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第一話 マズい

「なろう」……リニューアルおめでとうございます。

って、使い方がわかりにくく自爆中。


とりあえず再投稿……始めましての人、よろしくお願いします。

二章までは書き上げていますので随時更新します。


ブックマーク、評価を入れて頂いていた方、ほんとうにすみません。

内容も少しエログロを増やしますので勘弁してください笑


今後ともよろしくお願いします。

「まっっっず」



 言ってしまった。



「ジル! なんてはしたないことを! 妹たちがマネしたらどうするの!」


「「マッズマズ!」」



 時すでに遅し。

 あっという間に生意気な妹と根暗な弟は大仰にマネをしている。

 それを横目に、俺は本音が漏れてしまったスープに怒りをぶつけていた。


 転生した伯爵家の食卓は釘がうてそうな鈍器パンと、クズ野菜を塩のみでコトコト煮込んだ半透明のゆで汁が並んでいる。

 

 メシウマを期待した俺を……誰かこのパン(鈍器)で殴ってくれ。



「リディア! ジリウス! 二人ともやめないか!」


「「マッズマズったらマッズマズ!」」



 上座であきれながら叱る父。ため息をつく母と苦笑いの兄がむき合っている。

 この妹弟は会って三秒でわかるほど相当なクソガキだ。

 家族の空気を察すると、あきらかに俺も一味に入っているのは気のせいだろうか。


 クロスのないガタつく木製テーブル上のランタンは暗く、真鍮の燭台があるのに貴重なのかロウソクは刺さっていない。

 食堂と居間とラウンジが一つになったような普通の部屋にはヘタクソな一家の肖像画といびつな甲冑が飾ってあった。



 部屋自体がカビ臭いし、自室のベッドも酸っぱい匂いの時点で察すればよかった。

 ただ逆にこの異臭のおかげでクソマズい飯も無味に近く、なんとかガマンできるのは僥倖。

 今日だけなら。


 ちなみにトイレは恐ろしくて未だに済ませていない。

 

 念願の『異世界1泊2日の旅』は今のところ何ひとつ希望がかなっていないクソ旅行だ。

 あと半日しかない、いや半日もある、いやいや、今すぐに帰りたいんですけど。


 すべては今朝の目覚めから間違っていた。




◇◇◇


今朝



「―――ジル様、起きてください」



「……」


「起きられますか? 朝ですよ」


「……?」



 目を堅くつむる。頭が割れるように痛い。

 気分は最低だ。


 深い呼吸を数回すると大分マシになった。

 いよいよ思い切って目を開ける。


 若い女の子が俺を見つめていた。



「まだ顔色が悪いようですが……もう少し休まれますか?」


 赤面してしまうぐらい距離が近い。

 仰け反(のけぞ)るように顔を背けると自然と窓の外が目に入る。ゆがんだ窓ガラスの向こうは雲が重そうに続いていた。


 焦点が集まるような、どことなく自分の体のズレが修正されていく感覚に、奥底からじんわりとおおわれていく。


 上手くいったんだ……。

 

「お、起きるよ。起こしてくれるかな」


「はい、お手伝いします」



 思ったより冷たい彼女の手を借りて半身を起こす。

 よかった。思い通り(・・・・)に言葉も通じる。

 これが俺の声? ちょっと声が甲高くないか?



「あ、あーーーあーーーテステス」


「ジル様大丈夫ですか? 私はティナですよ」



 ふふふっふ。彼女がティナに俺がジル。

 

 ……あれ? 転生先はリチャードじゃなかったかな。

 ま、まぁ、とりあえず大成功だ! 俺は今、異世界にいる。うううっ!

  


「いせかいぃぃぃぃぃぃ! きたぁぁぁぁ! しゃーーーー!」


「やっぱりご体調は戻っていないようですね。お医者様に見てもらいますか?」

「元気だよ、どこもかしこもビンビンッ!」


 なかなかにとぼけ顔がいい。スタイルも申し分ないし、最高の眼福だ。

 異世界恒例の本物メイドとの熱いやり取り。

 ドジっ子風の垂れ目がそそり、はち切れんばかりに大きい胸はきっとおいしい肉を毎日食べているに違いない。


 おっと、異世界マニュアルでは第一接触者には細心の注意を払いつつ、敬意を示すよう書いてあったっけ。

 下手な言動や仕草ひとつで「あなたは一体だれ?!」なんて大騒ぎされたら大変だ。


 

「改めておはよう! 今日も清々しい曇り空だな」

「―――は、はい、おはようございます……ジ、ジル様?」



 たった一日の体験コース………世の男性は(うらや)み、女性ならドン引きされる様々なエロチートを大枚をはたき、これでもかってぐらい持ち込んでいる。


 最初で最後の異世界の旅、存分にハメを外してやるんだから!



「ん? 顔になんか付いているのか?」

「先ほどから涙が……まだ本調子じゃないみたいですね」


「い、いや、そんなことない。感極まっただけだ、大丈夫だよ」


 明日には日本に帰ることになっているし、早速街へ繰り出そうじゃないか! ティナちゃん案内よろしくぅ! 


 ん?


 ちらほらと見える俺の体、手足。なんか短くない?


 あれ? むむむ?

