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最弱零鉄の使い手  作者: 綾地才人
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一章 五十六話『決闘』当日 炎飛翼具現

五十六話目です。

二人の『決闘』もいよいよ終盤です!!

それでは今話もよろしくお願いいたします。

二人の打ち合いは暫く続いていたが、次第にデムジが押され始める。


「はぁっ!!」


アランがデムジの大剣を弾く、そのままデムジを横薙ぎに斬る。


「ちぃっ!!」


アランの斬撃を避けてデムジが間合いを取る、だが完璧には躱すことが出来ずに斬られた頬から少し出血してしまう。

乱れた呼吸を落ち着かせつつデムジはアランを睨む、蒼炎の鎧をアランが纏ってからデムジは一度もアランにダメージを与えられずにいた。


(チクショウッ!!一体どうなっている、こんだけ打ち合っているのになんで奴の刀はひび一つ入らねぇ。あの纏っている炎のせいなのか?!)


『零鉄』(無能)のアラン相手に自身の思い描く戦いができないことに苛立ちが大きくなっていく。


(ふざけるなよ!!無能のくせに俺様を手こずらせやがって!!何とかして絶対に斬り殺してやる!!)


苛立つデムジが再びアランに向かって斬りかかろうとした時、アランの表情が変化する。

それはほんのわずかな・・・本当にわずかな変化であり、近くにいるデムジにしか分からないレベルのものだった。

だが、デムジはそれを見て大きく感情を揺さぶられる。抱いていた苛立ちも相まって、それは制御できない怒りに変化しデムジの体を駆り立てる。


「ふざけんじゃねぇぞ!!アラン!!」


デムジが魔法を使い始める、今その行いがデムジにとって悪手であるというのに。

魔法を取り込んでアランは今の姿になった、それは間違いない。

なら再度魔法攻撃をしても同じように取り込まれるのは目に見えていた、それが分かっていたからこそデムジは暴炎嵐(イビルストーム)を使用して以降魔法を全く使ってこなかった。

しかし今のデムジは怒りで感情的に動く自分を抑えられなかった、なぜなら・・・アランが笑っていたのだから。


ただの笑いではない、デムジを見下すような視線を送りながらの嘲笑に似た笑顔だ。

それはまるで、デムジ自身が今までアランに向けていた視線と同じに視えた。

強者である自分が弱者へと向けていたモノが今、その弱者から自分へと向けられている。そう理解した時、我を忘れ魔法を発動していた。


「てめぇが!!!・・・無能な!!!・・・弱者のお前が!!!・・・その顔を俺様に向けてんじゃねぇ!!!」


ドス黒い太陽がデムジの頭上に形成されていく、やがて太陽は舞台の上空を覆うまでにおおきくなる。

観客たちに被害を出しかねない程大きくなった魔法を、デムジはアランに向け放つ。


『黒炎星』(ヘリオス)!!!」


黒炎星(ヘリオス)

今のデムジが使える最強の魔法。

攻撃範囲は暴炎嵐(イビルストーム)に比べ多少劣るが、威力はその数倍はある、炎系魔法の中でも最上位の魔法。

黒い太陽がアランに迫る、だがアランは動かない。

死を運んでくるその魔法に向け、アランは自分の相棒を振り下ろす。

刀が太陽を取り込み始める、片翼だった蒼炎が一枚・・・また一枚とその数を増やしていく。



その光景を観客たちはただ茫然と見続ける。

黒炎星(ヘリオス)が超強力な魔法だということは観客の誰もが熟知している、それをアランは真っ正面から受け止め取り込んでいく。

信じられない・・・いや、観客たちは信じたくはなかった、アランを認める訳にはいかない。

今アランを認めてしまえば彼が、『零鉄』が無能ではない事を認めたも同然。

観客たちは本当は知っていた、アランがどんなに馬鹿にされても強くなる為に努力を続けていたことを。そして馬鹿にしていた生徒達は逆に努力を怠り、常にアランという自分達よりも遥かに弱者がいるのをいいことに、それを利用して努力していない自らを正当化してきた。

故に今彼を認めてしまえば、それは自分が努力を怠っていたことの決定的な証拠となってしまう。だから今のアランを、デムジの黒炎星(ヘリオス)を取り込んでいく彼の姿を否定しなければいけなかった。

だが・・・それでも・・・


「すげぇ・・・」


観客の一人がそう呟く、すると同じようにあちこちから同様の声がぽつぽつと出始める。

心では決して信じたくはない、だが自分の瞳に映るこの光景は紛れもない現実であり真実だった。


「アラン!!頑張って!!」


そんな時だった、一人の女生徒の声が多くの観客の耳に届いた。

その生徒は赤くて長い髪をしており、必死になってアランを応援している。アランを馬鹿にしていた観客達だからこそ、その子が誰なのか直ぐに分かった・・・アランをいつも庇っていた少女、フレアだ。

涙を流しながら喉を枯らし必死になってアランを応援しているその姿を見て、多くの観客が罪悪感と恥ずかさに打ちのめさせる。

自分達は一体何をやっているのだろう?自分達がいるこの場所は本来ならば戦う二人に声援を送らなければならない場所だ。その場所で自分達は一体何をしている?声援ではなく、罵声をアランに浴びせて・・・それの何処に正当性がある?正しさがある?

たとえアランの事が認められなくても、今この場(観客席)にいる以上戦う二人に向けていいのは応援だけのはず。

フレアの枯れた声が聞こえる中、他の生徒の()()も一つ、また一つと共鳴するかのように増えていく。デムジへの声援が未だに多いが、中にはアランを応援する声も少しずつ聞こえ始める。



怒りに我を忘れたデムジが使った黒炎星(ヘリオス)をアランは全て取り込み終わる。

アランの背に増えた羽根は五枚。蒼炎の鎧を纏った時に現れた一枚と合わせて六枚の羽根が今、アランの背中に靡いている。

そんなアランにデムジが突撃する、未だ怒りが収まる気配もなく怒号を上げて力一杯アランを大剣で斬り払う。


「・・・『 炎魔開放 (リリースフレイム)炎飛翼具現(ウイング・エンレッグ)』」


「なにぃ?!」


デムジがアランを斬り払う瞬間、アランがデムジの前から消え去る。

周囲を急いでデムジが確認するが、アランの姿は見当たらない。


「何処だ?!何処にいきやがった。出てきやがれアラン!!」


アランを見失って叫ぶデムジに観客からの声が聞こえてくる。


「デ・・・デムジ!!!上だ!!!」


「上?上って一体・・・なっ?!」


上空を見上げたデムジが驚きに顔を固めて動きを止める。

そこには空中を浮遊するアランがいた。



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