀でた能力をフルに展開。体の表面をダイヤモンドより硬く硬質化し、更に防御結界を展開しつつ一気に出てきた地面の穴に潜り込んだ。
「ひっひっひ、この辺一体消し飛べ!」
『アルティメニア』
リッチーが唱えると共に、膨らんだ魔力は一気に弾け飛ぶ。人里離れた山の中腹にあったこの洞穴は、山そのものが白い光に包まれる蒸発し、消し飛んだ。
後には月面クレーターのような跡と、その中心には黒紫の水晶、神器と黒竜の部位が固まったものだけが残っていた。




