7話 お披露目
「い、今なんと?」
僕は自分の耳を疑った。何か聞き間違いをしたのではないか。さっきまで浮き足立っていたから話を半分に聞いてなかったし、あり得ない話じゃない。
「ですから、王都に来て研究をして欲しいのです。我が国のために」
どうやら聞き間違いじゃなかったようだ。
…………え、聞き間違いじゃないの?
「う、嘘でしょ」
「嘘ではありません。まあ、爆裂魔法を拝見してから、にはなりますが」
ああ、そういえばそう言ってたっけ。
「な、なるほど。しかし、こんな雨の中やるのですか?」
「雨が降っていれば魔法は使えないのですか?」
「そういうわけじゃないけど。ただぬれるのが嫌だなあと」
突然、頭に鈍痛。何事かと見上げると、そこにはエリカの手があった。恐らくエリカに頭を小突かれたのだ。
「え、エリカ。いきなり何を」
「申し訳ありません、ハンスさん。フラム、こんな遠路はるばる来てくれてるんだし、せっかくの機会でもあるんだから、つべこべ言わず魔法をみせて差し上げなさいよ。もっと研究したかったんじゃないの?」
ごもっとも。ただそれはそうなんだけど、やっぱり雨はなあ。
「是非とも天才魔術師フラムさんの爆裂魔法をみてみたいものです」
「やりましょう」
「扱い安すぎよ、フラム」
エリカにちょっと毒を吐かれたが、仕方ないだろう。だって「魔法使い」じゃなく、「魔術師」って読んでくれたんだぞ? 魔術師って、魔法使いと違って、厳しい試験を突破し認定された人しか名乗れないのだ。国に数えるほどしかいないって話もある。さっき始めて褒められたってのもあるし、二つ返事してしまうのも仕方のないことなのだ。
「では早速。あの丘に行けば良いのですか?」
「いえ。あれから研究を重ねて射程を伸ばしまして、ここからでも安全な場所で爆発させることが出来ますよ」
「ぬれたくないだけじゃないの? 村に何かある事が無いようにしてよ?」
「も、勿論だって。僕も村がなくなったら嫌だし。本当に遠くへ打てるようになったんだってば」
「本当かしら」
「ふふふ。お二人とも、仲がよろしいのですね」
おっとしまった。お客さんがいるのにエリカと話しすぎてしまった。ぷいっと顔を背けてしまったエリカから、ハンスさんに視線を戻す。
「す、すみません」
「いえいえ。では、見せていただいても?」
「は、はい。こちらへどうぞ」
僕が立ち上がるのと同じタイミングで、ハンスさんも腰をあげる。そして一緒に、玄関から外に出た。
相変わらず、そとは土砂降りだ。出来れば濡れたくない。
ここから撃てると入ったけど、よく見たら割と爆破地点に出来るスペースがなかった。見える範囲だが、遠くにも家があるし。意外と村、広かったんだなあ。結構引きこもっているから気づかなかった。
そうだなあ、空にでも撃とうか。そうすれば誰か巻き込まれることもないだろう。
空を見上げると、重そうな黒い雲。アレを吹っ飛ばすイメージでいこう。爆心地を雲の中、いや雲のはるか上にイメージして。
「あの、フラムさん。空を見てボーッとしてないで、魔法を見せてください」
魔素をばらまいて、構造をいじって。ここをこうして、これがこうで………………
「あれ、聞こえなかったのですかな。フラムさん。フラムさーん」
「きた! 口を閉じて! 舌を噛みますよ!」
「えっ」
「フォイヤー!」
点火と同時に、頭上で大爆発が起こる。そして爆風が雲に穴を開け、少しだけ日の光が差した。
相当上空に打ち込んだはずなのに、窓がビリビリと震え、遅れて爆音が全身に響く。
そこから更に遅れて、舌を噛んで口から血を流しているハンスさんの悲鳴が村の外まで轟いた。




