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最弱零鉄の使い手  作者: 綾地才人
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一章 五十三話『決闘』当日 アランに向けられる暴言とソフィア

五十三話目です。

今回もかなり長いですが、ゆっくりと読んで頂ければと思います。

それでは今話もよろしくお願いいたします。

《さあいよいよ『決闘』開始の時間だぁ!!両選手の入場です!!》


アナウンスに従いアランは闘技場舞台へと入る。正面に見える反対側の入口からはデムジが同じように出てくる。右手を上に挙げ観客の声援に答えながら堂々と歩いてくる。

対するアランは観客席から投げつけられるゴミを躱しながら対戦相手のデムジを見据えて歩いていく。観客からはゴミだけでなくアランに対する誹謗中傷も四方八方から飛ばされていた。


《おっとゴミを舞台に投げ込まないでください。たとえ投げつける相手がゴミのような人間でも、ゴミはゴミ箱にちゃんと捨てるようにしましょう!!どうしても何かを投げたいのなら皆さんは観客、選手には言葉を投げかけましょう!!そのほうが舞台が汚れることも防げて一石二鳥ですよ!!》


「アハハハハハwww」


拡声機を通して聞こえる司会の声により飛んでくるゴミは無くなったが、その分アランに対しての暴言や誹謗中傷は一気に増える。

アランはその声を聞きながら舞台中央まで移動しデムジと対面する。デムジはアランの顔を酷く歪んだ笑顔で見つめていた、早くアランを痛めつけたいとうずうずしているようだ。


舞台中央で向き合って立つ二人の元に教師が一人近づいてくる。

両手に赤と黒の少し大きめな旗を持っていることから学園側が用意した審判のようだ。


「両者・・・武器を掲げよ!!!」


審判の声にアランとデムジはそれぞれ自身の鉱石印から鉱石武器を創り出す。アランは黒い『零鉄』刀、デムジは『ルビー』の大剣だ。

アランは自分が創り出した刀を見つめる、この『決闘』中はこの刀一本で戦わなければいけない。たとえ壊れたとしても『決闘』の決着が着くまでは、新たに刻印石から武器を作ることは許されない。

デムジがアランを殺しにかかるであろうこの戦いにおいて、アランが手にしている一本の刀は文字通り生命線だ。

この刀が壊れるのが先か、デムジの使った魔法を吸収し、装着(インストール)するのが先かで勝敗が大きく変わる。


「両者・・・間合いをとり、それぞれ構えぃ!!!」


審判の言葉通り二人は間合いをとる、次の審判の言葉で『決闘』が始まる。


ソフィアside


時間は少し遡る。


「なに・・・これ・・・」


ソフィアはアランの母カスミの提案通り、レギルス学園の闘技場に来ていた。転校の手続きは既にソフィアの知らないうちに終わっていたらしく、すんなりと学園の敷地に入れた彼女はアランの戦う闘技場の中に入り、観客席の物影で目を疑う。

観客席に座るほぼすべての生徒がアランが舞台に登場していないのにもかかわらず、彼へ向けた暴言や誹謗中傷で盛り上がっていたのだ。

そのどれもが『零鉄』に関係するものだった。アランは『零鉄』だから無能、クズ、ゴミ・・・同じ人間に対して言って良い言葉とは到底思えない数々の言動の応酬にソフィアは自身の中で渦巻く感情を整理できない。


「うぅ・・・おぇ・・・」


闘技場内のあまりの不快感に吐き気がする。


(人の負の感情には慣れていたつもりだったけど・・・)


ソフィアは王族ということもあり、妬みや嫉妬といった感情をぶつけられることはいままでそれなりにはあった。純度の高いエメラルドの刻印石を持って生まれたソフィアは、相手の抱く感情を微かに読み取るちょっと特殊なことができた為、そういった負の感情には慣れていたつもりだった。

だが今感じる不快感はそれを上回るものだ、闘技場にいる二百人以上の生徒がたった一人の少年に、まだこの場に姿を見せていないアランに対してそれを向けていた。

感情を読み取れるソフィアはすぐに分かった、この光景は生徒たちにとって日常的なものなのだと、アランはずっとこんな仕打ちを受けて生きてきたのだと。


それが『零鉄』のアランの日常。

とても常人が耐えられるものではない。


やがて『決闘』の時間となりアランは舞台に姿を現すと、予想通りアランへの暴言は更に酷くなる。しかも観客席からアランにゴミを投げつける者まで現れた。その光景を見てソフィアの目から涙が零れる。


(ひどい!!・・・あの人が、アラン君が一体何をしたっていうの?!ただ『零鉄』の刻印石を持って生まれたってだけ・・・アラン君は何一つ悪くないじゃない!!)


ソフィアは自身の認識が誤っていたことを思い知らされた、そして後悔する。

『零鉄』が世界的に使えない鉱石だということは常識として知っていたし、無能扱いする者も多いことは承知しているつもりだった。そしてその使い手であるアランが辛い目にあっていることは予想はしていた。だからこそ、カスミ姫がなんとかしようと自身に頼んできたことも・・・

だがここまで酷い扱いをされていたとは考えてはいなかった、これではアランは犯罪者扱いされているみたいではないか。


ソフィアは舞台中央で対戦相手と向き合うアランをもう一度見つめ、アランの背中を見て彼の感情を読み取ってみる。


「あ・・・・・」


そして目を離せなくなる。

未だ闘技場を暴言が覆う中、アランから伝わってくる感情には辛さや悲しさは殆ど感じられず、決意のようなものをソフィアは感じた。

¨必ず勝つ¨という意思がひしひしと伝わってくる。只々目の前の相手に全意識を向け、勝利を目指そうとするその背中がソフィアにはとても大きくみえた。


間もなく審判の合図で『決闘』が開始される。

『零鉄』の調査で観戦に来たソフィアだったが、そのことを忘れ無意識にのうちに心中でアランの勝利を祈っていた。


(アラン君・・・頑張って!!!)



ソフィアside end





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