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最弱零鉄の使い手  作者: 綾地才人
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一章 五十七話『決闘』当日 決着

五十七話目です。

ちょっと今話で勝敗を付けたかったので少し話の流れが早めです、『決闘』のお話はあと二程続く予定です。

それと次話の投稿が遅れるかもしれませんのでご了承ください。

それでは今話もよろしくお願いいたします。

浮遊するアランがデムジを見つめる、同じようにデムジも観客も浮遊するアランを見上げそして黙り込む。

この『決闘』中デムジも観客もアランには心底驚かせてきたが、これはありえない・・・人が宙に浮くなんて。

誰もが一度は夢見る空中を飛ぶ行為をアランが今行っている。皆が茫然としている中でアランは空を縦横無尽に移動し飛び回る、間違いなくアランは自身の力で空を飛んでいる。

そのアランの両足それぞれに蒼炎のリボンのようなものが巻き付き、踵部分から背の蒼翼と似たような羽根が出ていた。背の翼が四枚に減っているのことをみると、二枚分の翼を変化させたのだろう。


アランは空を自由に動けることを確認すると、自身の両足を確認する。

炎魔開放(リリースフレイム) 炎飛翼具現(ウイング・エンレッグ)

背中に翼として蓄えた魔力を二枚分使って一定時間空を飛ぶ魔法。人一人を飛ばせることに翼二枚分の全魔力を使っている為、この魔法そのもので攻撃をすることは一切できないが、それでも使用するだけでアランの戦い方の幅を大きく広げるだけのスペックがある魔法だ。

地上戦では攻防どちらにおいても平面状での戦いをせざるを得ない、だがそこに空中という行動範囲が増えることで立体的な戦いができるようになる。デムジが空を飛ぶことができない以上、この差は勝敗に大きく影響してくる。


(とはいえ、俺自身空中戦はこれが初体験・・・あまり急な動きは上手く出来そうにないな)


しかも空中にいる間、どうしてもこの魔法に意識を割かないとならない為、下手な攻撃を仕掛けて躱されようものなら反撃を喰らうのはほぼ確実。飛んでいられる時間もそう長くない、まだ四枚の蒼翼がストックされてはいるが時間切れで地上に降りればそこをデムジに攻撃されて終わりだ。


(なら一気に勝負を決めにいくしかない!!)


デムジは未だにアランを見上げ立ち尽くている。

浮遊しているアランに対し攻撃する術をデムジが持っていない今なら、発動まで時間がかかる魔法もノーリスクで使用できる。


炎魔開放(リリースフレイム) 前方照射(バーストカノン)!!」


アランの背中の蒼翼が更に二枚減り、二枚分の魔力が刀へと送られる。赤白かった刀身が蒼色に変わり峰部分から蒼炎が噴き出る。

この魔法は魔熊と戦った時にも使用し勝利を掴んだ攻撃、勝負を決めるだけの威力は間違いなくある。

しかも今回は以前よりも魔力を多めに使っている、消費した翼の数は同じだが魔熊とデムジの魔法では後者の魔法を取り込んだ今の方が圧倒的に上。故にその分威力も上がっている。


「ひっ・・・ひぃぃ!!」


デムジが恐怖で悲鳴をあげてたじろぐ、そんな彼にアランは魔法を放った。

熱風でデムジを吹き飛ばし、その後蒼炎がデムジを包み込む。

蒼炎はデムジを飲み込んだまま闘技場の壁へとぶつかると、行き場を失った蒼炎がまるで津波のように舞台を飲み込み空に向かって立ち昇る。

闘技場が蒼に染まる、時間にすればわずか数秒の出来事だ。

デムジを飲み込んだ蒼炎はすぐに消え去り、静寂が闘技場を包み込む。


「ぐっ・・・うぅ」


デムジがうめき声を上げる。

あれだけ強力な蒼炎に焼かれながらデムジは生きていた。

蒼炎で焼かれたとはいえほんの数秒のこと、命を落とすまでには至らなかった。だが、もうデムジの体は戦える状態ではなかった。

口からほんの少し体内に入ってしまった蒼炎によって内臓が焼かれて危険な状態に陥っており、壁にめり込んだまま動けないでいた。そんな中でもその目はジッとアランを睨みつけ憎悪に顔を歪ませる。


動けないでいるデムジに審判である学園教師が近づき容態を確認する。暫くすると審判はデムジをその場に残しアランに近づいてくる。

アランは炎飛翼具現(ウイング・エンレッグ)を解除して審判の前に降りる、審判の教師はそんなアランに話しかけてきた。


「・・・デムジ君はもう戦える状態ではない、この『決闘』は君の勝利だアラン君」


「・・・・・」


審判の話をアランは黙って聞く。


「今から君の勝利を観客達に宣言するが・・・その前に君には言っておかねばならないことがある・・・すまなかった」


そう言って少し、ほんの少しだけ頭を下げてくる。


「私は君の事を馬鹿にしていた・・・無能だと他の生徒たちと共に罵ってきた。けれどそれは間違いだった、今日のアラン君の戦いを一番傍で見ていてそれがよく分かったよ」


「そう・・・ですか」


「今はこんな謝罪しかできないが、また後日ちゃんとした謝罪をさせてほしい」


「・・・・・」


アランが無言で頷くと、審判の教師は頭を上げ手に持った黒の旗を掲げて声を張り上げ叫んだ。


「この『決闘』、デムジ・ダスタが戦闘不能と判断し、アラン・ホークを勝者とする!!」


その宣言が審判から出た瞬間、観客達からの反応はなかった。

暫く沈黙が続いていたが一人、また一人とアランに向け拍手を送る者たちが出始める。それは徐々に連鎖していき、やがて闘技場は拍手と歓声に包まれた。


「すげぇ・・・すげぇよアイツ!!。あのデムジ・ダスタに勝っちまった!!」


「ええ・・・しかもあんな戦い方始めて見たわ。一体誰よ?!『零鉄』が使えないなんて言いだしたのは・・・大間違いじゃない!!」


「俺、アイツが空を飛び始めたのを見て鳥肌が立ったぜ!!」


「・・・今までアイツを馬鹿にしていたことちゃんと謝んないとな、こんなすげぇ戦い見せられたら今まで無能だって罵ってきたのが恥ずかしいぜ・・・」


観客席からそんな声が聞こえてくる、今までが今までなだけにアランは戸惑いを隠せない。

観客達を疑いたくはないが、本心で言っているのか心底疑問だ。あれだけ暴言を浴びせてきた後のこの豹変ぶりだ、素直に喜べないアランは無表情を貫くことにした。


審判が更に近づいてきて握手を求めて来た為アランがそれに答えようと手を伸ばした時・・・


「ふざけんじゃねえ!!!」


デムジの叫びが観客達の歓声を消し飛ばした。




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