第032話 事件に巻き込まれる❷ 〜 彩香 〜
まだ、その頃… 彩香は足をカタカタと苛々していた。
「 社長が来れないのなら、副社長はどうした!」
と叫んでいると…
「 君、そのナイフをしまいなさい。」
と副社長が受付の横の入り口から登場してきたのだ。
「 副社長にお話があります。」
「 なんだね? 」
「 ここに居る皆様には言いましたが、貴方の会社不正が横領してる金まだ会社の中にありますよね? 」
「 ・・・・・・・ 」言葉が詰まった副社長。
「 あるんですよね? 」
「 いや、証拠は何処にも無いよ? 」
「 会社にはそのお金はありません。その事は私が知ってます。」
「 なら、何処にあるのだね? 」
「 会社専用の銀行口座に… 」
「 ・・・・・それは違う。」
「 今、言葉詰まりましたね!嘘は行きませんよ! 」
それを聞いていた周りの人達も驚いていた。
“ 嘘だ!この会社が横領や不正する訳がない。”
“ まさか、銀行の口座に数億円の金額が入っているの? ”
“ そんな馬鹿な!だって、この会社は安定してていつもTOPクラスの車の会社だよ! ”
“ そんな事する訳ないだろ! ”
( ※この内容は警察に流れている事は誰も知らない )
「 もし、あったとしても… 貴方はこの会社に居たんですか? 」
「 ああ。居たとも… この会社の経理部に居ました。」
「 そしたら、この会社の今の経理部長、経理課長は御存知ですか? 」
「 いや、知らない。」
「 知らないんなら、この会社で働いていた事にはならないと思いますが… そうではありませんか? 」
「 私が居た時の経理部長、経理課長の名前は知ってます。お二人とも辞められた事も聞きましたし、その後飲みにも言ってます。」
「 なら、その方の名前は?」
「 鈴木○○部長に林○○課長。」
「 確かにその方はいらっしゃいましたね! 」
「 ちなみに、2人にも今回の件は話してあります。」
「 で、2人は何と? 」
「 なら、警察へ行ってみたら?と… 多分俺もそのような気してたんだよね?内部告発しようかなぁと思ったんだよね。と仰っていました。」
「 なるほど… そうですか。なら、証拠品は何処にあるんですか? 」
「 証拠は手元に持ってないが… 自宅に証拠となるUSBの中にある。」と言った。
その時、20代の男性が警察に電話を掛けていた。
「 もしもし、」と巡査部長の女性が受話器を取った。
「 翔さん。お電話繋がりました。」
「 誰からだ? 」
「 今、そこの会社の中に居られる男性とスピーカーにしてあります。」
「 大丈夫ですか? 」と翔はその男性に話した。
「 はい、大丈夫です。今からスピーカーにします。」
と言って、(※上記の内容)がスピーカーから聞こえた。
「 この人の住所分かる者は居るか? 」
「 今、調べます。」と30代男性警部が調べた。
「 神奈川県横浜市西区としか記入されていません。 」
「 みなとみらいって事か… 」
「 そうですね!高級住宅街が並んでいる所ですね!」
「 でも、何でそんな人がこんな事をするんですかね? 」
「 知らないなぁー。私に言われても… 」翔さんはそう答えた。
警察官達がその男の人の住所を探している時…
まだビルの中では話し合いが行われていた。
「 嘘じゃないって!」
「 なら、もし私の自宅から出て来たら認めるんですね。」
「 おう。」
『 副社長さん。ここは自首した方がよろしいんじゃないですか? 』
副社長はその男の隣にいる彩香さんを見て驚いた。
「 彩香(さ、さやか)さん? なんで此処に居るんですか? 」
『 人質としてこの人に連れられて来ました。』
「 そうなんですか… でも、私も知らないんですよね。その詳しい詳細が… 兄貴に聞いてみないと、」
『 お兄さんが社長さんなんですね… 』
「 いえ、兄貴は会長です。」
『 なら、貴方は? 』
「 私は三男です。次男が社長です。」
『 なるほど、三兄弟なんですね… 』
「 そう言う事です。」
「 そんな話は良いから、結局自首するんですか? 」
「 私に聞かないで下さい。」
その間… 警察では彼の自宅を特定した。
自宅の中にはこのビルの資料に計画案が置いてあった。
「 USBありました! 」と30代警部補が手を持った。
「 それを持って解析して! 」
「 分かりました。」と敬礼してその家を出た。
自宅の中には資料や計画案以外にも沢山の資料があった。
10年前に働いていた時に内部告発をした内容と同じ資料が机の上に置かれていた。
「 警部… ここに何年か前に内部告発の電話してきた事ありますか? 」
「 ん?どうだったかなぁー。覚えてないなあ! 」
「 その資料が纏めて机の上に置かれてあります。」
「 それ本当か! 」と警部は机の上にある資料をパラパラと見た。
数年前にこの車の会社で不正または不祥事を内部告発したのは彼だったのがここで分かったのだ。
内部告発の資料と警察の中に頑丈に保管されている資料と類似しているのだった。
「 USBの中は確認出来たのか!? 」
「 すいません… USBの中にパスワードがあって解除出来ないんです。」
「 パスワード入力するのにどれぐらい時間が掛かるのか? 」
「 今の所分かりません。」
「 分からないんだったら、鑑識とかサイバー犯罪対策室の人とかに頼め! 」
「 失礼しました! 」と警部補は敬礼し警察庁へ走って向かった。
『 あの、今頃… あなたの自宅を捜索してるんじゃないですかね? 』
「 彩香さん。なんでそう思うんですか? 」
