第五話
akira『こんばんは~』
ログイン後のいつもの挨拶
トール『よお』
セージ『ちす』
レイ『こんばんはー^^』
ミラ『やっほー』
ヒロ『今晩は』
ギルドのメンバー達が挨拶を返す、
僕が最後で今日は皆ログインしてるようだ。
僕とトールの他に、聖職者のミラさん、狩人のレイさん、賢者のセージさんに、鎧騎士のヒロさん。
狩人は遠距離攻撃を得意とする職で矢を変更することによって弱点や状態異常を付与する
賢者は攻撃魔法を使いこなす魔法職
鎧騎士は全身鎧で攻撃を受け止める役目
ヒロさんが防いでレイさんセージさんが遠距離攻撃、トールが近接攻撃ヒロさんの回復をミラさん攻撃職への強化・回復が僕の役目といった感じで狩りをしている。
akira『皆何してる?』
トール『akiraが来るの待って狩いこうかって話してた』
ヒロ『akiraさん居ないと安定しないからねー』
ミラ『私だけだと不安ってこと?』
レイ『いやいや二人居たほうが安定するってことだって』
セージ『そーいや、akiraさん引越し終わったって昨日いってたな』
akira『うん、今日お隣さんへ挨拶してきました』
まさかの透君の家だったけどね。
トール『あ』
レイ・ミラ・ヒロ『?』
セージ『どした?』
トール『akiraに俺ら皆同じ学校にだって言ってなかった』
akira『Σ( ̄□ ̄)』
レイ『そーいえば言ってなかったかもねー』
ミラ『akiraさん仲間はずれみたいにしたくなかったもん』
セージ『akiraさんがその顔文字使うのはじめてみたわw』
ヒロ『新鮮だねw』
ということはこの人たち皆同じ学校ってこと・・だね。
akira『正直びっくりです・・・』
今日会った時に教えてくれれば良かったのに。
トール『で、あれだ俺の隣空家で引っ越してきたって言ったが』
セージ『まさか・・・』
ミラ『akiraさんだったとか・・・?』
akira『そのまさかでした』
ヒロ『ということはトールとakiraさんを見たと』
トール『見た・・が全然akiraだとわからんかったorz』
akira『僕はトールだとわかったよ』
セージ『トール面目丸つぶれだなw』
まぁしょうがないよね、透君の記憶の中では僕男だったし。
レイ『ねね、akiraさんってどんな人だった?』
ミラ『興味はありますね』
トール『同じ学校みたいだから入学式に見ればいいぞ』
ヒロ『それだと気兼ねなくここで近所のあれこれ話し合えるね』
皆に気を使わせちゃってたかな。
akira『改めてよろしくね』
ミラ・セージ・レイ・ヒロ『『『『こちらこそよろしく(ね)』』』』
akira『トール明日あいてる?』
トール『あいてるが何か狩りにでも行きたいのか?』
akira『まだこっちに来たばかりだから案内お願いできないかな?』
トール『あーでも大丈夫なのか?』
今日の僕の様子に気を使ってるんだね。
akira『慣れておかないとね』
レイ『私もついてっていい?akiraさんと早く会ってみたいし』
ミラ『私も会ってみたいな』
セージ『これはオフ会の予感』
ヒロ『オフ会ってほど離れてない気もする』
トール『akiraが大丈夫ならいいが・・・』
ちょっとこっちに振られても断れないじゃないか・・・。
akira『これ僕に拒否権無い気がするんだけど・・・』
僕は頭を抱えてしまった。
でも・・・まぁ・・乗り越えないと駄目だよね。
レイ『それじゃ決まりって事で集まる時間はどうしよっか?』
トール『そうだな、俺の家の前10時に待ち合わせでいいか?』
レイ『私は大丈夫』
ミラ『はーい』
セージ『了解』
ヒロ『わかった』
トール『肝心のakiraは大丈夫か?』
ミラ『akiraさん都合が悪いのかな?』
