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第一話

「これが新しい制服なんだねぇ・・」

三日後に通う事となる新しい黒を基調としたブレザーの制服を自分の体に重ね合わせる。


僕の前には全身を映す姿見があり、制服を重ねた僕の姿が映る。


鏡の中の僕・・翡翠色の眼と背中まで伸びた眼と同じ色をした髪の少女が苦笑しながら僕を見つめ返す。


「今度はしっかり学校通えるといいな」

自嘲気味に僕は呟く。

僕の名前は(みさき(みどり)変わった色の目と髪をしているけど生まれも育ちも日本人だ。


この髪と目は隔世遺伝らしいと母さんから聞いている何でも曾祖母が北欧の人だったらしい。

見た感じ制服は似あってるんだけどねぇ・・・

心の中でそっとため息を吐く。


コンコンと部屋のドアがノックされる音が聞こえ、

「翠ちゃん入るわよー」

ガチャリとドアが開き、黒髪黒目の典型的な日本人の30代ぐらいの女性、僕の母親の桜子(さくらこが入ってくる。


「あらーこれから制服の試着かしら?」

ふんわりほわほわした雰囲気が広がる母さんの一言に、

「もう少ししたら始業式だしね、ちょっとね」

「似合ってるわねー、私も翠ちゃんの頃はね・・・」

と昔話に花を咲かせてしまう母に苦笑しつつそれは10分程度続いてしまった。


「母さん用事があったんじゃないの?」

と昔話に一区切りついたところで切り出す。


「そうそう引越しの片付けもそろそろ終わるでしょ?だからご近所さんにご挨拶にいこうかなーって思って」

両親の都合で引っ越してきて今日で3日目になる。


隣に一軒ある以外は少し離れているためご近所さんは隣の家をさすのかな。

「お隣さんのこと?」

と少し首を傾げる仕草をしながら答える

「うんうん、翠ちゃんを自慢しないとね~、大理石の様な綺麗な娘だもん」

「大理石??」

「今でも光ってるけど磨けば光るってことよ~」

とにこやかに説明する母さん・・・それは多分相手に伝わらないよ!

僕にもわからなかったしね!

母親の天然は今に始まったことじゃないけど苦笑しきりになる僕であった。


「でももうすぐ始業式なのね~、翠ちゃん一人で大丈夫?」

と笑顔から一転心配そうに見つめる母さん。


「うん・・・自信はちょっとまだないかな・・・・」

僕は少し俯いて答えるしかなかった。


僕には悲痛な過去があった。僕の生まれついた性別は男の子で黒髪の黒目の普通の男の子だった。


小学校6年の冬にお腹の痛みが治まらず血の混じった排泄物を見て錯乱して母親に飛びついたっけ。


「あらあらどうしたの~?」

といつものように答える母さんが現状を見たとたん

その後すぐに病院へ連れて行かれ、精密検査を受けたところ・・・。

僕はあれがついていたけど生まれながらは女の子で、卵巣や子宮はあるらしく将来子供を産むことができると言われた。


男のまま生きることも可能だけど子供は望めなくなるというと母さんに聞かされた。

「あきらちゃんの思うように決めたらいいわ」

後から駆けつけた父さんは母さんに同意するように頷いた。


当時の僕の名前は(あきら)漢字は同じで読みだけが違った。

いつもはふわふわしたような母さんが真面目に言った事は今でも覚えている。

「あきらは俺たちの子供だどちらを選んでもその事実は変わらない後悔だけはしないようにな」

内容が上手く飲み込めずにいた僕の頭を優しくなで、今までにないぐらい優しい口調で父さんが言った。


そして僕は女性として生きることを選んだ。


名前の変更は読みだけ変更して「みどり」にした。

母さんから名前の由来を聞いたときに結婚指輪がエメラルドでその和名「翠玉」から取ったと聞いた時からこの名前が大好きだったのでそのままを希望した。


その後学校は病欠ののまま卒業し、父さんの仕事の都合で引越し、一年間手術のリハビリや女の子というものに対しての勉強等に費やした。


呼び名にも、生活にも慣れてきたところで中学校へ入学することになった。

中学へ入学し、同じクラスの子たちと楽しく過ごしていたと思う1学期だけは・・・ね。


二学期の初日に夏休み中に僕が男子であったことを知った奴がいて僕のことを尾ひれを大幅につけて暴露した。

このせいで中学校にいけなくなってちょっとした人間不信? になって病院へしばらく通うことになった。


その頃から、僕の髪の色が毛根から今の色に変化して伸びてきた。

何かの病気かと思って検査をしたけど原因はわからず、

おそらく遺伝とショックによるものが原因だろうと結論付けられた。

その1年後に1回その2年後となる現在のこの家に至る。


「そういえば」

と僕が回想してる間に母さんが何かに気がついたよう言う

「そのままで通うわけじゃないんでしょう~?」

「これだと目立っちゃうからね・・・」

自分の前髪を一つまみして指で一本ずつほぐしながら答えた。

中学のあれ以来学校には行ってない。人が集中する場所すら怖くなってしまっていた。

僕の髪と瞳の色は日本人とはまったく似つかないものなので、目立つことこの上ない。

制服を洋服箪笥にしまい、自分の学習机に置いてあるウィッグスタンドから黒い塊をとり上げ。

自分の髪の上にならすように付け、コンタクトケースから黒のカラーコンタクトを取り出し装着する。

姿見を改めてみると黒目黒髪の日本人の少女が出来上がった。

2週間ほど前に高校へ通う為にと母さんと父さんが話し合ってそろえてくれたのだ。

「これ付けると不思議な安心感があるね」

母さんはうんうんと頷いて見せた。

「私と一緒に居るようなものだからね~、翠ちゃん可愛いわ~若い頃の私そっくりね~」

母さんそれは母親が娘にいうテンプレだよ。

という母さんの言葉通りこのウィッグの材料は母さんの髪そのものが使われている。


高校に通うためには僕の眼と髪の色を隠す必要があるだろうということで

「特注で作らせれば何とかなるだろう」

と父さんの言葉に母さんは

「私のじゃないと駄目なの翠ちゃんのストレスになり難いように私のじゃないと駄目なの!」

「しかし・・・それは逆に翠に気を背負わせてしまうんじゃないか?」

「学校に通ってる間ずっと身に付けるものなのだからお守りみたいなものになるはずなの!」

と普段ふわふわとした空気の母さんが反対をする父さんを圧倒したやりとりがあったのをウィッグを受け取る時に聞いた。


「さてと・・用意はいいかしら~?」

僕は頷き母さんと一緒にお隣への挨拶へ行くことになった。

誤字脱字等あればご指摘が頂ければと思います。

更新は不定期になると思いますが頑張っていこうと思います

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