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最弱零鉄の使い手  作者: 綾地才人
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一章 五十二話 『決闘』当日 控室にて

五十二話目です。

ついに『決闘』当日です。前話の前書きで書いた通り、『決闘』の話はゆっくりと書きたいのでのんびりと待って頂ければ幸いです。

それでは今話もよろしくお願いいたします。

《ついにこの日がやってきました!!前回行われた『決闘』から約半年。長い沈黙を破り今日、二人の生徒がこの第一闘技場にて雌雄を争います!!》


外から校内放送が聞こえてくる、それと同時に天井から大きな歓声が沸き上がる。

『決闘』当日、アランはレギルス学園第一闘技場の控室で着替えをしていた。『決闘』時専用の闘着に着替え、息を大きく吐いて瞑想する。

現時刻は七時半、あと三十分でデムジとの戦いが始まる。

今の控室には瞑想するアラン一人だけ、外から聞こえる歓声と拡声機による校内放送が闘技場地下にある暗い控室に小さく木霊している。


《本日『決闘』を行うのはなんと、当学園トップクラスの実力者デムジ・ダスタ!!彼の使う大剣攻撃は豪快かつ強力!!噂によれば、授業中に訓練相手が持つ鉱石武器ごと相手を叩き斬った事もあるとのこと!!》


拡声機を通して聞こえてくるのはデムジを強者として伝える放送部員の声、そして・・・


《対する相手はデムジ・ダスタとは真逆。学園最低クラスの男アラン・ホーク!!彼は唯一『零鉄』の刻印石を持ちますが『零鉄』の能力は皆さん知っての通り!!たった一度の打ち合いで砕けてしまう程脆く、鉱石魔法を一切使用できないその特性から誰もが認める無能な力!!今回の『決闘』で『零鉄』の彼が勝つ可能性はほぼないと断言してもいいでしょう!!》


《アハハハハハwww》


アランを蔑み馬鹿にする放送部員の声と観戦客の笑い声。瞑想するアランの顔がほんのわずかに歪む。


分かっていたことだ、蔑まれることは。

分かっていたことだ、馬鹿にされるのは。

だが分かってはいても、何回言われても、辛いことに変わりはない。

辛さは徐々にアランの感情を蝕んでいく、¨どうせデムジには勝てない¨、¨恥をかく前に危険するべきだ¨という気持ちがどんどん膨らんでいく。

でも逃げようとするその気持ちを表に出してはいけない、逃げてはならない。そんなことは誰かに言われずとも分かってはいる、だけど・・・やっぱり怖い。

もし負けたら今までアランの特訓に力を貸してくれていた人達が自分から離れていくかもしれない、天井から聞こえてくる生徒たちの声と同じようにアランを馬鹿にし始めるようになるかもしれない、数少ない自分の味方がいなくなるかもしれないと思うと手足が震える。


(全く・・・『決闘』当日に何負けた後のこと考えているんだ俺は、今になって何震えてんだよ!!何怖がってるんだよ!!)


そう自信を鼓舞しても震えは止まらない。

前向きに考えようとする度、それ以上の恐怖が心奧から湧き上がってくる、完全に悪循環だ。


「・・・え?」


突然誰かが後ろから手を回し抱きしめてきた、いきなりの事に声が出る。

アランはそっと触るように優しく抱きしめられる、相手を安心させるその抱きしめ方で誰がやっているのかはアランには直ぐに分かった。


「フレア・・・か?」


「うん」


フレアは一言返事をすると、アランの頭を撫で始める。


「ごめんね、『決闘』前のこの時間はアランなら一人で集中していたいだろうから、控室の入口でこっそりと覗いているだけでいようって思ったんだけど・・・震えてるアランを見たら体が勝手に動いちゃった」


フレアはアランを撫でながらゆっくりと話す。振り向こうとしたアランだったが、フレアはそれをさせなかった。


「今のアラン・・・デムジに負けた後のこと考えているでしょ?そしてもしも負ければ私や騎士団の団長さんが貴方から離れていくって考えてる」


図星だ。フレアは相手の心でも読めるのだろうか?


「団長さんはどうなるか分からないけど、私がそんなことでアランから距離を置くなんてありえない・・・だって私は貴方が『零鉄』の力に目覚める前から、子供のころから貴方と一緒にいたのよ?」


優しくそう話すフレアの言葉にアランは耳を傾ける。


「あまり私を見くびらないでよ・・・私は別に貴方が『零鉄』だからとか、弱い貴方を守ってあげなくちゃって考えてずっと傍にいたわけじゃない。貴方がアランだったから傍にいたの」


フレアの言葉に震えが小さくなっていく。


「断言できるわ、たとえアランが負けても私は今までと変わらずに貴方の傍にいるって。だって私・・・アランのこと大好きだもん」


そう告げると抱きしめるのを止めアランの正面に回り込んで座っているアランと目を合わせる。

そして両手をアランの顔に添え、目を閉じておでこを合わせてくる。


「かっこいいところみせてよ・・・戦う前から負けたこと考えるアランより、勝ちも負けも関係なく全力で挑むアランのほうがいつもの貴方らしいわ」


手足の震えが完全に止まった。未だに天井からは蔑みの声が聞こえるが、もう気にはならない。

体を覆っていた恐怖もフレアのおかげでほとんど感じなくなった。

もう大丈夫だ。今ならこれまでの特訓の成果を充分に出せるだろう。


《おっと・・・二人の紹介をしていたらもう八時まで残りは五分だ!!『決闘』をする二人は控室から出て闘技場入口傍で待機をお願いします!!》


どうやらもう時間らしい、フレアと控室から出て別れ闘技場へと向かう。


「頑張ってアラン!!貴方ならデムジに勝てるわ!!」


後ろから聞こえる声に手を上げて答える。


(ありがとうフレア・・・)


そう感謝しながら、アランは戦いの場へと向かった。






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