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真面目な彼と出会い系

作者: ムライリカ

私が彼と出会ったのは出会い系のサイトでした。出会い系と聞くと、一般の方はあまり良い印象はもっていません。私もそうでした。登録してみても、メールを寄こしてくるのはみな怪しい人達ばかり。しつこい人は何回も同じメールを寄こしてきます。所詮無料の出会い系サイトなんてこんなもの……こんなサイトで真面目な出会いを見つけようとした私が馬鹿だった。そう思っていた矢先に、私は彼を見つけました。その彼は他の男共の迷惑メールの中に紛れ込んでいました。私は彼のプロフィールに載っていた写真が、私の好きなCDのジャケットだったからという理由で、初めて返信を送ったのだと思います。プロフィールによると、私の住む市の隣に彼は住んでおり、年も4つ程上だとわかりました。彼の書く文章はとても堅く、第一に真面目な方という印象を受けたのを覚えています。




私はそれから彼とメールを続けました。今までメールを寄こしてきていた男とは、明らかにタイプが違います。とても真面目すぎるのです。どうして彼はこのサイトに登録したのだろうという疑問まで持ちました。私はもしかしたら騙されているのかもしれない。真面目な文章を装って、彼は体目的で会うチャンスを窺っているのかもしれない。……しかし私の考えとは裏腹に、彼はいつまでたっても『会いましょう』とは送ってきませんでした。出会い系サイトなのにおかしな人です。とうとう私の方が我慢できなくて『どうして会おうとしないの?』と送ると、彼は『容姿に自信がないので言えませんでした』と書いて寄こしてきました。容姿なんて気にしないのに。ここまでメールをしてきて今更です。私は興味本位で彼と会ってみたくて、私の方からデートに誘いました。こういう事は男性の方から誘って欲しいのに。私は変な心境で、彼との待ち合わせ場所に行きました。




お互い顔を知らないので、当日会う時の特徴を教え合いました。私はスカートで行くと危険だと思い、ジーンズにポニーテールという格好で。彼の方はというと、手にトランプを持っているからすぐに分かるとのことです。私は初めて彼が冗談を言っているのかと思えば、改札口の向こう側でトランプを持った男の人がいます。その人は手持ち無沙汰の様に、トランプを器用に手で切っていました。私は本当に彼がトランプを持っていた事に驚きました。本当に変な人。



 

それから二人でデートを楽しみました。メールで思っていた時より堅い人ではなく、どちらかと言うと彼は陽気なお兄さんといった感じです。何故トランプを持っていたか聞くと、彼は趣味でカードマジックをしているからと答えました。途中で入ったカラオケ屋で、私は彼のマジックを見せてもらいました。趣味でやっているとはいえ、間近でマジックなど見た事のない私にとっては驚かされてばかりです。マジックをしているだけあって、爪がとても綺麗だったのが印象的でした。




最後に私達は、駅前の居酒屋で食事を取る事にしました。そこで彼は私に聞いてきました。君みたいな可愛い人が、何故出会い系をしているのかを。自分で言うのも何ですが、容姿には自信のある方でした。今まで知り合った男の人を、平気で騙したり、冷たくあしらった事もありました。私は悪い女です。最初は彼も騙そうとしていました。今まで知り合ってきた男の人は体目的ばかりで、気持ち悪い人ばかりでした。もう顔もみたくない人もいます。それでも私は寂しくて寂しくて、一度既婚男性と関係を持った事もありましたが、自分が惨めになっただけでした。体だけのSEXは悲しいだけです。気持ちまでは満たされません。そうだと知っていながらも私は、ふしだらな事にこの人に一度抱かれたいと思っていました。


「あなたこそ、どうしてあのサイトにいたの?メールも真面目だしおかしいじゃない」


ほろ酔いぐらいにと私は酒を煽ります。彼はそこそこ飲める人らしく、私と違って全然酔った様子は見られませんでした。彼はグラスを飲み終わった後、心が寂しかったからだと呟きました。私と同じです。話を聞いているうちに、私達はとても境遇が似ている事に気が付きました。どちらもまともに『恋愛』をしたことがなかったのです。私の方はお付き合いをしても男を見下しており、不満があるとすぐに縁を切っていたため、とても付き合っていたとは言い切れませんでした。彼の方はと言うと、好きな子と仲良くなっても『いいお友達』としか見てもらえなく、お付き合いも妥協されて仕方なくといったケースでした。私はますます彼に抱かれてみたいと思ってしまい、酔った勢いで彼に言ってみました。


「体が寂しくて仕方がないの……」

 

私がそう言うと、彼は終電に間に合わなくなるからと店を出るよう促しました。この体を拒否されたのは初めてでした。男はみんな体目的なのに。私は女にみられていないのだとショックを受けて、泣きまねをしてみました。つくづく嫌な女です。すると彼はこう言いました。君を抱くのは俺達の関係がはっきりしてからだと。それまで俺は指一つ君に触れないと。


「だったら……今から関係をつくっていけばいいじゃない」






こうして今、隣で無精ひげを生やして寝ているのがあの時の彼です。

不思議な事にあの日からもう一年が経とうとしていました。


人妻の告白風な感じで。

これは実話をだいぶ誇張したフィクションです。

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