第三話
ガチャリ、ドアを開く音が聞こえる
「翠さんはどんな装備して・・あれこのキャラどこかで」
透君が画面を覗き込みつつ凝視する
「『akira』・・?」
キャラクターの名前を小声で読み、
「翠さんがどうしてこの・・俺の相方のパスワードを知ってるんだ?」
画面に映る僕のキャラクターに驚きを示す。
「不意打ちみたいでごめんね、こうしたほうが理解してもらえると思ったんだ」
驚かしたいとかそんな気持ちはなかったけど、やっぱり僕が僕である証明するにはこれがよかったんだ。
申し訳ない気持ちが多分僕の顔に表れてると思う。
「君はあきらの妹さんだったのか」
透君の回答に僕はわかりやすく表現するならズッコケそうになった。
「ど、どうしてそんな結論になるんですか」
「い、いやあきらは男だったし・・・翠さんはどうみても女性でしょ」
透君の知ってる僕は男の子だったよ、うんだからといって、僕は妹がいるなんていってないよ!
・・いないともいってないけど。
と透君の視線の先を確認してみると。
僕のアクアブルーのポロシャツの少し盛り上がってる部分・・つまり胸の位置を注視していた。
「どどど、どこみているんですか」
僕は思わず両手で自分を抱きしめる格好で透君の視線の先を腕で覆い隠した。
鏡を見たら顔を真っ赤にしてるかも・・・。
でもいつもならじっと見られたら感じる怖い感情は出てこなかった。
「ごめん・・・もしかしたらあきらが女装して俺をからかってるのかなってな」
ばつが悪そうに言い、
「で、でもそれは女の子の反応だろう?少なくとも男の反応じゃない」
「ううう・・・」
僕は頭を抱えてしまった
確かに、家族なら妹が動かせてもおかしくはないし、僕が性転換して女の子になりましたーって考えるはずはない・・。
あうあうあう・・・順番間違えたかも・・・。
「ちなみに翠さんはなんで『akira』のパスしってたの?妹が居るなんて言ってなかったはずだし」
「僕が『あきら』だったからです!」
あ、すんなり言えた。
「は?」
透君は目が点になった。
うん、そうだよねそうなるよね。
「ということは女装?」
「違います!正真正銘の女です!」
うう・・・こんなことを叫ぶように言ってしまった。
「でもオフ会のときは並んでトイレはいったはず・・・」
そうだね・・・入ったね・・・あの時はまだ僕は男だったもん。
あーもうどーいったらいいのー・・あ、そうだ。
「ちょっと鉛筆と紙を貸してもらえます?」
「あ・・うん」
透君は机からボールペンとメモ帳を取り出す。
「僕の名前は翠です、透君の知ってるあきらさんの漢字はどう書きましたか?」
よし!これなら、家族で同じ漢字で違う読み方の名前の子を兄弟や姉妹につけないもんね、紛らわしいから。
「そういえば、あいつの漢字ってどう書くんだっけな」
あう・・・前教えたけど忘れてるー。
「同じ字です!、オフの時に教えたでしょ、透君のお母さんが『みどり』って読んじゃって・・・ってあ・・」
最初からこういえばよかったー。
「そういえばそんなこともあったなーって翠さんがなんで知ってるの」
「だから僕が『あきら』なんです!今は『みどり』ですけど」
「だけど『あきら』はおとこ・・・」
この後5分間堂々巡りが続きました。
コンコンとドアから音がする
「入ってもいいかしら~」
「どうぞ」
「それではお邪魔します~、透君お久しぶりね~」
と母さん入場。
「お、お久しぶりです?」
返答が疑問系になる透君。
「覚えてないかな~、前にあったときは私の髪長かったからね~」
「ああ、かーちゃんに無理いって連れてってもらった時の『あきら』のお母さん」
「うんうん~、覚えててくれたのね~」
満足そうに頷き、
「翠ちゃんちゃんと理解してもらえたかしら~?」
僕はゆっくりと首を振る
「あらあら~、肝心の説明が出来てないのね~」
「肝心の説明?」
僕は首を傾げた。
「翠ちゃんと透君しかしらないことよ~」
うん、それを最初に言えばよかったね
「俺と翠さんは初対面では?」
今の透君の頭上に『?』が見えた気がする。
「そうね~、翠ちゃんはすっごく可愛い女の子にしか見えないもんね~」
「そうですね」
と二人で頷きあってる。
意気投合するとこずれてない・・ねぇ
「簡単にいうとね~、『あきら』ちゃんは生まれたときから女の子だったってこと~」
母さん事実だけど何かもすっとばしてない?
