一章 十六話 絶対絶命
十六話目です。
なんとか今話で戦闘開始まで持ち込めました。
まあその分長くはなってしまいましたが・・・文章に纏めるのって難しいですね。
それでは今話もよろしくお願いいたします。
炎を纏った魔熊が暴れだした。
(こいつ・・・特殊個体だったのか・・・)
特殊個体とは魔物の中でも魔法を使う個体の総称だ。
ただの魔物は基本的に魔法は使えないが、知恵が働く魔物は使用してくる。魔法を使う魔物は、使わない魔物の二倍以上の強さを誇るとされている。
ゴオオォォォォォォ・・・ズバァァァァ!!!
魔熊が出していた音が変化した。炎の音と共に何かを切断するような音だ。
アランが恐る恐る物影から顔を出し魔熊を観察する。魔法を使われたと思われる木々が広範囲にわたり切り倒されている。
今まではその巨腕と怪力で力任せになぎ倒していたが、魔法を使い始めた事により、攻撃方法が変化したのだろう。
長い爪に炎を纏わせ、バターを熱したナイフで切るようにいとも簡単に木々を切り倒し燃やしていく。
やがて周囲の木々は無くなり、アランの隠れていた木も倒されてしまう。
「グルルゥウウウ・・・」
魔熊は逃げ場所を失ったアランを見つけると、口角を上げニヤリと笑って舌なめずりをした。もう逃げることができないアランに残された道は二つ、このまま魔熊におとなしく殺されるか、無謀な戦いを挑むしかない。少しでも生き延びるためには――
「もう、戦うしかないか・・・」
アランから声が漏れる。未だに恐怖でうまく動けない自分を叱咤して勇気を振り絞る。
アランは刻印石から零鉄刀を作り出して正眼に構える。
魔熊はそれを見ると炎でアランと自身を中心に炎の壁で取り囲む、獲物を今度は逃がさないようにするためだろう。
「・・・グァァァァァァァァ!!!」
魔熊が叫び、魔法で攻撃を始めた。
魔熊の作った火球・・・いや、炎弾と言ったほうがいいだろう。フレアやデムジの使っていた火球や火柱なんかよりも威力が桁違いだ。こんなの掠っただけでもヤバい。
炎弾を躱してアランは魔熊の側面に回ろうと試みるが、攻撃が激しくうまくいかない。炎の攻撃はフレアとの特訓で少しは経験を積んでいたからか、躱すことはできている。けれどそれも長くは続かないだろう。
現状は動けているが突進の際に受けた腹部のダメージはかなり大きい、痛みでいつ動けなくなるかも分からない状態だ。
手に持つ刀で炎弾を防ぐことがなんとか出来ればいいが、『零鉄』では炎弾に触れた途端に壊れるか溶けてしまうだろう。
今のアランにとって魔熊に対抗できる武器は左手に持つ零鉄刀一本のみだ、この武器を失うわけにはいかない。魔熊はアランが武器を持っていることで大なり小なりこちらを警戒している、戦いが始まってから間合いを取り、炎弾攻撃のみで攻めてくるのがその証拠だ。『零鉄』とはいえ今ここで武器を失えば、瞬く間にアランは殺される。
(ここまでなのか・・・俺は・・・)
アランが心の中で諦めかけた時。
(・・・・・)
「・・・え?」
何かの声が聞こえた気がした。
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