一章 二十九話 帰還の時
二十九話目です。
最近熱くなってきて、私は早くも夏バテ気味です。皆様はどうかお気を付けください。
それでは今話もよろしくお願いいたします。
シズクと名乗った少女が手を伸ばし、握手を求めてくる。
アランがその手を取り立ち上がると、改めてシズクに確認する。
「シズク、この場所は一体何処なんだ?こんな場所・・・白一色の空間なんて聞いたこともないぞ?」
「え~と・・・なんて言ったらいいのかな?・・・夢の中?とはまたちょっと違うし・・・いや、でもこの場所は現実には存在しない場所だから夢の中でいいのかな?」
シズクが腕を組んで考え始めた、腕に抑え込まれた巨乳がふにゃっと歪む。シズクに始めて会った時から目に入り目立っていたその胸は、少女の小さな体躯もあってさらに大きく見えた。
とはいえあまり凝視してもシズクに失礼だと、アランはその胸から視線を離す。
「現実に存在しないってことは夢の中っていう解釈でいいんじゃないのか?」
「でも君の意識はかなりはっきりとしているでしょ?夢ってなんかぼんやりとした感じで見るものだと思うし、さっきまで君が感じていたお腹の痛みは、夢とは思えない程リアルだったでしょ?」
シズクはこの場所のことを知ってはいるが、上手く説明できないようだ。
「う~ん・・・そう言われると確かにそうだな」
「それよりも、私も大事なことを聞いていないんだけど、聞いてもいい?」
シズクはアランにグイっと顔を寄せてくる。
「私、まだあなたの名前聞いていないんだけど?私は自己紹介したんだから、君も名乗るのが筋ってものじゃない?」
「・・・悪い、そういえばまだ名乗っていなかったな。俺の名前はアラン・ホークって言うんだ、改めてよろしく」
そう言って今度はアランの方から握手を求めると、シズクはよろしくね♪と応じてくれた。
互いに自己紹介が済んだところで、再度アランがシズクに確認する。
「シズクはこの場所にはどうやって来たんだ?上手く説明ができないみたいだけど、この場所のことは知っているんだろ?」
「・・・ごめんなさい、分からないわ。私は物心ついた頃からここに居たから、どうやって自分がこの場所に来たのか分からない・・・アランを見つけたのも本当に偶然なのよ・・・」
「・・・そっかぁ~」
シズクが俯きながら、そう話してくれた。その話にアランはかなり驚いたが、顔には出さないようにした。
シズクは今俯いている為、顔はよく見えないがその頬に涙が流れているが見えた為だ。
(物心ついた頃からここに居たってことは相当な時間をこの場所で過ごしていたってことだよな・・・こんな何もない所で、たった一人で・・・)
アランがシズクに掛ける言葉を探して沈黙していると、突然アランの体が輝きだした。
「こっ・・・これは」
「・・・どうやら時間みたいだね・・・」
驚くアランを見て、シズクが顔をあげて話し出す。その顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「実はね、アランの他にもこの場所に迷い込んだ人達が何人かいたんだ・・・その人たちはみんなアランと同じように傷ついてこの場所に来て、怪我が治ると輝きを放ちながら元の世界に戻っていくのよ・・・私を一人残してね・・・」
「シズク・・・」
「そんな顔しないで・・・もう慣れっこだから。さあアラン、早く元の世界に戻ってあげて・・・あなたの帰りを待っている人たちがたくさんいるんでしょ?・・・」
シズクの話を聞いている間にもアランの輝きはさらに増していく、同時に意識も朦朧としてくる。
「シ・・・ズク・・・」
「さよなら、アラン・・・元気でね・・・」
涙を流しながら笑顔で微笑むシズクをただ見ながら、アランの意識は途切れた。
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