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最弱零鉄の使い手  作者: 綾地才人
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一章 五十五話『決闘』当日 本当の戦い

五十五話目です。

また体調を崩してしまいました、投稿が遅れない程度に療養します。

それでは今話もよろしくお願いいたします。

「は?・・・え?・・・」


デムジは目の前で起こっている現象を理解できない。

デムジは間違いなく自身の使える魔法の中で、最も広範囲な攻撃を行える暴炎嵐(イビルストーム)をアランを中心にして使用したはず・・・本来であればこの一撃によってアランは溶けて死に、跡形も残らないはずだった。


だがその未来は訪れずアランは生きていた。暴炎嵐(イビルストーム)に包まれながらも五体満足で何事もなかったかのように炎の中で立っている。

アランが正眼に構えていた刀の刃先を空へと向ける、そこでデムジはある変化に気付く。

アランの持つ『零鉄』刀が赤白く変色し炎を纏っていた。

刀が纏う炎は次第に刀へと取り込まれていく、さらにデムジが使った暴炎嵐(イビルストーム)までもが同じようにアランの持つ刀に取り込まれ始める。


「ちぃっ!!」


デムジが新たに火球を作ってアランへ放つ。

デムジは未だに何が起きているかは分からなかったが、このままアランに炎を取り込ませ続けるのはマズイと判断しての火球攻撃だった。

しかし放った火球でさえもアランの刀へと取り込まれていく。

接近して攻撃をしようにも自身が使った暴炎嵐(イビルストーム)が邪魔をし近づくことが出来なかった。

ならばとデムジが暴炎嵐(イビルストーム)を解除しようとするがそれも出来なかった。どうやらアランの刀が暴炎嵐(イビルストーム)を取り込み始めていることで魔法の解除が出来なくなっているようだ。


「アランてめぇ!!一体何しようとしてやがる!!」


炎の取り込みを阻止する方法を失ったデムジはアランに向かって叫ぶ。

アランはその叫びに無言で返し、炎を刀に取り込み続ける。



二人の戦いに起きた異変は観客たちも見ていて直ぐに分かった。

あれだけ闘技場に響いていた観客の暴言は今は殆どしない、デムジの高火力の魔法を受けてアランの敗北で『決闘』が終わると思っていたのにそのアランは無傷であり、しかも彼が持つ『零鉄』刀が炎を取り込み始めたのだから無理はない。

観客の誰もが炎を取り込むアランの刀に釘付けになる。

信じられない、『零鉄』が炎を・・・魔法を纏っている。魔法を全く使えないはずの『零鉄』がデムジの魔法を取り込んでいく。

デムジがなんとかして炎の取り込みを阻止しようとアランを攻撃しているが、今のアランには効果がないように見える。観客達が知っている常識からは考えられない光景だ。


今、観客たちの個々の考えはは大きく二つに別れていた。

・ 『零鉄』が魔法を使える訳がない、今のアランはイカサマ使って魔法取り込んでいると考える者。

・ 自分たちの『零鉄』への常識が間違っているのかもしれないと考える者。

前者の考えの者はアランへの暴言を再開し、後者の考え方をした者は黙って戦いの行方を見守る。




アランの『零鉄』刀がデムジの暴炎嵐(イビルストーム)を含めた周囲の炎を全て取り込み終わるのと同時に、刀とアランの体に変化が起こる。

刀から今まで取り込み吸収していた炎が蒼炎の鎧となってアランを覆う。


「・・・装着(インストール)、完了」


魔熊と戦った時と同じ姿になったアランが掲げていた刀を下げて正眼に構え直し、そのままデムジに向かって走り出す。

アランの姿がいきなり変わった為に驚いていたデムジだったが、アランが迫ってくるとそれを迎え撃つようにデムジも走り始める。


「馬鹿が!!『零鉄』で接近戦を自ら仕掛けるとはなぁ!!その赤白くなった刀ごと斬り殺してやるよぉ!!」


「それは・・・どうかなっ!!」


二人の剣が交差する。

二人の斬撃がぶつかり合い火花を飛ばす、そこには脆いと揶揄されていた『零鉄』の姿はどこにもない。


「なんだと?!そんな馬鹿な!!あの『零鉄』が俺様の攻撃を受けて何故砕けていない?!」


そう言ってデムジが気を抜いたところをアランは逃さずにデムジの持つ『ルビー』の大剣を弾き懐に潜り込む。

大剣はその武器の特性から一撃の重さが魅力だが、弾かれたりして一度バランスを崩されると大きな隙ができる。大剣を弾かれ無防備となったデムジの顔に向けてアランは右手を振り上げ思いっきり殴り飛ばした。

ゴフッと声を出してデムジが後方に転がっていくのを確認するとアランは後ろに飛び、再び距離をとった。


「まず一撃・・・これからだデムジ・・・これからが俺とお前の本当の戦いの始まりだ!!」



「綺麗・・・」


ソフィアはアランの姿に目を奪われる。

蒼炎の鎧を纏いデムジを殴り飛ばしたアランの背中から、大きな蒼い翼が生えて風に靡いている。

沈黙の中、舞台の中心で倒れているデムジをじっと見据えアランはその場に立ち続ける。一度止み再び聞こえ始めた暴言も今は鳴りを潜め、ソフィアを含めた観客たちはアランの姿に目を奪われ言葉を失う。

靡く蒼翼の音だけが闘技場に響き木霊する。今、この場にいる全ての者の視線がアランに向けられている。

個々が心中で抱いている感情に違いはあれど、フレアも、ソフィアも、その他の観客も、審判も、対戦相手であるデムジでさえもアランから目を離せない。

ソフィアは今のアランを綺麗だと思った。蒼炎を纏う姿もそうなのだが彼が作り上げたこの場の沈黙も同じだ。


(アラン君はこの場にいる二百人近い人達の暴言を止めてしまった・・・力による抑制ではなく、自身の姿を、戦いを見せることで)


だが、まだ戦いは続いている。

デムジは立ち上がると大剣を振り上げて再びアランに向かっていく、アランはそんなデムジを『零鉄』刀で迎え撃つ。

金属がぶつかりあう音を響かせながら数回打ち合う、だが『零鉄』は砕けることなく二人はしのぎを削る。

この『決闘』、序盤はデムジの圧倒的優位で進行してきたが、今は戦況は互角・・・いや、アランの方が優位にも見える。

そんな戦いを観てソフィア直感的に感じた。

二人の戦いは終わりに近いと。



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