【 番外編 】彩香。卒業式と前日。
明日は彩香の大学院卒業式。
その前の話をしよう。
彩香の大学院経営学部の卒業式に向けて、
私と彩香は都内の高級な呉服屋さんに立ち寄った。
「 いらっしゃいませ! え!彩香さん? 」
女の(20代前半の新入社員)店員さんが彩香を見て驚いた。
呉服屋の女将は彩香の名前が聞こえて慌てて2階から降りてきた。
「 いらっしゃいませ!彩香さん。」
女将はきちっと背筋を伸ばして正座をし、彩香の方を見た。
「 今日はどういった用件で来られたんですか? 」
彩香は大学院の卒業式で着る為に試着しに来ましたと伝えた。
「 あ、そうなんですね!分かりました。
その大学院の卒業式は明日ですか?明後日ですか? 」
『 1週間後です。』
「 分かりました。なら、好きな着物を選んで下さい! 」と女将さんは色々な柄の着物が並んでいる所を案内した。
古典柄、花の柄、動物の柄、自然の柄、植物の柄、幾何学模様の6種類。
古典柄の中には… 鞠、薬玉、束ね熨斗、御所車に源氏車などなど幾つか。
花の柄は桜や菊、梅や牡丹、撫子など見た事のある柄。
動物の柄は鶴や亀、兎に、蝶に鯉と言った見た事ある動物に鴛鴦、鳳凰、蜻蛉と言った稀に見る動物の絵柄。
自然の柄は… 瑞雲や雲間、流水に観世水、ヱ霞に蓬莱山と聞いた事ない名前。
植物の柄は一般的に松や竹、楓や紅葉。
他にも葡萄や桐、橘、南天と難しい名前。
幾何学模様は彩香は何にも知らなくて…
私は知ってて… 麻の葉と青海波、鱗の3つ。
『 ねぇ?おじさん… どの柄が私に似合ってると思う? 』
彩香は私に尋ねてきた。
『 どれもカッコ良そうだけど… 彩香はどの柄が好きなのか? 』
彩香は迷いながらも… 5つ答えた。
“ 瑞雲… 鳳凰… 蓬莱山… あと鶴。鱗もカッコ良さそう ”
女将さんは5種類をご用意してくれた。
1つ着て確認するのに20分。それを5つで1時間掛かった。
『 私、鳳凰の柄にする! 』
と彩香は笑顔で私の方を見ながら言った。
女将さんも、そこに居た20代女の人も…
「 彩香さん。鳳凰と相性ピッタリですよ! 」
「 彩香さん!似合ってます!写真撮りたいほどお美しいです! 」
写真は駄目ですと彩香は眉をひそめて言った。
女将さんが呟いた。
「 彩香さんと貴方(=私)様はどういった御関係なんですか?付き合ってるとしたら、アイドルの規則に違反してますよね? 」
私は女将さんに親戚関係だと伝えた。
「 あ!そうなんですね!失礼致しました。」
彩香が着る予定の鳳凰柄の着物が途中だけど、仕上がったみたいだ。
彩香は女の店員さんから着物を着るように言われ、着た。
「 着物は結構重たいです。ですが… 軽くして欲しいとか、腕の長さを短くして欲しいとか要望があれば仰って下さい!」
彩香は普通に歩いていた。
重たさとかは感じていないが…
『 ちょっとだけ軽くお願い出来ますか?あと腕を1cm長めにして貰えますか?』と注文した。
「 分かりました。以上で確認を終わらせて頂きますね!仕上がりは卒業式までに間に合わせます。連絡先と住所、お名前を記入お願いします!」
と彩香に言われたので、
私が代わりに自分の名前と住所を記載した
「 龍雷神さんって、もしかして株式会社龍雷神グループの社長さんですか? 」
私は “ はい。そうです! ” と頷いた。
「 これはこれは、失礼致しました。
実は私の娘と息子が貴方様の会社で勤めております。今後とも宜しくお願い致します。」と名刺を渡された。
そして月日が経ち… 卒業式2日前に着物が届いた。
鳳凰柄の着物は私が見てもカッコ良かった。
綺麗と言うよりもカッコいいの方が強いかと…
彩香は記念に自分の着物姿を自撮りして、卒業式の時にTwitterで載っける準備をする為何十枚も自撮りした。
そして、卒業式前日。
来れたのが… 千夏と摩耶ちゃん。あと互いの母親の美和子さんと愛さんだった。
千夏も摩耶ちゃんも…
「 お姉ちゃん!カッコいい!! 」
「 彩香さん!カッコいいですよ! 」
『 千夏、摩耶ちゃん。綺麗ですは? 』
「 いや、綺麗ですと言うよりカッコいいの方がインパクト強いです。」
「 うん。姉ちゃん!綺麗は言えないなぁ〜 やっぱりカッコいいですよ! 」
千夏が家族のLINEに彩香の着物姿を載せていた。
翼さんも球児さんに翔さんも千恵美さんに将暉さんも…
“ 綺麗じゃなくカッコいい ” との返信が来た。
愛さんも…
「 私がアイドルの時だったら似合ってただろうなぁ〜 」
