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お題シリーズ3

人間から離れてしまった迷子の影

作者: リィズ・ブランディシュカ



 その人影は大きな迷路を歩いていく。


 たった一つきりで。


 本体は存在しない。


 その影は、人間から離れてしまった影だから。


 本体がどこにいるのかは分からない。


 だから、影は迷子になってしまった。


 しかしおそらく、本体は迷路から出たのだろう。


 本体は聡明だったからだ。


 それならば影も、はやくこの迷路から脱出して、本体にくっつかなければならない。


 そうしなければ、一つでは存在できない影は、じきに消滅してしまうだろう。


 影は焦っていた。


 いっその事、別の人間の影になろうかと思った事もあった。


 迷路の中で出会う人間の影に、なろうかと。


 影はいくつも持てるから。


 二つで存在する事もできるから。


 そうなる事も考えたのだ。


 それは人間にとってもメリットがあって。


 影を多く持つ事は、強くなる事でもあったから。

 

 だから。


 次の角、出会った人の影になろう。


 何度もそう思った。


 しかし。


 影はその人の影にはならなかった。


 ずっと本体だけを探していた。


 本体だけに会いたかった。


 影はどうしてそうするのか分からない。


 そうしなければならないという思いがとても強かったので、それが正しい事だと考えていた。


 それは、影が誰かに教えてもらったわけではない。


 自分で導き出した答えだった。


 やがて影は迷宮の出口を発見した。


 出口には、本体が立っていた。


 遠くにはいくつも影を従えた他の本体がいた。


 強くなって、炎をだしたり、水をだしたり、他の人から影を奪ったりしている。


 けれど、心は惹かれなかった。


 迷路の出口にいた本体は、「よく頑張ったね」とほほ笑んだ。


 影は、やはり自分は間違っていなかったのだと確信し、ほっとして本体にくっついた。


 これでもう影は消える事がないだろう。


 影と本体はずっと一緒。


 影の心は満たされていた。



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