表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護の愛 ~悠久録~  作者: 沙羅魚
6/54

第四章 古の預言

挿絵(By みてみん)





第四章 古の預言







 その夜、梓紗、琭葩、梔昏、そして冰龍の四人が族長の邸の広間へと集められた。




「今宵、呼び出した理由は他でもない。昼間、村で起きたことについてだ」




 冰龍と琭葩の父で、梓紗と梔昏の伯父である、真耶族まやぞく族長の彪牙ひゅうがが、部屋の中央に座っている。

 その目の前の下座に、四人は座っていた。




「それで、父上」

「伯父様、いったい昼間のことは」

芙慈乃ふじの




 彪牙に呼ばれ、大巫女である芙慈乃が、ゆっくりと現れた。

 どうやら、控えの間にいたようだ。彼女の傍らには、付き添いの巫女、紗那しゃながいる。

 老体である身体を紗那に支えてもらいながら、芙慈乃はゆっくりと座りなおすと、四人に向けて、語りはじめる。



「昼間の、冰龍様と梔昏様は、御神体ごしんたいに乗り移られたのでございましょう」

「御神体に?」

「はい。

 水の守護神。青狼せいろうの姿をなされた、翆嗚観之尊(すいおみのみこと)様。

 ほむらの守護神。赤虎せっこの姿をなされた篝誉璃之尊(かがよりのみこと)様……二神のお姿でしょう」

「それは分かっている。でも、その守護神が何故、兄上と梔昏の身体に?」

「時が来たのでございますよ」

「時?」

真耶族まやぞくには、古来より、預言書というものが伝わって参りました」

「預言書?」



 聞きなれない単語に、梓紗は思わず聞き返す。

 不思議そうな表情を浮かべ、首を傾げる彼女に、芙慈乃は深く頷きながら、続きを話し始めた。



「はい。預言書には、真耶まやに闇が訪れた折。

 四人の祝部ほうり憑代よりしろに、神が降臨するという記述がございます。

 その祝部ほうり達は、神のご加護と使命を受け、ときの神殿に眠る秘宝を持ち帰り、真耶まやを救うとあります」

「……では…」

「はい。冰龍様と梔昏様は、神よりその祝部に選ばれたのだと存じます」

「俺は、この痣を負った日、この力が目覚めた」

「え?…あ、でも」

「確かに、あのときの冰龍から、さっきの力と同じものを感じた」

 


 冰龍の告白に、琭葩と梓紗は、遠い記憶が甦った。

 たしかに、あのときの冰龍は、今までにない不思議な力を使っていた。あれが、神力というものだったのだ。



「しかし、俺達が完全に、あの姿になれるようになったのは、五年前だ」

「二人で、手合せをしていたときだったな」

「ああ。呼応するように、お前も赤虎せっこの力が降臨して……」

「え、兄様もなの?」



 梓紗の問いに梔昏が頷く。



「そうだ」

「それ以来、二人で神の力を御せるよう、巫女殿みこでんの奥深くで修練を重ねてきたってわけだ」

「では、俺達に、あまり近づくな、とおっしゃっていたのは……」

「…俺達が、神体の姿になれることが分かれば、預言の内容を民に知らせねばならない。この真耶族まやぞくに、闇が訪れかけていること。

 それが広まってみろ。民の心に動揺が走るだろう」



 兄達の返しに、梓紗と琭葩は、成程、と納得する。



「おい、冰龍」

「いいんだ」



 何か、冰龍に口添えしようとした梔昏だったが、当人によって、それは制されてしまった。

 しかし、それは小声で交わされた言葉のため、琭葩や梓紗の耳に、届くことはなかった。



「それでは、兄上と梔昏が、その秘宝という品を持ち帰る者、ということなのですね?」

「ああ。そうだ」



 父である彪牙が頷く。

 そして、その直後、彼は思いもよらぬ言葉を梓紗たちに投げかけた。



「琭葩。そして、梓紗。お前達もそうだ」

「え?」

「嘘…」



 戸惑いを露わにする二人に、梔昏が肯定を示す。



「悪いが、嘘ではない。お前達も俺達と同じ、四天王してんのう祝部ほうりだ」

「私達が祝部?」




 冰龍の言葉に、梓紗は耳を疑った。




「でも、私達には何も――」

「良いから見ていろ」




 言い募る梓紗を制し、冰龍が声を発する。




「梔昏、お前は梓紗を頼む」

「ああ」





挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