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私の物語  作者: UMI
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朝日

白んだ空に鳥のさえずりが軽やかに流れるが、もう聞き飽きたセミの大合唱がそれを引き裂き始める

快晴ではないけれど、空に薄くかかった雲は風に揺れるレースカーテンのように白くて綺麗で、特に何の変哲もない朝にしては過ごしやすいだろうと感じる

真夏だ

早朝でもじわりと汗ばむなか、私は起きていた

寝不足の頭でそんな外の様子を切り取った窓を眺め思う

今日も死にたいな


私の部屋は2階にあって、窓のすぐ側には緑が迫っている

今は荒れ放題の庭に植えられた木が、手入れをしていた主亡き後も元気に葉を伸ばして生命を主張している

例えば齢70になる藤ノ木

幹は重力に逆らい上に向かって伸びたが、所々向こう側が見えるほど隙間が出来ている

そんな姿になっても毎年毎年目新しいツル先を軒先に伸ばし、母屋と離れを繋ぐ電線に巻きつこうとする

テラスの屋根は骨組み以外は藤ノ木でできているほど葉を茂らせている

私はこの木が好きだ

当たり前のように毎年ツルを伸ばして葉を茂らせ、藤の花を咲かせる

細くなった幹に見合わず、元気で健康なおばあちゃんだ

亡き主の祖母が大切にしていた木でもある

その木や庭の植物でさえ、私には眩しくて愛でる勇気も出ない

その生命でさえ同じもののはずなのに私は捨てようとしているから


朝は苦手だ

生命が一斉に夜の眠りから目覚めて主張し始める

太陽でさえそうだ

めいっぱいこの時を生きようとしている

明るくて眩しくて、クラクラする

寝不足も相まって大抵午前中は微睡んでいる

明るい世界から目を逸らしたくなる


死にたいと思っても飛び降りとかはしない

一緒に住んでいる両親に迷惑がかかるから

葬儀代、火葬代、役所の手続き諸々考えていたらとてもそんな安易な自殺はしようと思えない

流行っている人身事故もそうだ

あれは営業妨害として、被害によっては数千万円遺族が払っていかなければならなくなる

自分が楽になりたい一心で死んでも、家族に迷惑かかれば死んでも死にきれない

自殺は、しない

私は家族が大好きだから

そしてどうしようもなく毎日死にたいと思いながら、死んだように暮らしているのだ

生きるとはなんだったのか、もうそれさえ分からなくなってしまった

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