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目を覚ますとそこは浜辺だった

雲一つない青空

穏やかな波音

どこまでも続く真っ白な砂浜

私はそこに寝ていた


「どこだここは・・・?」


私は砂を払い立ち上がった

海岸線はどこまでも続いているように見える

陸地はうすぼんやりとして遠くが見えず白い砂浜だけが広がっている

他には何もない

人も 動物も 植物も 何も


「私は・・・?」


自分を見てみれば 全裸だ

なぜか恥ずかしいとは思わなかった

とにかく私は―――

波打ち際を歩き出した

誰か―― 何か―― 見つかるんじゃないかと思って




白い砂浜に私の足跡だけができる

波がくるぶしを洗う

心地いい気分だ

今は夏だろうか?

しかし日差しは暑さを感じさせない




それから私はかなり歩いた

しかし風景は変わり映えしない

どこまでも続く白い浜辺、穏やかに打ち寄せる波、それだけだ

暑くも寒くもない、喉も乾かない、腹も減らない、何も変化がない―――

段々と私は気味が悪くなってきた



「誰か・・・誰かいないのかっ!?」


思わず私は叫んでいた


「どうしました?」


不意に返事があった

振り向くと砂浜に寝転がった男がいる

あんなとこに人がいただろうか?

私は不思議に思いながらもそいつに近寄った


「あ?! おまえは?!」


その男は全裸で顔は私にそっくりだ

いや体の特徴も私と同じように思える


「私はあなたですよ」


私の顔をしたそいつは薄い笑みを浮かべながら答えた


「何を言っている?! ここはどこだ?! おまえは何か知ってるのか?!」


私は自分でもみっともないほど取り乱しているようだった


「ここはあなたが望んだ世界ですよ」


そいつは寝ころんだまま答えた


「望んだ世界・・・? 私が? 私は・・・? 私は誰だ?!」


「あなたは――――――だった者です お忘れですか?」


「・・・???」


「あなたにとっては不要な記憶だったようですね」


そいつは薄い笑みを浮かべたまま答えた

嫌な予感がする

取り返しのつかない、後戻りのできない、そんな予感だ


「ここが・・・ 私の望んだ世界と言ったな どういう意味だ?」


「そのままの意味です あなたが望んだのは・・・

”争いもない 貧困もない 差別もない 永遠に穏やかな世界”」


「・・・! 私がおまえに望んだのか!それを!」


「はい」


そいつはにんまりと笑って答えた


「どうですかここは? 気に入りましたでしょうか?」


「ご希望通り 争いもない 貧困もない 差別もない そして永遠に・・・」


「不変です」


「馬鹿野郎! そうじゃないだろ!」


「一人きりでこんな世界にいてどうする?! 私はこんな世界 望んじゃいない!」


「戻せ! 元の世界に戻してくれ!」


私は怒りを爆発させてしまった

もしかするとこうなった責任は私にもあるのかもしれないのにだ

すると、そいつは笑みを消して立ち上がった


「おやおや それは残念です 私の理解不足だったようですね 誠に申し訳ありませんでした

では、残念ながら契約は無効ということでよろしいでしょうか?」


「・・・契約? よくわからないが 私を元の世界に戻してくれるならそれでいい・・・」


「わかりました」


「それでは ごきげんよう」


そいつは恭しくお辞儀をすると

薄笑いを浮かべながら指をパチリと鳴らした

私は意識が沈んでいくのを感じた

遠くであいつの笑い声が聞こえた気がした――――


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