第八話
「という事があって透君のギルドに入りました」
僕が気絶した理由と皆と一緒にギルドに入るまでの会ったことを思い出すように話した
「ごめんね、ちょっと重い話だったかも・・・」
多分僕は眉毛をハの字にして苦笑しているだろう。
皆が悲痛な表情で僕を見つめ返す。
皆に僕の事を理解してもらうために話したんだけど・・。
部屋が静まり返ってしまった。
来栖さんが何かを思い出したように僕を見つめ・・・ん?
顔を見てるにしては視線の先が低い?
僕が首を傾げていると・・・ふにふに。
「え・・・あぅ・・・?」
一瞬何が起こったのかわからなかった。
来栖さんが僕の胸に手のひらを当てて大きさを確かめるように動かしていた
「え?え?え?」
初めての感覚に戸惑い、そして混乱していた。
部屋は別の意味で静まり返り来栖さんを除く全員の目が点になっていた。
来栖さんは僕の胸を覆った形の手のひらを自分の胸に押し当てると絶望したような悲痛な表情を浮かべorzと手のひらと膝を床へ着けたポーズで固まってしまった。
「なななな・・・」
僕は両手で胸を覆い隠すようにガードをしながら批判の声を上げようとするが動揺しすぎて声にならない。
スパーン
軽快な音が響く。
「いったーい」
音のした場所に目を向けると、履いていたスリッパを片手に持ったすごい形相の椿さんとorzのポーズから復活し両手で頭を抑える来栖さんがいた。
「『いったーい』じゃないの!未来はさっきの話聞いてなかったの?」
「理恵ちゃん痛いよー、聞いたからこそだよ!」
涙目になりながら来栖さんが反論する。
「どこをどうしたらあの行動になるのよ・・・」
額に手を当てながらため息をつく椿さん。
「だってだって・・・半分は男の子として育った岬さんより女としてずっと育った私のが小さいんですよ・・・」
そしてorzの姿勢に戻る来栖さん頭の上に『ガーン』という擬音語が見えた気がする。
あ、男性陣の視線が僕の胸と来栖さんの胸を見比べ、納得した?ような表情を浮かべていた。
「注目する点はそこかー!」
スパーン軽快な音が再び響く。
「痛いってば・・・」
再び涙目になり叩かれた場所を押さえる。
「あのね、未来良く聞きなさいよ」
「あい・・」
「話を聞く限りでは、岬さんに未来のやったようなスキンシップ経験ないの、それにつけて他の人に対する不信感も強いのよ」
椿さんの仰るとおりです・・・、すごく驚きました。
「だから、突拍子もない事は控えなさい」
「はい・・・」
涙目のまま力なく頷く来栖さんだった。
「しかしまぁ・・・雰囲気は明るくなったな」
透君の言う通り、話し終わった直後の重たい空気は一掃された感じだ。
「私は場を和ませようと」
スパーン
来栖さんが言い切る前にスリッパ制裁が再び襲う。
頭を抑え涙目で椿さんをにらめ付ける。
「今思いついたように言い訳しないの」
椿さんはその視線をばっさり切り捨てた。
「まぁまぁ・・・僕はなんとも無いんで・・・」
嘘です思いっきりガードしてますごめんなさい。
「岬さんがそういうなら・・・」
「理恵ちゃん私の頭叩きすぎ・・・」
「未来があんなことするからよ」
椿さんと来栖さんが険悪な雰囲気になりかける。
「二人ともいい加減にしろ、岬さん苦笑しっぱなしじゃないか」
柊君が間に入り止める。
「だってだって・・・」
「来栖の気持ちもわからんでもないが一応今日あったばかりだぞ?さすがにまずいだろ」
榎君が来栖さんのしかけた反論を止める。
「空気が和んだことだし俺からちょっと提案がある、翠さんが嫌でなければだけど」
「うん?」
「皆、苗字でなくて名前で呼び合うことにしないか?親しみをこめるという意味で」
え・・?
「あ、それ私も考えてた」
「いいな」
「いいね」
「私も私も」
4人はそれぞれ賛成を唱える。
「ええと・・・?」
上手く事が飲み込めてない僕は呆然とする。
「要するに、リアルもゲームも仲間同士、友人同士ってことさ」
透君の言葉を皮切りに、
「あれだけの話を私達にしてくれるぐらいだから当然でしょ?」
「話す事に覚悟のいることだろう、当然友人と呼べるさ」
「過去は消せないが未来は作っていけばいいよ」
「私達は一緒に遊んだ時から友達ですよ?」
皆が口々に僕を友と呼んでくれる・・・。
「僕・・・でいいの?」
おずおず問いかける。
「当たり前だ、誰も否定してないだろ?」
透君の言葉に皆うんうんと頷いた。
「あ、ありがとう」
また自分を否定されるのかと正直怖かった。
僕の過去を話半分に笑い飛ばされるのかと思ってた。
しかし、皆真剣に聞いてくれた、一人はちょっと違った気がするけど。
過去と同じ轍を踏まない為自分の過去を明かしてよかった・・。
「え・・・ちょっと翠さん泣いてる?」
理恵さんの指摘に僕は目尻から頬にかけて何かが流れている事を感じた。
「あ・・あれ・・・?」
指で頬を触ると透明な液体が付着していた。
僕・・・泣いているの?
でも決して悲しいわけじゃない、でも止まらない。
こしこしと袖でふき取るけど次から湧き出るちょっとしょっぱい水は数分流れ続けた。
キャラクターの個性を表現するのが難しい
楽しいことでもあるんだけど、まだまだ未熟ですorz