ほら透君の頭の上の『?』が増えてるよ。
でも意図するとこはなんとなくわかった。
「僕『みどり』は12歳まで『あきら』だったってことです」
そして僕は自分に起こった出来事を説明した。
「そうか・・・」
僕からの説明が終わった時、透君は納得したみたいだ。
「つまり『あきら』なんだな?」
やっと理解してもらえた、最初から説明して置けばよかったと。
僕はゆっくりと頷いた。
「あー昨日引越しの報告してたけど、まさか隣の家に越してるとはなぁ・・」
それは僕もおなじです。
「これ知ってるの本人以外ないって説明にと思ってやったんだろう?」
キャラクター選択の画面のままとまってるディスプレイを透君が指差す。
僕は再び頷き
「妹がいるとかいう発想が出てくるとは思わなかったよ」
疲れたといわんばかりに肩を落とす。
「でもまぁ・・・性別が変わったとか思いつかないぞ?」
「だよねぇ・・」
「まぁゲームで報告されても冗談にしか聞こえないから仕方ないな」
「うん・・・」
透君のは額を手のひらで抑えながらため息を吐く。
「そうそう~、さっき透君のお母様から聞いたんだけど透君広塚高校に通うんですって~」
「ゑ?それもしかして僕が通うとこと一緒?」
「うんうん~透君、翠ちゃんの事よろしくね~」
とペコリとお辞儀をする母さん
「は、はぁ・・・」
透君はというとポカーンという言葉が似合うぐらい気の抜けた顔をしていた。
母さん色々はしょりすぎー、これじゃ僕が透君と・・・うん考えるのはやめておこう。
「母さん肝心なところが伝わってないよ!」
「そうね~」
う~んと考える素振りをし、
「翠ちゃんは中学校ほとんど通ってなかったのよ~」
その言葉を皮切りに母さんは僕の事を淡々と説明していった。
性別が変わって心機一転と中学校へ通うも9月の事件のショックで通うことを諦めた事。
その後の私生活をかいつまんで透君に話した。
「だから翠ちゃんが人見知りっていうのはちょっと違うの、透君が出てきたときもおずおずしながら私の後ろに隠れてたでしょ~」
「そういえば」
透君は思い出すように
「隠れてましたね」
「だって・・・」
怖いんだもん、僕は言葉を飲み込んだ。
「だからね~、おばさんからもお願いしたいの透君に翠ちゃんの味方になってほしいの」
「母さん・・・」
「透君に迷惑をかけることになると思うけど、登下校・・ううん、登校だけでもいいから翠ちゃんと一緒にしてほしいのよ~」
僕からお願いしなきゃいけないことなのに・・・母さんありがとう。
「わかりました、ゲームの中でも色々振り回されたが、リアルも振り回されそうだな」
透君は苦笑する。
「ごめんね透君には迷惑かけてばっかりだね」
僕はシュンと俯いてしまう、
「気にするなというほうが無理かもしれんが、5年間一緒に遊んだ仲だろう?」
「でも・・・」
「でもも何もないさ、俺が相方で不満か?」
僕は首を横に振る
「ならさ笑ってありがとうって言え、いまはそれで十分だ」
「ありがとう」
僕は満面の笑みで返せれたかな、ちょっと自信ないけど。
透君が恥ずかしそうに目を背けたのは何故だろう?
次は今週末に登校できたらいいな~
書きたいことはあるのになかなか良い様に進まない