 

 まぁ、ちょっと違和感もあるが、最悪手足が短くても……ナニが元気であればそれでいい。

 ショタ属性、身長差プレイは好みではないがまぁガマンできる範囲だ。あまり思い悩んでも楽しめないぞ、俺。


 

 ベッドの脇に立ったままティナが持って来た服を被る。俺の頭は彼女の胸の下あたり。もしかしたらティナは巨人族なのかもしれない。様々な種族がいる説明を受けているし、想定内だ。

 現に彼女の双房は生唾を飲み込むレベルで暴力的大きさだ。


 ごわごわした麻の貫頭衣のような寝巻の上にもう一枚丈の長い黄ばんだリネンのようなワンピースを着るだけだ。腰ひもを結い、背中で結んでもらう。ファッションもへったくれもない。


 貧乏貴族だったかな……。


 半身ほどのぼやけた鏡を彼女は重そうに抱え、姿を映す。

 これが俺? 


 銀髪のチビ。ショートカットが似合う超絶美少年だった。


「ティ、ティナよ、ズボンをおくれ」


 膝丈のワンピースのような服が揺れる。

 「ジルくんって女装が似合うね」って言われそうなくらいかわいいじゃないか!


 ……でもなんで女の子のようなワンピースを着せるのだろうか。

 聞こえていないのかズボンを持ってこない。



「ティナさんや? 早くズボンを」


「え? お似合いですよ」

「お似合いじゃねーよ!!」


「え?」

「あっ!」


 落ち着け俺。なんで女装を強要するのか分からんが、このメイドの趣味なら強気で言わせてもらう。


「いいからズボンをもってきてよ!」


「……お、奥様から”らしい”恰好を、と厳命を受けていますのでご容赦ください」



「奥様? ……俺、結婚しているの?! マジかよ……聞いてないよ! 遊びにいけないじゃん!」


「え?」


 やばい。駄々洩れるこころの声でティナが訝しんでいる。

 存在は噛み合っているが会話が嚙み合っていない。


 確か説明では独身金持ち、門閥貴族リチャードって聞いたような気がしたが……。しかもこんな幼児体型だったかな。


 とっととジルくんの過去と異世界リンクを繋げないとバレる。

 だが肝心の異世界リンクが反応していない。とりあえず不用意な発言と会話は気を付け、深呼吸。

 

 定番の確認を急ごう。




「ステータス」



 俺は小声で例の言葉を呟いた。

 精神に埋め込んだエッジデバイスはなぜか反応しない。

 胸の中があたたかくなり、別の何かが動いた。


 名前 :ジリアン・ブライ(愛称ジル)

 生まれ:1688年生まれ 7歳(女)

 続柄 :アダム・ブライ伯爵の長女

 種族 :ヒューマン

 職業 :不詳

 状態 :混乱・興奮

 統 率:F

 武 力:E

 知 力:F

 内 政:F

 外 交:F

 魅 力:B

 魔 力:E

 スキル:男装/身体強化

 ギフト:不眠/鑑定/頑健

 性 格:短慮/軽率/鈍感



??



 ―――女? 女? まてまてまてぇぇぇい!

 ななななななな七歳?


「ななななんなな?!」


「ジル様?」


 俺は恐る恐る短い手を股間に伸ばしていく。

 男はいつでも触って安心したい生き物なのだ。決して他意はない。……ないじゃん。


「ない、ない! ない! 相棒がないぃぃぃ! あ“――――」

「ジル様、落ち着いてください!」


 長く苦しい適性検査や順応訓練を受け、高い金を払い、憧れの異世界にきたのだ。

 おおおおい! どういうことだ?

 

 女の身体、七歳で誰と何して遊ぶんだよ!

 俺はナニをつかってナニをしたいんだよ!



「おろろろろろ……遊べないいいいいいっ!」


「泣かないでください。今日はどなたとも遊ぶお約束はしておりませんよ」

「あああああ!! お約束すぎるぅぅ!」


 落ち着け、落ち着け、落ち着け俺よ。

 ぼんやり、うっすら、なんとなくジルちゃんの軌跡、記憶の断片が微量に流れ込んで……ってことがまったくないんだけど! ジルって誰よ?! 八方塞がりなんじゃ?



「七,七歳って精通してるよね……ティナ、そうと言って?!」

「……ジル様? セイツウってなんですか……やっぱり治ってないようですね、今日はもうお休みください」


 膝をついた俺をティナが後ろから抱きかかえた。

 そのまま強制力をもって布団に運ばれる。



「お倒れになって昨日の今日です。まだ体力は戻ってないのでしょうから安静になさってください。お館様にはちゃんと伝えておきますので」


 彼女は泣き崩れた俺の額に触れ、布団を肩まで掛けてくれた。



「七歳は成人? ねぇ、成人? 成人だよね?」


「ジル様はかわいいお嬢様ですよ。目を瞑って口を閉じている間は」



「……」



 俺は期せずして、とてもかわいいお嬢様に転生しちゃったようです。


あらためてみると恥ずかしさいっぱいです。

下手糞、誤字脱字、本当にすみません、随時修正します。


追記

皆様のお陰で処女作、完結することができました。

どうぞ最後まで「半笑いファンタジー」を楽しんでください。


今後の糧になりますのでぜひ評価をいただけたら幸いです。



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