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爆炎の魔術師  作者: 宇万殊儀知錦
プロローグ
4/7

4話 平和な日常

 遂に完成したというこの良き日にもかかわらず、村はいつもの日常であった。誰かが褒めてくれるわけでも、お祝いの雰囲気というわけでも無く、家業をやったり、狩りに出たり、昨日見たままの、いつもの村だ。まあ、別に褒められたくてやってたわけじゃないんだけど、少し寂しい。


 夢は叶ったが、研究は続く。そう考えると、別に僕の魔法への反応が何も無い日常というのもよいのかもしれない。油断するな、まだまだ頑張れるぞ、って言われてるようで。


 ああ、はやく研究の続きがしたい……。


「フラムに付き合って今日の予定が少し遅れたんだから、フラムも仕事手伝ってよ。どうせ暇でしょ?」


 と、ぼーっと物思いにふけっている僕の胸をエリカが指でつつく。


「びっくりしたぁ! わ、わかった、やるからつつかないで!」


「ほんと? やった!」


 命令するようにきつく言う割に承諾すると、エリカはなんだか嬉しそうだ。


 村に住む人々には、家ごとに色々仕事がある。エリカの家は酪農が主な仕事で、村の近くに牧場がある。因みに僕の家は、僕しか家にいないので特に仕事は無い。父は戦争で出兵したきり帰ってこず、母もどこかへ行ってしまった。そんなわけで同情を買い、仕事をさせられることも無く、エリカの両親にご飯を作って貰っている。僕としては研究ばっかりしてても怒られないので全然いいけど。でもちょっと罪悪感もあるから、たまに手伝いをするのだ。


「でもやることあるの?」


「沢山あるに決まってるでしょ。とりあえず牛舎の掃除からね」


「え、アレ掃除するの? 自分で言うのもアレだけど、僕相当なもやしっ子だよ? 体力持つ自信ないんだけど」


「情けないこと言わないでよ。一度行ったことは曲げちゃ駄目。手伝うって行ったんだから、しっかり手伝って貰うからね。ほら、うかうかしてたらお昼になっちゃうし、さっさといくわよ」


 今度はエリカが僕の手を強く引く。やっぱり嫌だと逃げるであろう僕を、行動に移される前から牽制しているみたいだ。


「朝サンドイッチ作ってあげたから、手伝ってくれたらお昼に一緒に食べましょ。いつもの木の下で」


「えっ」


 サンドイッチ? これは逃げるわけには行かなくなった。なんだか体の奥から力が湧いてくる。


「よし、行こう! 僕にかかれば掃除くらい一瞬さ!」


「急に元気になったわね。まあいいわ、行きましょ。道具持ってきて。私サンドイッチ取ってくるから」


 エリカがそう言い終わるよりも前に、僕は物置に向かってダッシュしていた。サンドイッチ! あれは美味しすぎるから逃すわけにはいかないんだ! と、物につられてしまった僕の脚力は、きっと爆裂魔法よりも爆発力があった。


 


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