一章 五十四話『決闘』当日 『決闘』開始!!
五十四話目です。
アランとデムジ、ついに激突の時!!
それでは今話もよろしくお願いいたします。
審判が両手を挙げる。
アランとデムジが舞台中央で武器を構え試合開始のコールを待つ。
観客はデムジには歓声を、アランには暴言を吐き。
フレアはアランを信じて声を枯らして応援し。
ソフィアは物影でアランの健闘を祈る。
「・・・ではこれよりデムジ・ダスタ、アラン・ホーク二名による『決闘』を行う!!両者、正々堂々と戦い、互いに得るものがある場になることを望む!!・・・『決闘』、開始!!!」
「ワアアアアア!!!!!」
歓声と共に戦いが始まる。
「ヒャッハァー!!!」
審判の開始の合図と共にデムジが地面を駆けアランに迫る。手に持つ大剣の重さなど全く感じさせないスピードでアランに近づくと大剣を縦に奮う。
その攻撃をアランは表情一つ変えずにギリギリのところで躱し、再度デムジから距離を取る。アラン目掛けて振り下ろされた大剣は大きな音と衝撃を立て地面に刺さり小さなクレーターを作り上げた、たった一度の攻撃でこの威力・・・今の『零鉄』刀で受ければ刀は勿論アランの命も両断されていただろう。
《『決闘』が始まって早々、デムジの繰り出した最初の攻撃は残念ながらアランに躱されてしまったぁー!!しかしその威力は凄まじいの一言に尽きます!!一発でも命中すれば勝負は決まるでしょう、果たしてアランはいつまで躱し続けることが出来るのでしょうか》
放送部員の声が響く中、アランは無表情のままデムジを見つめる。
今のデムジの攻撃を頭の中で考察しながら、次のデムジの行動を見逃さないように全神経を張り巡らせる。
デムジは地面に深々と刺さった大剣を片手で引っこ抜くと、再びアランに近づき大剣を奮う。今回は地面に大剣を叩きつけず連続で斬りかかってくる、一撃一撃は最初の攻撃よりは劣るがそれでもアランにとってはまともに喰らえばそこで勝敗が決まってしまうことに変わりはない。
「オラオラァ!!さっさと斬られて楽になったらどうだぁ!?どうせお前の負けは決まってんだからよぉ!!」
「・・・・・」
デムジがそうアランに叫びながら大剣で攻撃を仕掛けている中、当のアランは無言で攻撃を躱し続ける。
アランにはデムジの声は聞こえてはいない。デムジの動きから次の行動を予想し、それを回避できる方法を頭をフル回転させ探し出すことだけに集中する。
『決闘』開始から約一時間、戦況は開始時から変わらずにいた。
そんな様子を見て観戦客達はアランにさらに罵声を浴びせる。
アランが攻撃を躱すことしかできていないのを見て、多くの観客はこう思っていた。¨やはりアイツは無能だ、予想通り攻撃を躱すことしかできない¨と。
だがその考えが間違いであることを観客は知らない、気づいていない。
学園トップクラスの実力者デムジの攻撃を躱し続けることの凄さに観客は誰一人気づかない。
「ハァハァ・・・アランてめえ、いつまで躱し続けやがる!!俺と戦う気がねぇなら、とっとと負けを認めちまえよ!!」
「・・・言いたいことはそれだけか?」
息を荒げて苛立つデムジに対し、アランは返答する。『決闘』が始まってから今まで無言を貫いてきたアランがここにきて始めて口を開いた。
「な・・・なに?」
「攻撃を躱すは当然のことだ。早く勝敗を決めたいなら、さっさと俺を斬ればいいだけだろう?お前程の力あれば、一度でも俺に攻撃を当てればそれで決着がつく。だが『決闘』が始まってからかなり経つが、お前は俺に攻撃を当てることすらできていない・・・恥ずかしくないのか?」
「なんだと!?」
「自分が『零鉄』と馬鹿にしている相手に、無能だと罵っていた相手に、お前は攻撃一つ当てることすらできていない。無能に攻撃を当てることができないのなら・・・デムジ、お前は俺以上に無能ってことになるな?」
アランはそう話すとニヤリと笑う。
それを見てデムジの顔は怒りで真っ赤になっていく。
あまりの怒りにデムジの体が震えはじめ、真っ赤な顔が殺意に満ち鬼の形相に変化していく。
「てめぇ!!!誰に向かってそんなこと言ってやがるか分かってんのか?!絶対に許さねえ!!!そんなに死にてぇならとっとと殺してやるよ!!!・・・『暴炎嵐』」
ついにデムジが魔法を使い始めた。
アランを中心にして周囲を熱風が覆い始める、熱風は徐々に炎へと変化し嵐を形成していく。
炎嵐は範囲内の全てを喰らうかのようにアランの闘着や地面をも溶かし、炎嵐へと変えていく。
「アハハハハハ・・・これで終わりだアラン!!俺様を怒らせたことを死んで地獄で後悔しやがれ!!」
デムジの魔法に観客席の一角から悲鳴が上がる、だがその悲鳴は他の多くの観客の声によって掻き消える。
怒り狂い魔法を使い始めたデムジを見てアランは口角を上げる。アランは待っていた、『決闘』が始まってからずっとこの時を。
この戦いが始まってからずっと待ち続けていた高火力の魔法がアランに迫る、今にもアランの命を溶かそうとする炎嵐を前に『零鉄』刀を正眼の構え心を刀に込めるようにそっと言葉を紡ぐ。
「『零鉄』よ!!今こそ、その真の力を示せ!!・・・『装着』!!!」
その言葉に『零鉄』刀が輝きを放ち出した。
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