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ご免なさい 僕は普通の人間なんです。   最終回

僕はボランティアとして山崎の面倒を積極的にみた。

頭痛で頭を抱える山崎のためにゴミ出しの手伝いや、買い物の手伝い、

いつしか部屋の掃除や、食事を作ってやったり、静かにしてくれと近所の家に頼みに行ったりするまでになっていた。

その日僕はいつものように、山崎の部屋の掃除をしていた。

山崎は騒音耳鳴り防止のため、いつも耳栓をしている、百円ショップで買ったものからドイツ製のものまで部屋のあっちこっちにカラフルな色の耳栓が散乱していた、それをいちいち拾って、クッキー缶にかたずけるのは日課になっていた。


机の下に落ちていた黒い耳栓を拾い上げた時、

やけに重いのに気づいた、同じ形で色も同一だが、何かが違う。

耳に付けてみると、何か違和感がある、後から考えてみるとその時いじっている間にスイッチを入れたのだろう。

ロシア語が聞こえて来た、またいじっていると、

朝鮮語が聞こえて来た、耳栓そっくりなイアホンだった。

僕は何か気持ち悪い嫌な予感がしたのでその耳栓は拾わずに元の場所に置いた。

山崎は帰って来るなり、机の辺りで耳栓を探し始めた。

黙って見ていると、焦っているようだった。

やっと机の下に在るのを見つけて、すぐに耳に付けた、そして少しいじり、耳に手をやり、安心した様子だった。


この頃僕は週に一度、隣の部屋の山田よりこの毎日の生活報告で、警察に出向いていた。

簡単な報告書一枚に日別に行動を記入するだけで、一万円の協力金がもらえた。

僕には有難い収入に成っていた。

ほとんど変わりは無い生活記録なのだが、ある日山田よりこが山崎の洗濯物を洗っているのを報告すると、オーっと声を出し、ビックリされたことがあった。

山田よりことは関係ないが、耳栓型のイヤホンの話とロシア語、朝鮮語の話をすると、

刑事たちが集まり、一気に緊迫した空気になりビックリした。

明日山崎の頭髪を何本でもいいから、持ってくるように言われた。

次の日頭髪を二本渡すと、なぜか三万円の協力金をくれた。

僕はウキウキしてアパートに戻った。

その夜警察からショートメールがあり

「明日の朝は五時半に起きるように」

と連絡があった。

その夜は静かだった。

朝、失敗した寝坊してしまった。

六時にヘリコプターの騒音で目が覚めた。

朝からうるさいなと独り言が出ると同時に、

階下の山崎の部屋からドタドタと音がし、大声で

「こんちきしょー」

と山崎の怒鳴り声が聞こえて来た。

そしてパーンパーンと言う乾いた銃声がした。

台所の小窓を少し開けると、アパートの前に機動隊の装甲車が止まっていた。

武装した機動隊員と、ネクタイの似合わないサラリーマン風の私服刑事たちが五人いた。

どうやら山崎の部屋に踏み込んだが、山崎が拳銃で抵抗し籠城したようだった。

同時に隣の部屋からガタガタと大きい音がした。

見ると腰の曲がっているはずの、山田よりこが、腰を伸ばしたすくっとした姿で、

肩に筒状のロケット砲を担いで、何か大声で叫び、機動隊の装甲車に一発、発射した。

装甲車は白煙を立てて大爆発し火の手が上がった。

山田よりこは、ロケット弾を装填して上空のヘリにも発射した。

ヘリも炎に包まれ墜落した。

けたたましくサイレンの音がした。

山田よりこがそのサイレンの音より通る声で

「サリンを撒くぞ」

と言って大型の買い物バックを高々と掲げて威嚇した。

反対隣の高山の部屋の台所の窓ガラスが割られて、機関銃が乱射された。

「みんな殺してやる」

明らかに高山の声だった。

次の瞬間パーンパーンと銃声がした。

山田よりこが、バッタリと倒れた。狙撃されたのだ。高山は狂ったように機関銃を打ちまくっている。

僕は身を小さくして震えていた。

突然、天井が破れた、武装した立花しおりが下りて来た。

「助かった」

僕が発すと立花しおりが、僕を抱えるようにして、二階の裏窓から、合図すると、救出のはしご車が来た。

僕は何とか警察に保護された。

山崎も高山も機動隊の強行突入で、射殺された。

山崎は、ハイジャック事件を起こした犯人で、国際指名手配されていた。

しかしスパイとして日本に戻り諜報活動と反社団体への資金提供をしていたそうだ。

高山もその仲間で高山の部屋からは大量のヘロインが出て来たそうだ。

山田よりこは武器係でテロ工作を支援していたそうだ。

不動産屋の社長は、服毒自殺した。

山崎の部屋から出て来た、暗号、書類、電子機器、は後に起こる半島危機防止に大変な貢献をしたそうだ。


僕は今、コンビニで働ている。

普通の生活をしている。

先日、通訳付きの国際電話があった。

トランポリン大統領と名乗る男からだった。

ご免なさい、僕は普通の‥‥

僕から電話を切った。  

            終わり。

                   




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