第008話 彩香、大学院生(1)
『 おはようございます。』
彩香は2階から髪の毛ぐちゃぐちゃ姿で降りて来た。
私は朝食を作っていた。現在7時を回った所……
『 学校って何時からやっけ?8時半?9時?』
『 9時… あーあー。』
彩香は大きな欠伸をして答えた。
『 総選挙1位のアイドルが大きいあくびをしてみっともない。』
『 もー!黄金さん。総選挙1位って言わないの!』
彩香の怒った顔が可愛かった。
『 今日から私達交際スタートやね笑』
と彩香は笑顔で私の方を見た。
『 早く… 髪の毛整えたり、さっさとして!』
彩香はシャワーに入り… 鼻歌を歌った。
30分後頭を乾かし、ドライヤーの後にアイロンを当てた。
今日の朝食は至って普通。
卵に醤油、白飯、海苔、冷奴、味噌汁、鮭。
一般的な家庭の食卓……
『 なんか、思ってたより違う。
いつも… オムライスとかフレンチトーストとか豪華な食事だと思ってた。意外です!』
『 今日は卵かけご飯。
この卵は我が社と提携してる養鶏場のもの。』
" いただきまーす! “ と彩香は手を合わせた。
卵かけご飯を口に入れた途端…
『 おじさん!美味しい。この卵甘さがあってクリーミー!もう一個欲しい。』と次々と口に運んでいった。
鮭も味噌汁も冷奴も全て完食。
彩香は出る準備をした。
勿論… 家を出る時はサングラスにマスクを付けた。
記者やカメラマンが家の周辺に居ると思ったので。
でも、流石にサングラスにマスクだと怪しまれるので私は彩香にサングラスを外し、帽子を被せた。
私の家から彩香が通ってる東大の大学院は車で1時間弱。
彩香のアパートからだと… 歩いて20分前後。
40分の誤差がある。彼女はいつもスタバのカフェ・オ・レを飲みながら学校に通っている。
彼女は珈琲が飲めないのだ。
珈琲と牛乳に砂糖を入れたのを毎日飲んでいる。
家を出る前も1年中欠かさず…
自前の珈琲豆と牛乳に砂糖を入れているのだ。
『 今日は飲む?カフェ・オ・レ。』
『 よく、私が毎朝飲む物知ってるね!
誰かから聞いたの?千恵美ちゃん?』
『 いや… お前の母から。』
『 ふーん。今日は良いや。学校でなんか買って飲む。』と彩香は私の方を見た。
外は晴天。雲は少し多い。車を走らせた。
1時間後… 東大の赤門近くのコンビニに到着。
『 今日、千夏ちゃん達と買物してくるから少し遅れるね!終わったら電話するね!』と……
私はコンビニに入り、カルビ肉のおにぎりとバナナオーレ。豚の角煮と豚饅を注文した。これは朝飯用。
昼飯は鶏そぼろに卵そぼろにインゲンの三色丼。
レジを通し… 車に乗った。
コンビニから私の会社までは1時間以上は掛かるので… 秘書に少し遅れると電話をした。
その頃、彩香は… 授業の休憩中だった。
ある1人の男の人が訪ねてきた。
『 彩香さん。次の握手会はいつですか?』
『 えーっとね……
2000年2月19日(土)の次の1ヶ月後かな?
ハッキリとした日付は分からない。ごめんね! 』
『 大丈夫ですよ!』と男の人は去ってった。
『 ねぇ彩香。アイドルと勉強の両立って大変じゃないの?私には無理だわ!』と奈緒子。
『 うん。アイドルと勉強もそうだけど…
女優業の仕事もこなしてるって凄い!』奈緒美。
奈緒子と奈緒美は双子の姉妹。
私の小学生と高校、大学時代をよく知る親友。
『 そうかなぁ!楽しいよ!』
『 羨ましい… 楽しいって事が信じられない!』
『 それに頭も優秀だし… 』奈緒美が言った。
『 それに美人だしスタイルも良い。』奈緒子も…
『 そうかなぁ笑』と彩香は笑った。
その後に、女の子2人組。
『 昨日、握手会行ったんですが… 居なかったです。』
『 私も昨日行きました。居ませんでしたよ!』と。
『 昨日は出番じゃなかったのね。予定とか見たの?』
彼女達はアイドルサイトを見ると彩香の日程は土曜日になっていた。
『 ごめんなさい… 見てませんでした。』
『 私も昨日ばかりだと思い込んでました!ごめんなさい。』
『 いいよ!来れなかったんなら今ここで握手してあげるね!』
『 ありがとうございます!』
『 ありがとうございます!いつも応援してます。』
と言って帰ってた。
『 なぁ… だるいって思った事ある?
アイドル活動辞めたいって思った?』
『 んー… 全然かな。辞めたいと思わないし、』
『 へぇーそうなんだ。』と奈緒子さんは呟いた。
授業開始のベルが鳴り、それぞれの教室へ向かった。
10時過ぎに会社の駐車場に到着。
黄金はその場で朝食を取り… エレベーターに乗った。
その時に男の人が言った。
『 先日は、失礼な事を言って申し訳ありません。』
そう20代経理部の男性は私に深く頭を下げてきた。
『 あ、大丈夫ですよ!』
社長室に入ると… 秘書2人が座っていた。
稔さんは資料を渡し…
遥さんは今日の予定を読み上げた。
私は2人に午後からは一人で仕事するから午前中に出来る事片付けておいてと伝えた。
稔さんは…
『 私も午後から帰ってもやる事がないので、会社に居ます。』
遥さんも…
『 私も、何もやる事がありません。入社して1年弱になります。弊社の事をあまり知らないので、勉強してきます。』
私は2人も残るのなら、やって欲しい事を言った。
『 もう一回手帳確認させて!』と遥さんに言った。
遥さんから手帳を貰い…
見ると以前と違って字が綺麗だった。
私は今日の予定をメモに書いて返した。
稔さんには私が以前(2.3年前)から取り組んでいたアイドル事業の資料を稔さんに渡した。
それを受け取った稔さん…
『 ん?アイドル事業も始められるのですか!
一体、幾つ事業を作るつもりですか?
どれか辞めないんですか?社員たちも大変ですよ!』
『 まぁ、そうやけど… なんか新しいもの作りたくなるんだよね笑 なんでだろう… 』と私は頭を掻きながら笑った。
『 一旦は区切り付けた方が宜しくかと… 』と稔さんはそう言って部屋を出た。
遥さんも慌てて… 私にお辞儀をして退出した。