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第10話 開拓村の未来は大きく

 はい。問題なく指定の荷物を予定地まで運ぶことができました。

 その後、現地の兵に指示されて別の物資を持ち帰っております。その物資は兵舎入り口の係官に提出済みです。

 はい。道中には魔獣の姿もなく、とくに異常は確認しておりません。


 報告は以上になります。

 よろしいでしょうか。

 はっ。それでは失礼いたします。


 ……。

 

 ふひー。

 終わった終わった。

 いやー、さすがに腹減ったなぁ。部屋へ戻る前に食堂へ行っちゃおうかなー。


 おや、あなたは。

 こんなところでどうしました?


 最初に言う言葉が違う?

 あー。はい。

 それもそうですね。すみません。


 改めまして。

 ただいま戻りました。


 ふふふ。

 いえ、失礼しました。

 お帰りなさいと言われたのって、けっこう久しぶりだったもので。


 ええ。単独行動訓練は問題なく完了ですよ。

 無事ゴールインってやつです。

 むしろ順調すぎて、予定より少し早く到着したくらいですね。


 そちらはどうでしたか?

 いつもと同じ?

 もう今日の農作業は終わったと。


 それじゃ一緒に食事でもどうです?

 もうそろそろ食堂も夕食を出す頃合いでしょう。

 お? 夕食に、さっき収穫したばっかりの野菜が出る? それは期待できそうですね。


 いやー。実は野菜ってわりと苦手だったんですよ自分。

 とくにこの開拓地に来たばかりの頃だと、野菜といったら保存用の塩漬けや酢漬けのものばっかりでしてね。

 これがまたマズいんですよ。歯ごたえが微妙で、臭いがやたら強くて、味がずっと口の中に残って。


 でも、最近ここの食堂で出る野菜はおいしいですね。印象がだいぶ変わりました。

 採れたての野菜って味が全然違いますよねー。


 あ。

 食堂の列、けっこう長いですね。これはしばらく待たされそうです。

 ま、しょうがない。並びましょう。


 しかし、思えばこの村もけっこうしっかりしてきましたね。

 この場所に来たばっかりの時は、木と草と岩、あと湧き水くらいしかありませんでしたから。

 まあ、未開の土地ですから当たり前なんですけど。


 あの頃の食事は、補給物資の保存食が中心だったんです。

 周囲で狩った魔獣や動物の肉とかも食えましたが、毎日ってわけじゃありません。

 小さな畑は作ったんですが、すぐに作物が採れるわけではありませんからねー。


 あの時はいろいろとトラブルもあって先が見えない状態でしたが、いつの間にかしっかりした畑に防壁もできて、家も建ちつつあります。

 武具の整備や食糧の自給自足もできるようになってきました。

 もうだいぶゴールラインが近づいてきてますかねぇ。


 え。まだまだこれから?

 開墾予定の土地もいっぱいあるし、自由に入れる建物は寝床にしてる宿舎くらいでお店もなにもない。

 スタートラインに立ったばっかり?


 ははは。まぁそう言われればそうかもしれませんね。

 自分はどうしても兵士目線で見てしまいますが、住民としてはまだまだこれからですか。


 そうですねー。興味本位でお聞きしますが。

 開拓民の皆さん的に、この開拓村のゴールラインってどのへんになるんですかね?

 自分ら開拓騎士団の兵士としては、所属する開拓地の安全を確保することがひとまずのゴールラインになるわけですけども。


 ふむふむ。

 家があって、自分の畑があって、お腹いっぱい食べられて。

 井戸から水を汲んだり。風車や水車で作物を加工したり。

 牧場で動物を世話したり。


 あとは娯楽?

 広場を散歩したり、川で水遊びとか。

 たまに買い物できて、行商人や旅芸人から村の外の話を聞けて。

 あー。お祭り。収穫祭とか。

 いいですねぇ、そういうのも。


 ……いやでも。冷静に考えると。

 そこまでいくと、開拓村を通り越してけっこう大きな町レベルになりますよね。

 さすがにゴールが遠くないですか?


 それくらいないと面白くない?

 せっかく広い開拓地にまで来たんだし、夢は大きくないと?

 なるほど。そういう考え方もありですか。


 いやー。兵士として現場に立ってると、ついつい目先の安全を追ってしまいましてね。

 どうも考え方が小さくなってしまうのです。


 え? 前に言われた? 自分に?

 この村で過ごす楽しみを増やしていこうと?

 あーあー。そんなようなことも言いましたっけね。

 あの時は、そこまで深く考えてはいませんでしたが……。


 でも、そうですね。

 この開拓地でやっていくのなら、少しくらい欲張ってもいいのかもしれません。

 せっかく、広大な未知の土地に来てるわけですから、ね。


 お。ようやく食堂の受け取り口まで列が進みましたね。

 それじゃ、さっそく欲張ってみようかな。

 へっへへ。


 すいませーん。

 自分の夕食、特盛りでお願いします!


「しんせつ兵士さんとのんびり村人さん」本編はここまでとなります。

 お読みいただき、ありがとうございました。

 次話は本作品を書いた経緯や裏設定を語る「あとがきと解説」になります。


 本作品は、作者の別作品『欠けた騎士との開拓録 ~竜騎士ですが竜が女の子でした~』の外伝です。

 この開拓村を舞台にした騎士たちの物語、ぜひ下部リンクから本編をご覧ください。

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