都合というか現在の僕的には断りたいんだけど、いずれは会って集まるようになると思うし・・・。
akira『わかりました、明日10時ね』
どちらにしても会うことになるな早いほうがいいよね、どんな人たちなのかな。
ゲームの中でもいい人たちだし、透君の友人なら問題ないよね。
不安と好奇心と相混じった感情が僕をぼんやりとさせるのだった。
結局何をするべくもなくチャットで歓談し、ログアウトする。
今日は色々あったなー・・一日を思い返す。
透君がお隣さんであったこと。
透君に自分『あきら=みどり』であることを理解してもらったこと。
明日透君に近所を案内してもらうことになったこと。
ほかのギルドのメンバーも明日会えること。
全部透君つながりだねと心の中で苦笑する。
明日もいい日になるといいな。
僕は布団に入り目を閉じ今日という日が終わりを告げた。
翌日
ん・・・
目を覚まし、壁に掛かっている鳥小屋をモチーフにした時計を見る小屋の小さな入り口から鳩がでて来る。
AM5:30、うん今日は速く起きなきゃね。
ベッドから両足を下ろし、両腕を斜め後方に伸ばす。
「ん~・・」
ちょっと目覚めが悪いために目をこしこししながら立ち上がる。
「よし」
声をだし体を覚醒させる。
水色の前開きルームタイプワンピースを脱ぎ、
机に置いていたシンプルな白のワイヤーレスのスポーツブラを付け
シンプルな黒のパイプを填め込んで構成されるハンガーラックにかけてある紺色のフード付ジャージを着込む。
一日一度は外にでて軽く運動する習慣を作ってからというもの、目立つ髪を隠せるフード付のジャージが毎日の朝の友となった。
追加の目覚ましのために、洗面所で水で顔をバシャバシャ洗いより目を覚ます。
タオルで軽く顔についた水分をとり、台所へ入りコーヒーカップをとりだしインスタントコーヒーといれポットから熱湯を半分ぐらいになるまでそそぐ。
そのあと冷蔵庫より牛乳をとりだし注ぐ。
ちょうどいい温度となった即席のカフェオレをコクコクと飲む。
そしてランニングシューズを履き、静かに玄関を開け閉めし外へ。
「とと・・」
あわててフードで頭から後方をすっぽり覆い隠す。
何かを忘れていたかなと思っていたらフードを付け忘れてた。
昨日からはじめたこの町でのウォーキング、町の地理を覚えるというよりは人目につかないように歩きたいだけ。
人が通っても新聞配りの人ぐらいだしね。
「朝の空気はきもちいいなぁ・・・」
澄んだ空気というよりは昼間よりちょっぴり冷たいだけ空気。
頬にあたる微風も心地いい。
「おはようございます」
いまから通勤なのかスーツを着た男性に挨拶される。
「お、おはようございます」
軽く会釈ををすると男性は特にん僕へ視線を向けるわけではなく。
そこに僕がいたから形式的に挨拶しただけみたい。
昨日も同じように挨拶されたけど何とか会釈するのが精一杯だった。
よし、心の中でガッツポーズを決める。
今までは会釈もできなかったことも多かっただけに進歩してる・・・はず。
「今日の10時かぁ・・・」
昨日の不安と好奇心が混じったものを思い出す。
気がついたらため息がでていた。
正直気が重いけどやっぱり避けては通れないよね。
再びため息をつきながら朝のウォーキングは終了しし、
そーっと玄関を開け閉めする備え付けられた円盤型の時計の針は上下に直線状に伸びていた。
あまり音を立てないように台所へ入り、
「さてと今日は何にしますかね」
冷蔵庫をあけ卵を数個と蟹カマをとりだす。
フライパンを加熱し、油を引いておく。
ボールの中に卵をわりチャッチャとお箸でといて塩とトマトの目立つオパッケージの中農ソースを少し入れる、熱したフライパンへうつし固まってきたなーというところで、蟹カマをのせて固まってきた卵を橋で持ち上げて蟹カマをくるむように巻いていく。