美和子さんも、彩香を見て…
「 私も、学生時代だったら似合ってたと思う。今はもうおばさんだから。私70過ぎてるんだよ?認知症も身体ぴんぴんでまだ動ける状態。でも彩香見てると学生時代に戻りたくなってきたわぁー!」
と母親同士は笑い合っていた。
「 そういえば… 彩香姉ちゃん。卒業式…だったよね?誰が行くの? 」と千夏が聞いてきた。
(彩香の)母の美和子さんが言った。
「 私、その日急に用事があって抜けれないんだよねぇ… 誰か代わりに言ってくれる人居ないかなぁ〜 」
と私の方を見た美和子さん。
愛さんが私に一言だけ言った。
「 卒業式の時… 彩香さんの事頼むね! 」
彩香もお願いしますね!と上から目線で私を見た。
卒業式当日…
彩香を車に乗せ、安田講堂に向かった。
彩香を降ろし… 私は駐車場に停めに言った。
すると40代男女の夫婦の人が声を掛けてきた。
「 龍雷神社長ですか!」
『 はい。そうですが… 貴方は? 』
「 当社(=私の会社)に勤めております。人事部に居ます。」
『 あ、遠藤さんですか? 』
「 そうです!遠藤司です!こちらは妻の未来です。 」
妻の未来さんは私にお辞儀をした。
「 今日はどうなさったんですか? 」
『 今日は従姉妹が卒業式で一緒に来てるんです。 』
「 あ、そうなんですね!ちなみにそれって彩香さんですか? 」
『 なんで知ってるんですか? 』
「 え?社内で何人か知ってますよ!社長と彩香さんとの関係を… 」
それを聞いていた未来さんは驚いた。
「 え?それってアイドルの山本彩香ちゃん? 」
司さんは妻の言葉に頷いた。
遠藤夫妻とお話をして、安田講堂に着いた。
だが…人数が多く、今世の中でこのような状況(=新型コロナウイルス)なので、彩香達の答辞や送辞など聞けず。
もうそろそろ良い時間になり…
彩香達が安田講堂から(遠藤夫妻の娘と一緒に)出て来た。
周りに居た人達も答辞をした彩香に驚いた。
“ まさか… 彩香ちゃんがあのGRT48のメンバーだったなんて。”
“ あの答辞をしていた彼女。GRT48の彩香ちゃんなの? ”
大学の時の医学部生時代に一緒に彩香の事を笑っていた人達も…
“ え?まさか、あれが人気アイドルグループGRT48の彩香ちゃん… 俺知らず知らずに笑っていたわ!謝れんかったわ ”
などと悔しがっていた。
経営学部の学長と私は(中学の)同級生。
「 黄金!久方ぶり… 何十年ぶりだ!? 」
『 おう!お前か!お前が経営学部の学長とは知らなかったよ! 』
「 あと、彩香ちゃんの卒業おめでとう! 」
『 ThankYou! 』
私は学長の髙田政宗と抱擁をした。
『 やっぱりおじさん達は友達だったんだ! 』
抱擁した状態で私は彩香を見て“ おう! ” と言った。
彩香の隣には(遠藤夫妻の娘)奏音ちゃん。
彼女は音楽学科でピアノを専攻している。世界のピアノコンクールで賞を取っている実力者。
今日の卒業式で偶々近くにいて仲良くなったのだ。
「 ねえねえ… お父さん。」
「 なんだ?奏音。」
「 彩香ちゃんと今度一緒に遊んでも良いかなぁ? 」
「 ん…… 困ったなぁ〜 彩香さんはアイドルもされてるから無理にしない方が良いんだが… 」
「 連絡先ももう貰っちゃったし! 」
と司さんは私の方を頭を掻いて見た。
『 大丈夫ですよ!私は… 親代わりみたいなものですし、一応、彩香の両親には伝えておきますから。』
それを聞いた奏音ちゃんは喜んで彩香とハイタッチをした。
「 すいません… 何から何まで。」
「 本当に、奏音が危ない所があるので… そこだけは気をつけたいんですけどね。」
『 あー。彩香も同じような感じですよ… 偶にドジしたりおっちょこちょいの所もありますから。』
『 ちょっとおじさん。余計な事ペラペラ喋らないの。』
と彩香はその言葉を遠い所から、聞こえていたのだ。
そして、お別れ… の時間がやってきた。
司「 また、会社で分からない事あるかもしれませんが、ご指導の程宜しくお願い致します。」
未来「 主人の事宜しくお願いしますね! 」とお辞儀。
私は彩香を呼んだ。
『 彩香行くぞー! 』
彩香は小走り… 奏音ちゃんの方に手を振った。
車に乗り… 家に着き… 彩香は着物を脱ぎ捨てた。
そして、シャワーを浴びて、ドライヤーで髪を乾かし寝巻になり、夕飯を食べずに… 横になった。
私もSUITSを脱ぎ、彩香の後に入った。
夕ご飯を軽く冷凍のご飯に卵を割り卵かけご飯にした。
そして、私は会社の仕事を少しやった後、寝室で横になった。