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最弱零鉄の使い手  作者: 綾地才人
59/80

一章 五十九話『決闘』当日 帰路と女の戦い

五十九話目です。

一章も残すところあとわずかとなりました、もう少しお付き合い下さい。

さて、続く二章に関して皆さんにご報告があります。

話の基盤は出来てはいるのですがもう少し内容を詰めていきたいので投稿が一旦ストップすることになりそうです。

現在の考えでは、一章終了から約一週間お休みを頂いた後に二章の投稿を再開させるつもりでいます。


それでは今話もよろしくお願いいたします。

デムジが観客席を攻撃して十分後。

完全に意識を失ったデムジが教師と医者達に拘束され連れて行かれる。


「デムジ・・・」


アランは連れて行かれるデムジを無表情のまま見つめる。

これからデムジは治療を行いながら、騎士団からの聴取を受けることになるだろう。我を忘れていたとはいえ多くの観客達を殺そうとしたのだ、今までのように力でどうこうすることは絶対に出来はしない。

さらにこの『決闘』にアランが勝利したことにより、『決闘』ルールでアランが賭けていた¨フレアがデムジを殺しかけたことをなかったことにする¨は確定し、逆にデムジが賭けた¨アランを奴隷扱いしたことをなかったことにする¨は無効となった。


先程学園側から正式に『決闘』の勝者がアランであると発表された為、もうこの勝敗が覆ることはない。

たとえデムジの今日の行動が罪に問われることが無かったとしても、アランがデムジに奴隷扱いを受けたと騎士団に報告すれば、ファーネリア王国の法によってデムジは極刑となり殺される。


アランが騎士団への報告をしなければデムジの命は助かるかもしれないが、それをするつもりはアランにはない。

これまで改心する機会はデムジには何度もあったはず、それをことごとく無駄にしてきたデムジの自業自得でしかない。


「アランッ!!やったわね!!」


「アラン君、いい戦いだったよ。勝利おめでとう!!」


観客席からフレアとソフィアの労いの言葉が飛んでくる、アランはそれに手を上げて答えるのがやっとだった。

戦っている最中は気にはならなかったが、『決闘』が終わった今は緊張の糸が切れ重度の疲労が体を包み込んでいた。早く家に帰りたい、早く眠りたい、と体から催促を受けているようだ。


「先生・・・すいませんが、もう立っているのも辛いので舞台から下がってもいいでしょうか?」


アランが審判にそう話すと審判は「分かった」と言って再度アランの勝利の宣言をした後、アランを舞台から降りさせる。アランが舞台から降りて舞台袖に消えるまで、多くの観客達がフレアやソフィアと同じように労いの声援をアランにかけていたが、当のアランは意識を割く余裕はなかった。



舞台を後にしたアランは、闘技場内の廊下を出口に向かって進んでいた。

普通に立って歩くことも辛い中、壁に手を付いてゆっくりと歩く。そんな中フレアとソフィアが正面から走って来た。

アランに近づくと二人でアランを支え、傍に備え付けられている椅子へ座らせる。


「やっぱり・・・アランの事だからもう立っているのも限界なんじゃないかって、慌てて来てみたけど正解だったわね」


「まぁ、あれだけ凄い戦いをしたんだから当然と言えますが・・・無理しすぎです。もっと自身の体を労わって下さい」


「あ、ああ・・・ありがとう、二人とも」


そう言ってアランを心配し声を掛ける二人だが、それぞれ目線はアランではなく一緒に来たもう一人へと向いていた。

どうやら二人の間で何かあったらしい、互いに見つめあって火花を散らす彼女たちをアランは止めることなく見守る。

アランは子供の頃から父ケインによく聞かされていた、「もし女同士が視線で火花を散らす場面に巻き込まれたなら、男は黙って成行きを見守れ、さもないと殺させる・・・」と。

昔父親に何があったのかは知らないが、真面目な顔でそう話すケインをアランは見てきていたのでそれに従うことにした。


「ねぇ?アラン?」   「それで?アラン君?」


二人の顔がその言葉と共にアランに向けられる、二人の顔は凄い良い笑顔だった。

だが何故だろう?その笑顔を見てアランは背筋が凍りつくような感覚を覚える。


「あ、はい・・・」


「「この子とはどういった関係なの?!」」


「・・・え?」


二人の問い詰めにアランは慎重に言葉を選んで答えていく。アランとって笑顔の二人に話をしている時間は、ある意味デムジとの戦い以上に辛いものを感じた。


二人がある程度納得するまでそんな状況は続き、その後二人に支えられながら孤児院内の自室まで戻ってきたアランはベットに倒れ込む。

疲労で限界を迎えた体が一気に眠気に襲われる。それに逆らう気力も既になく、アランは目を閉じ眠りについた。



アランを孤児院へと送り届けた後、フレアとソフィアは揃って帰路についていた。

互いのことはアランから既に聞いていて名前等は知っていたが、気を許せる相手と油断は出来そうにない。

男のアランは気づいていなそうだったが、女である二人はお互いの顔を見て何を考えているのかはある程度分かってしまった。

それが好きな男性に関わることならなおさらだ。


「・・・ソフィアさん、だったわね?改めて自己紹介を、私はフレア・アーネスト。アランとは幼いころからの知り合いで、彼の特訓によく付き合っているわ。よろしくね」


フレアからの軽いジャブ、それをソフィアは笑顔でひらりと躱し同じように軽めの攻撃に出る。


「・・・よろしくお願いしますフレアさん、私の名前はソフィア。ソフィア・アスク・ライフィール、ライフィール王国からやって来ました。私はアラン君のお母さまと知り合いでして、彼のことは昔からよく話を聞かされてきました。」


「「・・・・・」」


互いに相手を牽制しながら別れ道までやって来ると、一旦そこで向き合って足を止める。


「・・・負けないから!」


「・・・その言葉、そのままお返しします!」


夜風が吹く中、男を賭けた女の戦いがそこにはあった。

その戦いは静かに、だが熱く二人の中で繰り広げられる。

けれど今日はここまで。互いにアランを想っているからこそ譲れない想いもあるし、アランを想っているからこそ共感できることも多い。

二人の片手が同時に動き握手をする。


「これからよろしくね、ソフィア」


「ええ、よろしくお願いします。フレアさん」


そう言って別れ、二人はそれぞれの帰路を進む。

これから先、彼女達に振り回され日々を送る事になるのをベットで寝ているアランは知る余地もなかった。







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