いい感じに中まで日が通ったところでフライパンからお皿に乗せる。
一品できたっと、もう一品ほしいかな・・・。
冷蔵庫をみると玉葱と鮭の切り身があった、玉葱をくし冊切りにして炒める、柔らかくなったところで鮭をいれ塩コショウで再び炒める。
鮭がやわらかくなってほぐれたところで薄くマヨネーズをぬって少し焼いてできあがり。
キャベツもいれればチャンチャン焼きにもできるけど、朝からボリュームありすぎてもね。
時間を見ると7時前っとトースターに食パンを・・・っと母さんにはスライスチーズのせて、父さんにはバターを軽くぬってっと。
コーヒーを2ついれて、僕のはさっきとおなじカフェオレを入れて。
テーブルの上にお箸と取皿とトースト用の皿を並べて真ん中におかず2品と。
そろそろかなーと思ったところで台所のドアが開く。
「おはよう」
「おはようございます」
父さんが起き出してきた。
「母さんは?」
「おはよう~」
母さんが父さんの後ろからひょっこりでてきた。
目が線みたいになってるので夢へ船をこぎだしているのかな。
父さんが母さんの頭を指でちょんと押してみる
「ふにゅ」
まだ目が覚めてない様子
とりあえず父さんがテーブルの席まで母さんを連れて行き座らせるが。
頭が上下にコクリコクリしていると・・『チーン』とトースターが焼けたと音をならす。
母さんの体がその音に反応して目を覚ます。
「おはよう~」
やはり母さんはマイペースだった。
朝食が始まり、
「パンにバターを塗るのもいいが今日の鮭と玉葱はそのままはさんで食べてもよさそうだな」
「そうね~レタスはさむとよさそうね~そのままでもいいけど」
両親の批評に、確かにサンドイッチもいいなぁ次はそうしよう、そしたら玉葱はタルタルソースにしたほうがいいかな~・・。
と思案に暮れていると、
「翠ちゃん今日はどうするの~?」
母さんが今日の予定を聞いてきた、昨日の話がどうなったのか言ってなかったね。
「昨日母さんが言ってたように透君に案内してもらう予定です」
「そうか、大丈夫だと思うが・・・気をつけてな」
コーヒーを飲みつつ父さんが心配そうに答える。
「不安といえばちょっと不安かな・・・透君の友人も来るみたいだし」
「透君ひとりじゃないのね~?」
「うん、僕の遊んでるゲームやってる人たちが同じ高校に行くらしくて・・」
「桜子さん今日出かけるのはやめておこう」
「そうね~今日は居たほうがよさそうね~」
僕の表情を読み取ったのか父さんが今日の外出を中止する。
「案内はまたできるだろう今日はその人たちを連れてきなさい」
僕は首をかしげてしまった。
「どうして?昨日は案内してもらえって・・」
「それはね~、一緒に行く人たちが多いからよ~」
母さんが父さんの懸念を説明する。
「翠が友人を作るのは良い事だがな、今のお前は繊細すぎる」
「そうね~できれば今日はうちに来てもらって翠ちゃんが慣れた方が安心できるわ~」
結局その話し合いで僕の予定変更となった、皆が納得するかな?
食事が終わり、僕は着替えのため部屋へ戻った。
「さすがにジャージで会うわけには行かないもんね」
姿見に映った自分に苦笑しつつ着替え始める。
ライトグリーンのブラウスにアクアブルーのパーカーにデニムのジーンズ。
そして小物をいれたライトグリーンのショルダーポーチ。
「こんな感じかな?」。
正直性別が変わってからの自分のセンスはわからない。
人に見てもらう機会がほとんどなかったしね。
ととウィッグとコンタクト忘れてた。
改めて黒髪、黒目の自分を確認し、
これでいこうと決心したときに時刻を見ると9時55分だった。
やっと1日目が終わった 入学式を出せるのはいつになるだろう(汗