『 いや、感です。今の時間帯もう警察が貴方の自宅を見つけて自宅の中を探し回ってるんじゃないですかね? 』
「 そうか… その方が有難い。行かなくて済むし。」
と外では数台のパトカーが止まっていた。
「 まだ、中に人質が居るのか? 」
「 ええ。まだ中に人質が居ます! 」
「 人質って誰なの? 」
「 あのGRT48グループの彩香さん。」
「 え?あの復帰報告した山本彩香ちゃん? 」
「 そうらしいよ! 」
「 ○○○○○○さん。聞こえますか? 」と40代の警部はEHV型のマイクを片手に持って会社の方に向けた。
外からはパトカー数台が見える。
「 聞こえるとも… 」40代男性は窓を開けて言った。
「 USBのパスワードの解除コードを教えて欲しい。 」
「 私の自宅を突き止めたのか!? 」
「 ああ!そうだ… 自宅の中の資料とか確認させて貰った。」
「 なら、解除パスワードの方法はその資料の中に隠れている。」
「 ヒント教えてくれ! 」と警部は大きい声で言った。
「 ヒントは言えない。自分達で探せ!爆弾とかは無いから安心しろ! 」
と彼は窓を閉めて、窓越しに彩香の腕を掴みながら座った。
『 ちょっと、腕痛いんですけど… 』
「 あ、ごめん。」と男の人は彩香の腕を軽くした。
「 あの、解除パスワードは資料の中に書いてあるとの事です。」と警部は電話で会議室に伝えた。
すると、社長からでは無く… 会長からの電話が鳴った。
「 もしもし、今なんかあったのか?今テレビ点けたら俺の会社が生放送されてるんだけど… 」
「 あ、会長(兄貴)。聞きたいんですが… うちの会社って横領とか不正とかありますか? 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・ 」と無言の会長。
「 ちょっと、兄貴。本当にあったんですか? 」
「 それは言えないな!なら、後はお前が頼む! 」
「 ちょっと… 兄貴! 」と言うと電話が切れた。
「 会長さんもやはり無言でしたね! 」
『 なんかあるんでしたら、正直に言った方が身の為ですよ!自首したら楽になりますよ! 』
「 だから、私知らないんだって! 」三男(=副社長は)頭を抱えた。
警察の鑑識では分からなく、解除方法のスペシャリスト3人のお陰でパスワードが解除出来た。
解除パスワードは { ○○○○○○○○○○○ }(※意味は不明。)
そのUSBの中は会社の不正に関する案件にその時の財務資料に賄賂の金額や高額な部品の半分の額の費用に横領金額が記載されていた。
「 USBのパスワード分かりました。」
「 中身はどうだった? 」
「 凄い事になってました! 」と20代の巡査長。
会議室に入って来たのは会計部所属の28歳の女性。
「 大体の予想はどれくらいだった? 」
「 はい。ざっと計算して4.5億は下らないかと。」
「 不正金額と横領金額も全て計算したのか? 」
「 はい。全て計算して… それぐらいでした! 」
「 分かった。」と翔さんは言った。
警察庁の会議室から、会社の受付に電話した。
「 はい、どなたでしょうか? 」
「 警察庁長官の坂下翔と言います。」
「 はい、御用件は何でしょうか? 」
「 副社長と代わって頂けますか? 」
「 分かりました。」と受付の女性。
「 副社長。警察庁長官の坂下翔さんって方からお電話がございます。」
『 あ、お兄さんだ! 』と小さい声で呟いた。
「 今、御時間ありますか? 」
「 はい、大丈夫です。警視総監が直々に何の用件でしょうか? 」
「 たった今、彼のパソコンに残っていた… 御宅の財務管理または不正に関して横領に関する事案が発見致しました。これはどうしたら良いでしょうか? 」
副社長は内線電話の受話器を耳に当て慌てた。
「 そんなはずはありません。それはお宅の間違いではありませんかね? 」
「 いや、私共も会計課の方にざっくりと計算して貰いました。そうすると…4.5億の金額が不正または横領のお金に… また銀行口座にも5億近くの不正なお金が入っている事が分かりました。どう対処致しましょうか? 」
( ※内線電話のスピーカーになっていたのをそこに居た会社の人に知られたのだ。 )
会社の中で仕事をしている人はテレビも見れないのでこの事を知らないのだ。
そう… 受付の30代女性がスピーカーのボタンを押していたからだ。
「 ちょっと… 君。スピーカーになってるじゃないか! 」
「 佐伯さん?って言ったかな? そのままで良い。」
とナイフを持った男性が止めた。
「 そこに居られるナイフを持ってる方。もうナイフを降ろして下さい。もう事件が解決されたんですから。でも、警察の事情聴取には受けて貰います。この罪は重いですからね… 」
「 分かりました。すいません!」とナイフを床に落とした。
30代前半の男性がそのナイフを足で止めた。
“ 副社長。貴方は知らなかったのですか? ”
“ 俺はもうこの会社で働けないのかぁ〜 ”
“ そうだ!貴方がしっかりしないとこの会社は終わりですよ! ”
“ って言っても、この会社は終わりで居れないけどね。 ”
“ もう、全国ニュースのトップで流れて後は全員退職って形じゃないか? ”
“ 多分… そうなるんじゃ無い? ” と周りに居た人達がそう言った。
「 すいません。知りませんでした! 」と泣き崩れた。
『 もう終わった事ですし、素直に警察庁へ行きましょう。私も一緒に行きますから! 』と彩香は彼に言った。